森本悟郎のエッセイ その後・第11回
福田繁雄(1932~2009) (1) 福田繁雄展で始まったC・スクエア
1994年7月末、中京大学創立40周年記念事業として建設中だった新校舎にアートギャラリーを作りたいと、突然学園理事長に告げられた。新校舎竣工を機に地域社会へ開かれた大学をめざす方針で、そのひとつに市民とのインタフェイスとしてのギャラリー設置を構想したのだという。その立ち上げと運営を正式に引き受けることとなったとき、ぼくがまず相談したのはグラフィックデザイナーの福田繁雄さんだった。広報担当として、福田さんには中京大学のイメージづくりに協力して貰った経緯があったこと、美術館運営委員の経験があること、デザイン界を越えて広く表現者との交友があることなど、こういうことにかけては当時最も頼りになる存在だったからだ。
期待通り、いや期待以上にアイディアが出された。例えばギャラリーの名称については、「中京大学のイニシャルはCですね。このCで始まる英語にはいい言葉が多い。たとえばぼくの仕事に関わるものではCommunicationとかCreationとかね。そこで、中京大学のCに新しく生まれるギャラリーのイメージにふさわしいCの単語を掛け合わせる、C×Cといった感じでどうだろう」という具合に。そこでギャラリーコンセプトとしてCommunication、Community、Contemporary、Creation、Cultureの5語を選び、Chukyoに掛け合わせることとした。さらにC×CはCの2乗だからと、名称をC・スクエア(C.SQUARE)に決めた。ロゴマークも福田さん制作だ。福田さんはロゴマークを手がけることが少なかっただけに、これは異例である。名称とロゴはすぐにサービスマーク(役務商標)登録した。
ロゴマーク
運営委員会も福田さんの提唱で実現した。当初は理事長、学長を含む学内委員7人、福田さんはじめ4人の学外委員からなるものだった(これは何度か改編の末、学内構成員による企画会議と学外専門家による専門家会議の二本立てとなる)。
福田さんに相談したもう一つの理由は、開館までの準備期間が2カ月しかないという切迫した状況で、オープンに間に合わせられ、かつ劈頭を飾るにふさわしい作品を準備できる最も身近な作家ということだった。この要請にも周到な作品選びと新作ポスター制作で応えていただいた。展示プランは第1会場が新作を含む中京大学のためのポスターと立体作品、第2会場は代表作がずらりと並ぶポスター作品、さらに第1会場前のロビーやキャンパス中庭にも立体作品を設置するという、幅の広いこの作家の仕事が概観できる充実した展示だった。
展覧会ポスターとDMはむろん福田さんのデザインで、ポスターデザインは第21回企画展まで続く。
こうして1994年10月8日、新校舎のお披露目とともに「福田繁雄展」でC・スクエアはスタートした。
第1会場
第2会場
第1会場前ロビー
福田繁雄展ポスター
(もりもと ごろう)
■森本悟郎 Goro MORIMOTO
1948年愛知県に生まれる。1971年武蔵野美術大学造形学部美術学科卒業。1972年同専攻科修了。小学校から大学までの教職を経て、1994年から2014年3月末日まで中京大学アートギャラリーキュレーター。展評、作品解説、作家論など多数。
◆森本悟郎のエッセイ「その後」は毎月28日の更新です。
◆ジョサイア・コンドルの設計、国の名勝に指定されている旧古河庭園・大谷美術館で「石山修武銅版画展 窓の内、窓の外」が2月25日~3月1日開催されています。
展示される新作銅版画作品はときの忘れもののエディションです。
<わたくしの銅版画は総数25点、コンドルの洋館に、意外や意外しっくりと納まり、安心した。勿論わたくしの主観の内の事ですがね。ともあれ、展覧会のテーマを「窓の内、窓の外」としたのは良かったと自己満足する。自分で満足できなければ何事も始まらぬ。>
(石山修武 GAYA日記より)
石山修武
21. 《GAYAの男》
2014年 銅版
15.0x15.0cm
シートサイズ28.0x25.3cm
Ed.7 Signed
石山修武
22. 《GAYA 窓の外》
2014年 銅版
15.0x15.0cm
シートサイズ28.0x25.3cm
Ed.7 Signed
石山修武
23. 《GAYA 窓の内》
2014年 銅版
15.0x15.0cm
シートサイズ28.0x25.3cm
Ed.7 Signed
石山修武
24. 《GAYA-アニマ》
2014年 銅版
15.0x15.0cm
シートサイズ28.0x25.3cm
Ed.7 Signed
石山修武
25. 《GAYAの塔と井戸》
2014年 銅版
15.0x15.0cm
シートサイズ28.0x25.3cm
Ed.7 Signed
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福田繁雄(1932~2009) (1) 福田繁雄展で始まったC・スクエア
1994年7月末、中京大学創立40周年記念事業として建設中だった新校舎にアートギャラリーを作りたいと、突然学園理事長に告げられた。新校舎竣工を機に地域社会へ開かれた大学をめざす方針で、そのひとつに市民とのインタフェイスとしてのギャラリー設置を構想したのだという。その立ち上げと運営を正式に引き受けることとなったとき、ぼくがまず相談したのはグラフィックデザイナーの福田繁雄さんだった。広報担当として、福田さんには中京大学のイメージづくりに協力して貰った経緯があったこと、美術館運営委員の経験があること、デザイン界を越えて広く表現者との交友があることなど、こういうことにかけては当時最も頼りになる存在だったからだ。
期待通り、いや期待以上にアイディアが出された。例えばギャラリーの名称については、「中京大学のイニシャルはCですね。このCで始まる英語にはいい言葉が多い。たとえばぼくの仕事に関わるものではCommunicationとかCreationとかね。そこで、中京大学のCに新しく生まれるギャラリーのイメージにふさわしいCの単語を掛け合わせる、C×Cといった感じでどうだろう」という具合に。そこでギャラリーコンセプトとしてCommunication、Community、Contemporary、Creation、Cultureの5語を選び、Chukyoに掛け合わせることとした。さらにC×CはCの2乗だからと、名称をC・スクエア(C.SQUARE)に決めた。ロゴマークも福田さん制作だ。福田さんはロゴマークを手がけることが少なかっただけに、これは異例である。名称とロゴはすぐにサービスマーク(役務商標)登録した。
ロゴマーク運営委員会も福田さんの提唱で実現した。当初は理事長、学長を含む学内委員7人、福田さんはじめ4人の学外委員からなるものだった(これは何度か改編の末、学内構成員による企画会議と学外専門家による専門家会議の二本立てとなる)。
福田さんに相談したもう一つの理由は、開館までの準備期間が2カ月しかないという切迫した状況で、オープンに間に合わせられ、かつ劈頭を飾るにふさわしい作品を準備できる最も身近な作家ということだった。この要請にも周到な作品選びと新作ポスター制作で応えていただいた。展示プランは第1会場が新作を含む中京大学のためのポスターと立体作品、第2会場は代表作がずらりと並ぶポスター作品、さらに第1会場前のロビーやキャンパス中庭にも立体作品を設置するという、幅の広いこの作家の仕事が概観できる充実した展示だった。
展覧会ポスターとDMはむろん福田さんのデザインで、ポスターデザインは第21回企画展まで続く。
こうして1994年10月8日、新校舎のお披露目とともに「福田繁雄展」でC・スクエアはスタートした。
第1会場
第2会場
第1会場前ロビー
福田繁雄展ポスター(もりもと ごろう)
■森本悟郎 Goro MORIMOTO
1948年愛知県に生まれる。1971年武蔵野美術大学造形学部美術学科卒業。1972年同専攻科修了。小学校から大学までの教職を経て、1994年から2014年3月末日まで中京大学アートギャラリーキュレーター。展評、作品解説、作家論など多数。
◆森本悟郎のエッセイ「その後」は毎月28日の更新です。
◆ジョサイア・コンドルの設計、国の名勝に指定されている旧古河庭園・大谷美術館で「石山修武銅版画展 窓の内、窓の外」が2月25日~3月1日開催されています。
展示される新作銅版画作品はときの忘れもののエディションです。
<わたくしの銅版画は総数25点、コンドルの洋館に、意外や意外しっくりと納まり、安心した。勿論わたくしの主観の内の事ですがね。ともあれ、展覧会のテーマを「窓の内、窓の外」としたのは良かったと自己満足する。自分で満足できなければ何事も始まらぬ。>
(石山修武 GAYA日記より)
石山修武21. 《GAYAの男》
2014年 銅版
15.0x15.0cm
シートサイズ28.0x25.3cm
Ed.7 Signed
石山修武22. 《GAYA 窓の外》
2014年 銅版
15.0x15.0cm
シートサイズ28.0x25.3cm
Ed.7 Signed
石山修武23. 《GAYA 窓の内》
2014年 銅版
15.0x15.0cm
シートサイズ28.0x25.3cm
Ed.7 Signed
石山修武24. 《GAYA-アニマ》
2014年 銅版
15.0x15.0cm
シートサイズ28.0x25.3cm
Ed.7 Signed
石山修武25. 《GAYAの塔と井戸》
2014年 銅版
15.0x15.0cm
シートサイズ28.0x25.3cm
Ed.7 Signed
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