掲載した展覧会のチラシは五味彬先生からいただたものをスキャンしたものです。
これは、東京都写真美術館で1997年6月5日~7月27日に開催された「アウグスト・ザンダーと五味彬」展のもので、現在のものではありませんのでご注意ください。

後から振り返って非常に重要な展覧会なのに、開催当時は見逃してしまう場合がしばしばあります。
単なる出不精だったり、たまたま見逃してしまう場合もある。
後から気づいてさんざん後悔するのですが、これは後悔するもなにも、当時は五味彬のお名前すら存じ上げなかった。
先日もご紹介したとおり、1991年4月から『月刊PLAYBOY』に写真家・五味彬の写真連載が開始されました。それは1990年代の日本人女性の裸体を標本のように撮影したものでしたが、当時のヘアー問題のためにわずか2ヶ月で連載打ち切りとなります。その後、別の大手出版社から1992年に写真集『YELLOWS』と題して出版されることになり、撮影を続行したのですが、その写真集も印刷が終わり、あとは配本するだけという時に、再びヘアー問題による出版社の自主規制で断裁処分されてしまい、陽の目を見ることはありませんでした。
お縄頂戴を恐れた結果の過剰な自主規制だったわけですが、マン・レイはじめ輸入写真集などがしばしば摘発されていたことを思うと(今でも幼児ポルノに関連してジョック・スタージスの写真も危険視されています)それを責めることはできません。

それから僅か数年後に、東京都写真美術館が《アウグスト・ザンダーと五味彬》展を開催したことは快挙といっていいでしょう。
「人間の記録を通して時代を表現」しようとした写真家の意図を正確に理解した好企画ですね。
1997アウグスト・ザンダーと五味彬 表

1997アウグスト・ザンダーと五味彬 裏

担当学芸員の勇気に拍手を送りたいと思いますが、この展覧会を見ていないことはかえすがえすも残念でなりません。
フライヤーの文章をそのまま再録して敬意を表したいと思います。
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 映像工夫館ではテーマ展「記録としての映像」にあわせて、作品展のシリーズ「時と空間の記憶」を開催します。
 シリーズの第2回は「アウグスト・ザンダーと五味彬」と題し、人間の記録をとおして時代を表現しようとした、または現在も続けているふたりの写真家の作品を紹介します。
 写真というメディアが持つ記録性を出来る限り誠実に生かすためには、対象物の本質を見抜く鋭い眼とそれを捉えようとする忍耐力、そして感情に溺れず被写体と丁度よい距離を持つことのできる能力が必要で、その捉えたイメージをどう伝えるか、その方法が非常に重要になってきます。
 1876年ドイツで生まれたザンダーは、「見ること、観察すること、そして考えること」を制作の動機として、彼が生きた当時の社会を7つのグループに分類し、さまざまな階級、職業の人々の肖像写真によるドキュメンタリーを試みました。この壮大な構想は「20世紀の人間たち」と題してまとめられ、出版されるはずでしたが、ナチスの妨害により中断を余儀なくされ、彼の生前には実現されることがありませんでした。
 1953年東京生まれの五味彬は、現代に生きる女性たちの体型を記録し続けています。10代から20代のプロフェッショナルなモデルたちではなく、様々な職業の若い女性たちを、数パターンの角度で同一ポーズによる撮影をし、CD-ROMに収録しています。CD-ROMを表現の媒体として選んだことにより、彼が本来意図しようとした、感情と主観を排除した無機質な感覚がより忠実に再現されています。
 このふたりの写真家が捉えた大量のイメージを見ていくと、それは単なる人物の記録を超えて、時代そのものを感じ取ることができます。そして、彼等の作品を見るたびにぼんやりとした時の記憶が甦ってくるのです。
 今回、アウグスト・ザンダーのプリント作品と五味彬はCD-ROMに加えデジタル・プリントも展示します。ふたりの写真家と、ふたつのメディアをここに同時に見ることで、ザンダーがかつて制作の動機とした「観察し、考える」場としていきたいと思います。
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五味彬
"25P_AC・ACB 1991年"
1991年
ヴィンテージゼラチンシルバープリント
107.5×170.0cm サインあり

五味彬
五味彬
"8P_UP・AC"1991年
ヴィンテージゼラチンシルバープリント
86.0×68.0cm  サインあり

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◆ときの忘れものは2012年5月11日[金]―5月19日[土] AKIRA GOMi 1972-2012 / 倉俣史朗&村上麗奈を開催しています。(*会期中無休)
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