ただいま開催中の「6月の画廊コレクション展~9人の作家たち」にはときの忘れものが期待する若い世代の9人の作家に参加していただいています(※6月22日[土]まで。日・月・祝日休廊)。
9人からは近況報告をかねた皆さんへのメッセージをいただいていますが、本日は轆轤を使わない「ひもづくり」技法による不思議なオブジェを制作している渡辺貴子さんです。

"untitled"(12)
2010年 ひもづくり
H38.0×W12.0×D11.0cm Signed

"untitled"(16)
2009年 ひもづくり
H34.0×W24.5×D12.0cm Signed
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
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2013年はロンドンでのグループ展から始まりました。新春メッセージで少し紹介させていただきましたが、ロンドン在住の陶芸家の友人からの誘いで実現しました。見た事が無い場所、会った事が無いメンバー、そして初めての海外での展示だったので作品の運搬など不安もありましたが、ロンドンでの展示は学生の時からの憧れだったので、赤字と少々のトラブルは承知で参加しました。
しかしそれが現実になってしまうとは…その時は想像もしませんでしたが。
メンバーはイギリス人2人と日本人2人。私は日本から、もう一人の日本人の方はスペインから参加だったので、何十回ものメール交換で展示スペースや設置等について話し合い、12月上旬にはDMとポスターが出来上がりました。あとは作品を運ぶだけ。2週間あれば届くという郵便局員の言葉を信じ、安くて、手続きが楽な郵便局から発送しました。
そして展示の3日前。私はロンドンに到着しましたが、作品の入った荷物はまだ届いていませんでした。一番恐れていた事が起きてしまいました。イギリス国内には届いていたようですが、どうやら税関で止まってしまったようでした。週末は郵便局のサービスは無く、その上クリスマスとニューイヤーが重なり(普段でものんびりなイギリスのサービスが)更に遅れているようでした。友人が何度も交渉してくれましたが、苦労も虚しく、とうとう初日のオープニングパーティーには間に合いませんでした。幸いファイルだけは持っていたのでそれを見てもらう事は出来ましたが、作品の不在は本当に情けない状態でした。もしもこれが個展だったら…と思うと生きた心地がしませんでした。
荷物が近くにあるのに受け取れないもどかしさ。再度友人に交渉してもらい次の日にはロンドン郊外の郵便荷物集荷所まで取りに行く事に。そこで想像以上の税金(箱の中身を忠実に記したために課せられた)を払わされた上に、送った5箱のうち1箱はどこにあるか分からないと言う始末。イギリスに住んでいた頃、こんな事で何度も腹を立てた記憶がよみがえってきました。
結局一箱分は足りなかったのですが、友人の協力で何とか2日目からの展示には間に合いました。
ちなみに、この行方不明の一箱は2月下旬に長旅を経て日本に無事帰りました。そして払い過ぎた(と思う!)税金に関しては、現在もロンドンの友人が返金交渉中です。
荷物騒動でそれまではロンドンどころではなかったのですが、後半は展示の合間にギャラリー周辺を歩く事が出来ました。最寄り駅のLondon bridgeは、ロンドン橋はもちろん、周辺には大きなフードマーケットがあり、とても活気がある街でした。そこを抜けるとテムズ川を見渡せ、川沿いを15分程歩くとテートモダンがあります。そして最近注目され、日本の雑誌やガイドブックにも紹介されるBermondsey Streetというアーティストが集まる場所も近く、おしゃれな小さなお店やカフェが並んでいました。週一度朝早くに始まるアンティークマーケットも有名だそうです。そこに出来て間もない White Cube (ロンドン市内に3つある内の一つ)というギャラリーで開催していた Antony Gormley 展を思いがけず観られたのはラッキーでした。巨大な鉄の作品の中に入る事が出来たのですが、かすかな光を頼りに鉄にぶつかりそうになったりしながら進み、屈んだり、立ったり、見上げたり、行き止まりに行ったり戻ったり…。ほんの数分でしたがギャラリーの中に居る事を忘れてしまうような面白い体験でした。
さて肝心のグループ展ですが、やはり年末年始の大きなイベントの後はなかなか人もお金も動かず、プロモーションには苦労しました。新聞や地域のフリーペーパー、ギャラリーガイドに掲載はしたものの中々成果は見えず、展示が始まった後もマーケットやカフェなどでDMを配ったりしました。余談ですが、私達の展示と同時期に地下で開催されていた「The Beauty of Women」という主に女性の裸体をモチーフにした様々な作品を展示していた会場に足を運ぶ人の多さには少々驚きました。
それでも来てくれた人達は熱心に観てくれました。(値段が安い、と言いつつ買ってくれませんでしたが!)
言うまでもなく作品の売れ行きは良くなかったのですが、私にとっては全てが初めての貴重な時間でした。残念な場面もありましたが、経験出来て良かったと思います。そして何よりも、このメンバーと出会えた事、帰国した時から会っていなかった友人やホームステイ先のご夫婦、わざわざデンマークから来てくれた友人などに再会出来たのが本当に嬉しかったです。
今回の教訓を生かすためにも(初日に来て、作品を観られなかった友人のためにも!) また挑戦したいと思います。新作の構想を練りつつ、ロンドンでの展示を夢見る毎日です。
(わたなべ たかこ)
グループ展のポスター

ギャラリーの入口から。かつてはチョコレート工場だった建物。ギャラリー以外にもオフィスやカフェ、シアターも入っている。

初日の展示は、作品不在のお知らせ。

展示の一部より

White Cube の入口前に設置されていた、Antony Gormley の作品。
◆ときの忘れものは、2013年6月7日[金]―6月22日[土]「6月の画廊コレクション展~9人の作家たち」を開催しています(※日・月・祝日休廊)
上段左から:
秋葉シスイ、渡辺貴子、永井桃子
中段左から:
君島彩子、宇田義久、光嶋裕介
下段左から:
根岸文子、若宮綾子、野口琢郎
ときの忘れものが期待する若い世代の作家9名による作品展です。
平面、立体、技法や素材もさまざまな現代作家の多彩な表現をご堪能ください。
●光嶋裕介さんからのメッセージはコチラ。
●宇田義久さんからのメッセージはコチラ。
●渡辺貴子さんからのメッセージはコチラ。
●野口琢郎さんからのメッセージはコチラ。
●根岸文子さんからのメッセージはコチラ。
●君島彩子さんからのメッセージはコチラ。
●永井桃子さんからのメッセージはコチラ。
●若宮綾子さんからのメッセージはコチラ。
●秋葉シスイさんからのメッセージはコチラ。
9人からは近況報告をかねた皆さんへのメッセージをいただいていますが、本日は轆轤を使わない「ひもづくり」技法による不思議なオブジェを制作している渡辺貴子さんです。

"untitled"(12)
2010年 ひもづくり
H38.0×W12.0×D11.0cm Signed

"untitled"(16)
2009年 ひもづくり
H34.0×W24.5×D12.0cm Signed
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
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2013年はロンドンでのグループ展から始まりました。新春メッセージで少し紹介させていただきましたが、ロンドン在住の陶芸家の友人からの誘いで実現しました。見た事が無い場所、会った事が無いメンバー、そして初めての海外での展示だったので作品の運搬など不安もありましたが、ロンドンでの展示は学生の時からの憧れだったので、赤字と少々のトラブルは承知で参加しました。
しかしそれが現実になってしまうとは…その時は想像もしませんでしたが。
メンバーはイギリス人2人と日本人2人。私は日本から、もう一人の日本人の方はスペインから参加だったので、何十回ものメール交換で展示スペースや設置等について話し合い、12月上旬にはDMとポスターが出来上がりました。あとは作品を運ぶだけ。2週間あれば届くという郵便局員の言葉を信じ、安くて、手続きが楽な郵便局から発送しました。
そして展示の3日前。私はロンドンに到着しましたが、作品の入った荷物はまだ届いていませんでした。一番恐れていた事が起きてしまいました。イギリス国内には届いていたようですが、どうやら税関で止まってしまったようでした。週末は郵便局のサービスは無く、その上クリスマスとニューイヤーが重なり(普段でものんびりなイギリスのサービスが)更に遅れているようでした。友人が何度も交渉してくれましたが、苦労も虚しく、とうとう初日のオープニングパーティーには間に合いませんでした。幸いファイルだけは持っていたのでそれを見てもらう事は出来ましたが、作品の不在は本当に情けない状態でした。もしもこれが個展だったら…と思うと生きた心地がしませんでした。
荷物が近くにあるのに受け取れないもどかしさ。再度友人に交渉してもらい次の日にはロンドン郊外の郵便荷物集荷所まで取りに行く事に。そこで想像以上の税金(箱の中身を忠実に記したために課せられた)を払わされた上に、送った5箱のうち1箱はどこにあるか分からないと言う始末。イギリスに住んでいた頃、こんな事で何度も腹を立てた記憶がよみがえってきました。
結局一箱分は足りなかったのですが、友人の協力で何とか2日目からの展示には間に合いました。
ちなみに、この行方不明の一箱は2月下旬に長旅を経て日本に無事帰りました。そして払い過ぎた(と思う!)税金に関しては、現在もロンドンの友人が返金交渉中です。
荷物騒動でそれまではロンドンどころではなかったのですが、後半は展示の合間にギャラリー周辺を歩く事が出来ました。最寄り駅のLondon bridgeは、ロンドン橋はもちろん、周辺には大きなフードマーケットがあり、とても活気がある街でした。そこを抜けるとテムズ川を見渡せ、川沿いを15分程歩くとテートモダンがあります。そして最近注目され、日本の雑誌やガイドブックにも紹介されるBermondsey Streetというアーティストが集まる場所も近く、おしゃれな小さなお店やカフェが並んでいました。週一度朝早くに始まるアンティークマーケットも有名だそうです。そこに出来て間もない White Cube (ロンドン市内に3つある内の一つ)というギャラリーで開催していた Antony Gormley 展を思いがけず観られたのはラッキーでした。巨大な鉄の作品の中に入る事が出来たのですが、かすかな光を頼りに鉄にぶつかりそうになったりしながら進み、屈んだり、立ったり、見上げたり、行き止まりに行ったり戻ったり…。ほんの数分でしたがギャラリーの中に居る事を忘れてしまうような面白い体験でした。
さて肝心のグループ展ですが、やはり年末年始の大きなイベントの後はなかなか人もお金も動かず、プロモーションには苦労しました。新聞や地域のフリーペーパー、ギャラリーガイドに掲載はしたものの中々成果は見えず、展示が始まった後もマーケットやカフェなどでDMを配ったりしました。余談ですが、私達の展示と同時期に地下で開催されていた「The Beauty of Women」という主に女性の裸体をモチーフにした様々な作品を展示していた会場に足を運ぶ人の多さには少々驚きました。
それでも来てくれた人達は熱心に観てくれました。(値段が安い、と言いつつ買ってくれませんでしたが!)
言うまでもなく作品の売れ行きは良くなかったのですが、私にとっては全てが初めての貴重な時間でした。残念な場面もありましたが、経験出来て良かったと思います。そして何よりも、このメンバーと出会えた事、帰国した時から会っていなかった友人やホームステイ先のご夫婦、わざわざデンマークから来てくれた友人などに再会出来たのが本当に嬉しかったです。
今回の教訓を生かすためにも(初日に来て、作品を観られなかった友人のためにも!) また挑戦したいと思います。新作の構想を練りつつ、ロンドンでの展示を夢見る毎日です。
(わたなべ たかこ)
グループ展のポスター
ギャラリーの入口から。かつてはチョコレート工場だった建物。ギャラリー以外にもオフィスやカフェ、シアターも入っている。

初日の展示は、作品不在のお知らせ。

展示の一部より

White Cube の入口前に設置されていた、Antony Gormley の作品。
◆ときの忘れものは、2013年6月7日[金]―6月22日[土]「6月の画廊コレクション展~9人の作家たち」を開催しています(※日・月・祝日休廊)
上段左から:秋葉シスイ、渡辺貴子、永井桃子
中段左から:
君島彩子、宇田義久、光嶋裕介
下段左から:
根岸文子、若宮綾子、野口琢郎
ときの忘れものが期待する若い世代の作家9名による作品展です。
平面、立体、技法や素材もさまざまな現代作家の多彩な表現をご堪能ください。
●光嶋裕介さんからのメッセージはコチラ。
●宇田義久さんからのメッセージはコチラ。
●渡辺貴子さんからのメッセージはコチラ。
●野口琢郎さんからのメッセージはコチラ。
●根岸文子さんからのメッセージはコチラ。
●君島彩子さんからのメッセージはコチラ。
●永井桃子さんからのメッセージはコチラ。
●若宮綾子さんからのメッセージはコチラ。
●秋葉シスイさんからのメッセージはコチラ。
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