亭主の本棚からオノサト・トシノブ関係の主な文献をご紹介します。
●『ONOSATO』
オノサトの生前刊行された唯一の作品集。収録点数は14点。ベニス・ビエンナーレにもって行くために英文併記でつくられた。

『ONOSATO』
1964年
南画廊 発行
テキスト:オノサト・トシノブ、久保貞次郎、瀧口修造
●『季刊版画 第9号』
美術出版社は久保貞次郎らが中心になり「版画友の会」を組織し版画の普及に力を入れた。「版画の時代」を象徴し、1961年~1968年まで機関誌を、その後1968~1971年まで『季刊版画』を12号まで刊行した。
美術雑誌でのオノサト特集が版画中心に推移したことにより、「版画家オノサト」というレッテルがはられ、油彩画家としての本領が知られることがなかったことは今から思うと残念なことでした。

『季刊版画』第9号
1970年10月
美術出版社 発行
特集:国際版画展の動向
作家研究:オノサト・トシノブ
テキスト:三木多聞
目次
●『版画藝術 1975年10月号』
オノサトの生前、美術雑誌での特集で最もページが割かれたのがこの『版画藝術』の小特集です。

『版画藝術 1975年10月号』
1975年
阿部出版 発行
テキスト:中原佑介、村井正誠、オノサト・トシノブ
●『'77 現代と声 版画の現在』
「現代と声」は、現代美術の状況に対するメッセージとして、新たな共同性の構築をめざす目的をもって、現代版画センターが1977年度の企画として行なっ たイヴェント全体の呼び名。オノサトなど選ばれた9人の作家の新作版画を中心に全国展、パネルディスカッション、連続シンポジウムなどが各地で開催された。本書はその記録集。

『'77 現代と声 版画の現在』
1978年
現代版画センター 発行
執筆者、座談会、対談出席者:靉嘔、オノサト・トシノブ、磯崎新、加山又造、小野具定、一原有徳、野田哲也、関根伸夫、元永定正、山田光春、岡部徳三、植田実、多木浩二、橋本誠二、吉村貞司、窪田般彌、尾崎正教、針生一郎、鈴木進、松永伍一、峯村敏明、立松和平、黒田三郎、大島辰雄、谷川俊太郎、松村寛、粟津潔、菅井汲、飯田善国、中原佑介、布野修司、北川フラム
●『実在への飛翔 オノサト・トシノブ文集』

『実在への飛翔 オノサト・トシノブ文集』
1978年
叢文社 発行
テキスト:久保貞次郎、オノサト・トシノブ
●久保貞次郎著『わたしの出会った芸術家たち』
美術評論家、大コレクターであり「小コレクター運動」を主導した久保は、本書で最も親しい画家として北川民次、瑛九、オノサト・トシノブ、靉嘔の4人をあげている。上掲の『実在への飛翔 オノサト・トシノブ文集』も久保の支援により刊行された。

『わたしの出会った芸術家たち』
久保貞次郎著
1978年
形象社 発行
●はらだいさむ(原田勇)著『覚え書き オノサト・トシノブ』
瑛九の晩年、木水育男を中心とした福井のコレクターが頒布会を組織して支援したことはよく知られています。
そのメンバーのひとり原田勇と、アートフル勝山の会(荒井由泰代表)の中上光雄らが「福井オノサトの会」を組織して、1970年代以降、取り扱い画商を持たなかったオノサトを支援し、展覧会や版画のエディションを展開しました。

『覚え書き オノサト・トシノブ』
はらだいさむ(原田勇)著
1981年
日本素朴派、福井オノサトの会 発行
●『季刊みづゑ 1984年夏号』
あまたある美術雑誌でのオノサト油彩の特集は僅かなものでした。

『季刊みづゑ 1984年夏号』
1984年
美術出版社 発行
テキスト:中原佑介
●『志水楠男と南画廊』
1979年3月急逝した志水楠男の七回忌に刊行された南画廊史。オノサトは「志水氏との出会い」という文章を寄稿。貴重な証言なので同書から引用します。

『志水楠男と南画廊』
1985年
「志水楠男と南画廊」刊行会 発行
テキスト:大岡信、志水楠男、難波田龍起、今井俊満、小野忠弘、木村賢太郎、加納光於、オノサト・トシノブ、菊畑茂久馬、宇佐美圭司、野崎一良、靉嘔、中西夏之、清水九兵衛、飯田善國、戸村浩、菅井汲、保田春彦、桑原盛行
<志水氏との出会い
オノサト トシノブ 画家
南画廊に、最初に私を紹介したのは、1961年から2年にかけての頃、久保貞次郎であるが、個展をひらくきっかけは,志水氏が市谷の砂土原町に住いのあ る久保氏を尋ね、そのとき壁にかかっていた、私の小品に、はじめて心がとま ったことにあったようだ。その作品は10号位、ひとつの丸、朱の作品であっ た。これはずっとあとで志水氏の述懐である。すでに数年まえ兜屋画廊で、すでに丸のもっとも初期の作品を彼はみているが、その時はほとんどなにも感じ なかったという。
第1回個展は盛況であった。瀧口修造が、「アラベスクの様な」とパンフレ ットをかざった。
個展は2回、3回と進んで、そしてヴェネチア・ビエンナーレの出品にもつ ながっていった。私とトモコと志水さんとのヨーロッパ・アメリカ旅行は、その親密な関係のなかで生れた。
4回目の個展のあと、10年だって、ひさしぶりに桐生で会うことになる。78年の秋に出版された私の文集の出版記念のパーティーに、志水さんが出席し てくれた折であった。桐生に1泊した翌日、私のアトリエを訪れて終日すごし た。陽差しが暖かい、とても気持のよい1日であった。帰りにトモコの車で駅までおくっていった。
南画廊と共にあった10年間は、大作を次々と制作していた年月であった。
その頃、ちょうどいろいろの波がよせはじめていた。私は自分にとっての 「絵画とは何か」という問題だけを追い続けていた。
時代に逆行はない。私もまた、次の新たな時を生きることになるだろう。
重要な出会いというものがある。そのためにはそれぞれの者が、時代という 条件のなかで、永い重い準備の時間がある。時間が必要である。お互いに知る ことなく、時代の必然性に導かれて、ついに出会うのである。
氏と私との出会いはその様なものであったと考えている。>
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■1986年11月30日 桐生の自宅でオノサト・トシノブ死去。
以下はオノサト没後に刊行されたものです。
●はらだいさむ(原田勇)著『オノサト・トシノブ 実在への招喚』

『オノサト・トシノブ 実在への招喚』
はらだいさむ(原田勇)著
1987年
福井オノサトの会・中上光雄・原田勇 発行
●『抽象への道 オノサト・トシノブ画文集』
新聞、雑誌、個展パンフレットなどに掲載された文章を編んだもの。作品画像も豊富で初期具象から晩年までを網羅。巻末の中原佑介編の「オノサト・トシノブ年譜」は生前の二回にわたるインタビューをもとに編まれたもので詳細な記述は第一級の資料的価値をもつ。

『抽象への道 オノサト・トシノブ画文集』
1988年
新潮社 発行
テキスト:オノサト・トシノブ
年譜:中原佑介編
●『オノサト・トシノブ 版画目録1958-1989』
リトグラフ、シルクスクリーン、木版、タペストリー(布に捺染)の全版画220点の画像とデータを収録したカタログレゾネ。

『オノサト・トシノブ 版画目録1958-1989』
1989年
アートスペース 発行
テキスト:オノサト・トシノブ
●『オノサト・トシノブ展図録』
没後初の回顧展カタログ。1939年から晩年までの油彩、水彩を満遍なく網羅し、版画、タペストリーなども加え総計133点が出品された。

『オノサト・トシノブ展図録』
1989年
練馬区立美術館 発行
テキスト:横山勝彦、中原佑介
●オノサト・トモコ著『オノサト・トシノブ伝』
夫人が日記などをもとに著した作家の伝記。

『オノサト・トシノブ伝』
オノサト・トモコ著
1991年
アート・スペース 発行
●『オノサト・トシノブ―円を描いた画家―』展図録
オノサトの生まれた長野県で開催された回顧展カタログ。1937年から1986年までの油彩45点を中心に、水彩、版画など総計77点が出品された。

『オノサト・トシノブ―円を描いた画家―』
1992年
長野県信濃美術館 発行
●『オノサト・トシノブ展 収集家への賛辞―大野元明コレクション』図録
大野元明は尾崎正教、高森俊、岡部徳三のいわゆる「オノサト版画の4人組」のひとりで、1966年から始まったシルクスクリーンの制作を支えた。

『オノサト・トシノブ展 収集家への賛辞―大野元明コレクション』図録
1997年
フジテレビギャラリー 発行
テキスト:瀬木慎一、大野元明
●『抽象のパイオニア オノサト・トシノブ』展図録
今まで開催された最も大規模な回顧展カタログ。東京国立近代美術館はじめ国内主要美術館とチェース・マンハッタン銀行や個人蔵の代表作を網羅。1933年の初期具象から1986年までの油彩85点を中心に水彩、版画など総計117点が出品された。

『抽象のパイオニア オノサト・トシノブ』
2000年
群馬県立近代美術館、群馬県立近代美術館友の会、桐生市教育委員会 発行
テキスト:市川政憲、五十殿利治、藤川哲
●『オノサト・トシノブ展―織都・桐生に生きた抽象画家』図録
オノサトが10歳のときに移り住み亡くなる74歳まで住んでいた桐生の大川美術館で開催された回顧展カタログ。大川美術館所蔵作品を中心に油彩20点はじめ水彩、版画など総計35点が出品された。図版の掲載は4点のみ。
大川美術館では1993年に1回目のオノサト展を開催し、カタログも編集されたが、事情があって公開されていません。

『オノサト・トシノブ展―織都・桐生に生きた抽象画家』
2005年
大川美術館 発行
テキスト:大川栄二、春原史寛、宮地佑治、有村真鐵、奈良彰一、渡邉保、原田勇、新井淳一、保倉一郎、中上光雄、荒井由泰、遠藤京子
●『PRINT WORKS 版画工房と作家たち』図録
1970年代以降の発表場所を持たないオノサトの制作を支えたのは「四人組」による版画制作(エディション)でした。その最大の功労者が上掲の『オノサト・トシノブ伝』に一字も登場しない刷り師の岡部徳三でした。
岡部の没後に開催された工房展カタログには岡部自身の回想が収録されているので引用します。

『PRINT WORKS 版画工房と作家たち』図録
2007年
岡部版画工房 発行
テキスト:今泉省彦、岡部トモ子、岡部徳三
<第一回東京国際版画ビエンナーレ展が開催されたのは1957年。美術界の片隅で息をひそめていた版画に、ようやく陽が差し込むようになった頃だ。その頃よりオノサト・トシノブ氏や靉嘔(アイオウ)氏をシルクスクリーンで刷ってみないか、と周囲から勧められた事もあり、工房の設立を考えていた。両氏とも、まだ無名にちかい作家であり、私自身もシルクスクリーンについて殆ど知識を持たず、同じ創造美育教会のメンバーであった友人より、シルクスクリーン一式を譲り受け、全て手探り状態でスタートした。
両氏の版画を熱心に勧めてくれる人の中に美術評論家の久保貞次郎氏もいて、「版画は刷るよりも売る方が難しい」と力説されていた。採算がとれない事を心配して、刷り上がった作品の一部を買い取ってくれる事になった。
こうして両氏の版画を1966年から刷る事になる。
当時は写真製版がまだ開発途上にあって、今のように柔軟に対応できる代物ではなかった。版ズレがあって当たり前というニス原紙のカッティング版で悪戦苦闘したおかげで、印刷にはどう対応したらよいかが、少しずつ見え始めてきた。
(1996年 神戸アートビレッジセンター「版画工房の仕事展」より 岡部徳三 記)>
●『生誕100年 オノサト・トシノブ』展図録
生誕100年を機に開催された唯一の回顧展で、大川美術館では3回目となる。1935年から1986年までの油彩56点、アクリル1点、水彩、コラージュなど総計86点が出品された。1960年前後の「ベタ丸」時代の作品を中心にすえ、1970年以降の油彩の出品は僅か10点という非網羅的展示によりオノサト評価の方向を大胆に提案した画期的な展覧会でした。

『生誕100年 オノサト・トシノブ』
2012年
大川美術館 発行
テキスト:本江邦夫、小此木美代子
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●今回の展覧会から岡部徳三さんが刷ったシルクスクリーンのいくつかをご紹介します。
出品No.16)
オノサト・トシノブ
「Silk-2」
1966年
シルクスクリーン(刷り:岡部徳三)
Image size: 32.0x40.0cm
Ed.120 サインあり
※レゾネNo.20
出品No.17)
オノサト・トシノブ
「Silk-7」
1967年
シルクスクリーン(刷り:岡部徳三)
Image size: 50.5x50.2cm
Ed.150 サインあり
※レゾネNo.27
出品No.23)
オノサト・トシノブ
「Silk-32」
1970年
シルクスクリーン(刷り:岡部徳三)
Image size: 40.0x40.0cm
Ed.100 サインあり
※レゾネNo.55
出品No.38)
オノサト・トシノブ
「G.H.C 5」
1974年
シルクスクリーン(刷り:岡部徳三)
Image size: 21.8x27.1cm
Ed.200 サインあり
*現代版画センターエディション
※レゾネNo.98
出品No.50)
オノサト・トシノブ
「Silk-74」
1975年
シルクスクリーン(刷り:岡部徳三)
Image size: 60.5x72.0cm
Ed.100 サインあり
※レゾネNo.108
出品No.59)
オノサト・トシノブ
「Prints C」
1979年
シルクスクリーン(刷り:岡部徳三)
Image size: 20.0x20.0cm
Ed.250 サインあり
*現代版画センターエディション
※レゾネNo.164
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※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
◆ときの忘れものは2015年7月25日[土]―8月8日[土]「オノサト・トシノブ展―初期具象から晩年まで」を開催しています(*会期中無休)。
1934年の長崎風景をはじめとする戦前戦後の具象作品から、1950年代のベタ丸を経て晩年までの油彩、水彩、版画をご覧いただき、オノサト・トシノブ(1912~1986)の表現の変遷をたどります。
会場が狭いので実際に展示するのは20数点ですが、作品はシートを含め92点を用意したのでお声をかけてくれればば全作品をご覧にいれます。
全92点のリストはホームページに掲載しました。
価格リストをご希望の方は、「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してメールにてお申し込みください。
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
●作家と作品については亭主の駄文「オノサト・トシノブの世界」をお読みください。
●『ONOSATO』
オノサトの生前刊行された唯一の作品集。収録点数は14点。ベニス・ビエンナーレにもって行くために英文併記でつくられた。

『ONOSATO』
1964年
南画廊 発行
テキスト:オノサト・トシノブ、久保貞次郎、瀧口修造
●『季刊版画 第9号』
美術出版社は久保貞次郎らが中心になり「版画友の会」を組織し版画の普及に力を入れた。「版画の時代」を象徴し、1961年~1968年まで機関誌を、その後1968~1971年まで『季刊版画』を12号まで刊行した。
美術雑誌でのオノサト特集が版画中心に推移したことにより、「版画家オノサト」というレッテルがはられ、油彩画家としての本領が知られることがなかったことは今から思うと残念なことでした。

『季刊版画』第9号
1970年10月
美術出版社 発行
特集:国際版画展の動向
作家研究:オノサト・トシノブ
テキスト:三木多聞
目次●『版画藝術 1975年10月号』
オノサトの生前、美術雑誌での特集で最もページが割かれたのがこの『版画藝術』の小特集です。

『版画藝術 1975年10月号』
1975年
阿部出版 発行
テキスト:中原佑介、村井正誠、オノサト・トシノブ
●『'77 現代と声 版画の現在』
「現代と声」は、現代美術の状況に対するメッセージとして、新たな共同性の構築をめざす目的をもって、現代版画センターが1977年度の企画として行なっ たイヴェント全体の呼び名。オノサトなど選ばれた9人の作家の新作版画を中心に全国展、パネルディスカッション、連続シンポジウムなどが各地で開催された。本書はその記録集。

『'77 現代と声 版画の現在』
1978年
現代版画センター 発行
執筆者、座談会、対談出席者:靉嘔、オノサト・トシノブ、磯崎新、加山又造、小野具定、一原有徳、野田哲也、関根伸夫、元永定正、山田光春、岡部徳三、植田実、多木浩二、橋本誠二、吉村貞司、窪田般彌、尾崎正教、針生一郎、鈴木進、松永伍一、峯村敏明、立松和平、黒田三郎、大島辰雄、谷川俊太郎、松村寛、粟津潔、菅井汲、飯田善国、中原佑介、布野修司、北川フラム
●『実在への飛翔 オノサト・トシノブ文集』

『実在への飛翔 オノサト・トシノブ文集』
1978年
叢文社 発行
テキスト:久保貞次郎、オノサト・トシノブ
●久保貞次郎著『わたしの出会った芸術家たち』
美術評論家、大コレクターであり「小コレクター運動」を主導した久保は、本書で最も親しい画家として北川民次、瑛九、オノサト・トシノブ、靉嘔の4人をあげている。上掲の『実在への飛翔 オノサト・トシノブ文集』も久保の支援により刊行された。

『わたしの出会った芸術家たち』
久保貞次郎著
1978年
形象社 発行
●はらだいさむ(原田勇)著『覚え書き オノサト・トシノブ』
瑛九の晩年、木水育男を中心とした福井のコレクターが頒布会を組織して支援したことはよく知られています。
そのメンバーのひとり原田勇と、アートフル勝山の会(荒井由泰代表)の中上光雄らが「福井オノサトの会」を組織して、1970年代以降、取り扱い画商を持たなかったオノサトを支援し、展覧会や版画のエディションを展開しました。

『覚え書き オノサト・トシノブ』
はらだいさむ(原田勇)著
1981年
日本素朴派、福井オノサトの会 発行
●『季刊みづゑ 1984年夏号』
あまたある美術雑誌でのオノサト油彩の特集は僅かなものでした。

『季刊みづゑ 1984年夏号』
1984年
美術出版社 発行
テキスト:中原佑介
●『志水楠男と南画廊』
1979年3月急逝した志水楠男の七回忌に刊行された南画廊史。オノサトは「志水氏との出会い」という文章を寄稿。貴重な証言なので同書から引用します。

『志水楠男と南画廊』
1985年
「志水楠男と南画廊」刊行会 発行
テキスト:大岡信、志水楠男、難波田龍起、今井俊満、小野忠弘、木村賢太郎、加納光於、オノサト・トシノブ、菊畑茂久馬、宇佐美圭司、野崎一良、靉嘔、中西夏之、清水九兵衛、飯田善國、戸村浩、菅井汲、保田春彦、桑原盛行
<志水氏との出会い
オノサト トシノブ 画家
南画廊に、最初に私を紹介したのは、1961年から2年にかけての頃、久保貞次郎であるが、個展をひらくきっかけは,志水氏が市谷の砂土原町に住いのあ る久保氏を尋ね、そのとき壁にかかっていた、私の小品に、はじめて心がとま ったことにあったようだ。その作品は10号位、ひとつの丸、朱の作品であっ た。これはずっとあとで志水氏の述懐である。すでに数年まえ兜屋画廊で、すでに丸のもっとも初期の作品を彼はみているが、その時はほとんどなにも感じ なかったという。
第1回個展は盛況であった。瀧口修造が、「アラベスクの様な」とパンフレ ットをかざった。
個展は2回、3回と進んで、そしてヴェネチア・ビエンナーレの出品にもつ ながっていった。私とトモコと志水さんとのヨーロッパ・アメリカ旅行は、その親密な関係のなかで生れた。
4回目の個展のあと、10年だって、ひさしぶりに桐生で会うことになる。78年の秋に出版された私の文集の出版記念のパーティーに、志水さんが出席し てくれた折であった。桐生に1泊した翌日、私のアトリエを訪れて終日すごし た。陽差しが暖かい、とても気持のよい1日であった。帰りにトモコの車で駅までおくっていった。
南画廊と共にあった10年間は、大作を次々と制作していた年月であった。
その頃、ちょうどいろいろの波がよせはじめていた。私は自分にとっての 「絵画とは何か」という問題だけを追い続けていた。
時代に逆行はない。私もまた、次の新たな時を生きることになるだろう。
重要な出会いというものがある。そのためにはそれぞれの者が、時代という 条件のなかで、永い重い準備の時間がある。時間が必要である。お互いに知る ことなく、時代の必然性に導かれて、ついに出会うのである。
氏と私との出会いはその様なものであったと考えている。>
------------------------------------
■1986年11月30日 桐生の自宅でオノサト・トシノブ死去。
以下はオノサト没後に刊行されたものです。
●はらだいさむ(原田勇)著『オノサト・トシノブ 実在への招喚』

『オノサト・トシノブ 実在への招喚』
はらだいさむ(原田勇)著
1987年
福井オノサトの会・中上光雄・原田勇 発行
●『抽象への道 オノサト・トシノブ画文集』
新聞、雑誌、個展パンフレットなどに掲載された文章を編んだもの。作品画像も豊富で初期具象から晩年までを網羅。巻末の中原佑介編の「オノサト・トシノブ年譜」は生前の二回にわたるインタビューをもとに編まれたもので詳細な記述は第一級の資料的価値をもつ。

『抽象への道 オノサト・トシノブ画文集』
1988年
新潮社 発行
テキスト:オノサト・トシノブ
年譜:中原佑介編
●『オノサト・トシノブ 版画目録1958-1989』
リトグラフ、シルクスクリーン、木版、タペストリー(布に捺染)の全版画220点の画像とデータを収録したカタログレゾネ。

『オノサト・トシノブ 版画目録1958-1989』
1989年
アートスペース 発行
テキスト:オノサト・トシノブ
●『オノサト・トシノブ展図録』
没後初の回顧展カタログ。1939年から晩年までの油彩、水彩を満遍なく網羅し、版画、タペストリーなども加え総計133点が出品された。

『オノサト・トシノブ展図録』
1989年
練馬区立美術館 発行
テキスト:横山勝彦、中原佑介
●オノサト・トモコ著『オノサト・トシノブ伝』
夫人が日記などをもとに著した作家の伝記。

『オノサト・トシノブ伝』
オノサト・トモコ著
1991年
アート・スペース 発行
●『オノサト・トシノブ―円を描いた画家―』展図録
オノサトの生まれた長野県で開催された回顧展カタログ。1937年から1986年までの油彩45点を中心に、水彩、版画など総計77点が出品された。

『オノサト・トシノブ―円を描いた画家―』
1992年
長野県信濃美術館 発行
●『オノサト・トシノブ展 収集家への賛辞―大野元明コレクション』図録
大野元明は尾崎正教、高森俊、岡部徳三のいわゆる「オノサト版画の4人組」のひとりで、1966年から始まったシルクスクリーンの制作を支えた。

『オノサト・トシノブ展 収集家への賛辞―大野元明コレクション』図録
1997年
フジテレビギャラリー 発行
テキスト:瀬木慎一、大野元明
●『抽象のパイオニア オノサト・トシノブ』展図録
今まで開催された最も大規模な回顧展カタログ。東京国立近代美術館はじめ国内主要美術館とチェース・マンハッタン銀行や個人蔵の代表作を網羅。1933年の初期具象から1986年までの油彩85点を中心に水彩、版画など総計117点が出品された。

『抽象のパイオニア オノサト・トシノブ』
2000年
群馬県立近代美術館、群馬県立近代美術館友の会、桐生市教育委員会 発行
テキスト:市川政憲、五十殿利治、藤川哲
●『オノサト・トシノブ展―織都・桐生に生きた抽象画家』図録
オノサトが10歳のときに移り住み亡くなる74歳まで住んでいた桐生の大川美術館で開催された回顧展カタログ。大川美術館所蔵作品を中心に油彩20点はじめ水彩、版画など総計35点が出品された。図版の掲載は4点のみ。
大川美術館では1993年に1回目のオノサト展を開催し、カタログも編集されたが、事情があって公開されていません。

『オノサト・トシノブ展―織都・桐生に生きた抽象画家』
2005年
大川美術館 発行
テキスト:大川栄二、春原史寛、宮地佑治、有村真鐵、奈良彰一、渡邉保、原田勇、新井淳一、保倉一郎、中上光雄、荒井由泰、遠藤京子
●『PRINT WORKS 版画工房と作家たち』図録
1970年代以降の発表場所を持たないオノサトの制作を支えたのは「四人組」による版画制作(エディション)でした。その最大の功労者が上掲の『オノサト・トシノブ伝』に一字も登場しない刷り師の岡部徳三でした。
岡部の没後に開催された工房展カタログには岡部自身の回想が収録されているので引用します。

『PRINT WORKS 版画工房と作家たち』図録
2007年
岡部版画工房 発行
テキスト:今泉省彦、岡部トモ子、岡部徳三
<第一回東京国際版画ビエンナーレ展が開催されたのは1957年。美術界の片隅で息をひそめていた版画に、ようやく陽が差し込むようになった頃だ。その頃よりオノサト・トシノブ氏や靉嘔(アイオウ)氏をシルクスクリーンで刷ってみないか、と周囲から勧められた事もあり、工房の設立を考えていた。両氏とも、まだ無名にちかい作家であり、私自身もシルクスクリーンについて殆ど知識を持たず、同じ創造美育教会のメンバーであった友人より、シルクスクリーン一式を譲り受け、全て手探り状態でスタートした。
両氏の版画を熱心に勧めてくれる人の中に美術評論家の久保貞次郎氏もいて、「版画は刷るよりも売る方が難しい」と力説されていた。採算がとれない事を心配して、刷り上がった作品の一部を買い取ってくれる事になった。
こうして両氏の版画を1966年から刷る事になる。
当時は写真製版がまだ開発途上にあって、今のように柔軟に対応できる代物ではなかった。版ズレがあって当たり前というニス原紙のカッティング版で悪戦苦闘したおかげで、印刷にはどう対応したらよいかが、少しずつ見え始めてきた。
(1996年 神戸アートビレッジセンター「版画工房の仕事展」より 岡部徳三 記)>
●『生誕100年 オノサト・トシノブ』展図録
生誕100年を機に開催された唯一の回顧展で、大川美術館では3回目となる。1935年から1986年までの油彩56点、アクリル1点、水彩、コラージュなど総計86点が出品された。1960年前後の「ベタ丸」時代の作品を中心にすえ、1970年以降の油彩の出品は僅か10点という非網羅的展示によりオノサト評価の方向を大胆に提案した画期的な展覧会でした。

『生誕100年 オノサト・トシノブ』
2012年
大川美術館 発行
テキスト:本江邦夫、小此木美代子
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●今回の展覧会から岡部徳三さんが刷ったシルクスクリーンのいくつかをご紹介します。
出品No.16)オノサト・トシノブ
「Silk-2」
1966年
シルクスクリーン(刷り:岡部徳三)
Image size: 32.0x40.0cm
Ed.120 サインあり
※レゾネNo.20
出品No.17)オノサト・トシノブ
「Silk-7」
1967年
シルクスクリーン(刷り:岡部徳三)
Image size: 50.5x50.2cm
Ed.150 サインあり
※レゾネNo.27
出品No.23)オノサト・トシノブ
「Silk-32」
1970年
シルクスクリーン(刷り:岡部徳三)
Image size: 40.0x40.0cm
Ed.100 サインあり
※レゾネNo.55
出品No.38)オノサト・トシノブ
「G.H.C 5」
1974年
シルクスクリーン(刷り:岡部徳三)
Image size: 21.8x27.1cm
Ed.200 サインあり
*現代版画センターエディション
※レゾネNo.98
出品No.50)オノサト・トシノブ
「Silk-74」
1975年
シルクスクリーン(刷り:岡部徳三)
Image size: 60.5x72.0cm
Ed.100 サインあり
※レゾネNo.108
出品No.59)オノサト・トシノブ
「Prints C」
1979年
シルクスクリーン(刷り:岡部徳三)
Image size: 20.0x20.0cm
Ed.250 サインあり
*現代版画センターエディション
※レゾネNo.164
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◆ときの忘れものは2015年7月25日[土]―8月8日[土]「オノサト・トシノブ展―初期具象から晩年まで」を開催しています(*会期中無休)。
1934年の長崎風景をはじめとする戦前戦後の具象作品から、1950年代のベタ丸を経て晩年までの油彩、水彩、版画をご覧いただき、オノサト・トシノブ(1912~1986)の表現の変遷をたどります。会場が狭いので実際に展示するのは20数点ですが、作品はシートを含め92点を用意したのでお声をかけてくれればば全作品をご覧にいれます。
全92点のリストはホームページに掲載しました。
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●作家と作品については亭主の駄文「オノサト・トシノブの世界」をお読みください。
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