スタッフSの海外ネットサーフィン No.39
「Art Busan 2016」
BEXCO, Busan

会期:2016年5月20日[金]~5月23日[月]
会場:BEXCO(韓国・釜山)
読者の皆様こんにちわ。5月12日から14日に開催されたアートフェア東京の余韻も冷めぬ内から、韓国は釜山より、次なるアートフェアのレポートをお届けさせていただきます、スタッフSこと新澤です。
最早お約束と化しつつある、前後日が快晴にも拘わらず移動日のみを雨に降られて向かうは韓国第二の都市・釜山。今回はソウルに行く時と違い成田空港からの出発とあって、つい羽田に向かったりしないように注意しての移動でしたが、成田に到着して作家兼スタッフの秋葉シスイさんと合流した所で早速のハプニングが。当初は現地で合流する予定だったときの忘れもの社長もまさかの戦線離脱…! 3月に亭主が事故に遭って以来、張り詰めていた緊張の糸が、アートフェア東京を乗り切ってついに切れてしまったようです。飛行機搭乗間際に社長の航空券やホテルのキャンセルをノートPCで行い、降り続ける雨空へ飛び立ち一路釜山へ。
2012年のBAMA以来、2度目の釜山となる自分ですが、前回は全日会場のホテルにこもりきりで終わってしまったためにろくに地理も覚えておらず、今回も何か質問されるたびにシドロモドロで空回りを繰り返すという、我ながらなんだかなぁ…という有様でした。
今回はとにかくブースサイズが広いため、設営も使える時間は全て利用しようということで、設営日の前日に現地入り。1月のART STAGE SINGAPOREではホテルが遠くて苦労したことから、今回は会場から徒歩5分のワンルーム型ホテルを予約。チェックインはなしで、部屋の鍵もドアの電子ロックにメールで連絡されたパスコードを打ち込むという無人方式に戸惑いましたが、今までにない方式にちょっとワクワクもしました。ホテルまでのタクシーの運転の荒っぽさに酔った体調を休めながら荷物を片付けていると、作家の野口琢郎さん、葉栗剛さん、長崎美希さん達もホテルに到着したと連絡が。夕飯に丁度良い時間だったので、集合した後は韓国に来たらやはりこれ、ということで近所の焼肉屋へ。お店の人がやたらとテキパキと肉を焼き、切り分けた上に取り分けまでしてくれるせいで少々忙しなかった夕飯が済んだ後は、腹ごなしに世界有数の敷地面積を持つ新世界デパートへ行ってみましたが、フェア会場のBEXCO周辺のお店は閉店時間がやたらと早く、通常のお店は9時、飲食店でも10時には閉店とあって中まで見ることは適わず、入口だけ確認してこの日は終了となりました。

翌日、会場までの近さに感動しながらブースに辿り着くと、過去最大サイズのブースの前に鎮座する5つの木箱。兎に角中身を出さねば始まらないと野口さん、葉栗さん、長崎さんにもお手伝いいただき、まずは平面作品を詰めた木箱二つを開けて作品を取り出して取り出して取り出して…流石に過去最大の出品数なだけあり、平面作品を取り出すだけでも一苦労でした。作品を全て引っ張り出したら、木箱をブースの外に押し出し、事前に大番頭の尾立さんに用意していただいた展示プランに沿って壁に並べて、いざ展示作業開始!
1月のシンガポールでは、長崎さんの作品を入れるディスプレイケースの取り付けに時間がかかり過ぎてしまい、他のほとんどの展示は秋葉さんによるものという体たらく、今回こそは! と意気込んだものの、結果は計ったかのように1月の焼き直し。何が自分の作業をここまで遅くしているのか……。それでもなんとか作品の展示を終えれば仕上げは画廊のロゴや作家名のカッティングシールを壁面上部に貼りつけです。位置決め程度ならば椅子の上につま先立ちでどうにかできましたが、流石に貼り付けは安定した足場(脚立)なしには厳しい。事務局からは事前に有料で貸し出しが可能と聞いていたので行ってみるも、何時行っても返却されていない。焦れて幾つ脚立を用意しているのかと訊いてみれば、たったの2脚。200近い画廊が参加しており、その4分の1は海外からの参加なのに2脚……これはダメだと当日の借りだしには見切りをつけ、明日の朝一からの予約を入れて設営日は終了。
会場入りした時点でのブース風景。
ブースのサイズもさることながら、その入り口をふさぐ木箱のサイズと数に思わず放心。
自分がこちらの壁面と葉栗木彫作品に手こずっている間に…
秋葉さんは野口さんと一緒に内側の延べ40mにも及ぶ壁面展示を完了。
我ながらこの差には情けないやら恥ずかしいやら。


特別公開日、作業開始時間から会場に向かい、秋葉さんが作品価格の円からウォンへの換算に四苦八苦される中、自分は朝一でようやく借りられた脚立によじ登って、昨日の内に位置決めしておいたカッティングシールを片っ端から貼り付けて行き、ついでにライトの位置調整やらをしていると、あっと言う間に開場30分前。ホテルが近いからと作業着で来ていたので、慌てて一度ホテルに戻って接客用の服に着替えてとんぼ返り。事務局に手配してもらった通訳スタッフの方と顔合わせを済ませ、お客様を迎えるべく準備完了したときの忘れものブースは以下のようになりました。
幅10m、奥行き10mの大スペース。
葉栗剛の大型木彫を中央に置いても、余裕で通り抜けられます。
韓国では刺青は評判が良くないとのことなので、今回は男気シリーズ以前の作品を展示。
葉栗さんの出品作品の詳細はコチラ
外側の壁にも作品がズラリ。
こちらは手前から長崎美希、草間彌生、小野隆生を展示。
長崎さんの出品作品の詳細はコチラ。
内側のブースは、左側の手前から野口琢郎。
野口さんの出品作品の詳細はコチラをクリック。
具体(吉原治良、松谷武判、浮田要三、文承根)、ナム・ジュン・パイク、瀧口修造、瑛九。
ブース中央に新作を含む秋葉シスイの100号クラスの個展スペース。
秋葉さんの出品作品の詳細はコチラ。
ブースの右側は建築家のドローイングコーナーとして光嶋裕介、フランク・ロイド・ライト、磯崎新、安藤忠雄、ル・コルビュジエ。
ブースの安全基準上必要だと開催直前に通達され、増設された壁面端のL字の短辺内側にはマン・レイのペン画。
何とか13:00の開場には間に合いましたが、15:00まではVIP以上のVVIP限定の入場ということもあり、会場の広さと相まってどうにも閑散とした印象の出だしでした。15:00になりVIPプレビューの時間になっても劇的に来場者が増えることもなく、結局この日は一人の方に野口さんの作品価格について訊かれただけで終了。先行きの不安さを通訳の方に調べてもらった美味しいカルビタンで吹き飛ばし、明日こそはと意気込んだフェア初日でした。
一般公開日は来場者の数はそこそこあり、ブースがエントランスに近かったので開場前に外を見てみると、連日入場待ちの長蛇の列。これなら期待が持てるかも! と、思いきや、いざ開場してみるとブースに入ってくる人が妙に少ない。どうなってるのと入り口を確認してみると、皆入ってくるなり左右に分かれてしまい、真っ直ぐ進んだ先にあるときの忘れものブースに来るのは3分の1程度。いやいやそれなら帰り際にブースの前を通る筈、と思うも出入り口は他にも2つあり、来場者の流れは「見て回る」というより「通り過ぎていく」という印象が強かったです。
一般公開日の開場前風景。
ここだけみると中々の人の入りなのですが…
後から知ったことですが、釜山では今回のフェアの直前(二週間前)に地元の画廊協会主催のアートフェアが開催されており、コレクターの多くは既にそちらで作品を購入済み、結果財布の紐が固くなっていた模様。今回安藤忠雄と磯崎新の作品をご購入いただいたお客様も、2週間前のアートフェアで12点も買ってしまっていたため、ウチとは丁々発止の値切り合戦が繰り広げられることとなりました。
最終日、ときの忘れものの定番であるエディション作品や、物故作家の作品が駆け込みで売れたものの、野口さんの作品は価格交渉まで進むも注文はなし、葉栗さんと長崎さんの作品は皆微笑ましく見られてこそいましたが、購入を検討するような素振りの方は現れないまま、終了となってしまいました。サンタフェのような完敗でこそありませんでしたが、現地にお越しいただいた作家の皆さまの作品が売れなかったことは、自分としても非常に悔しいことでした。
次回の海外アートフェアは、8月の第1週にインドネシアで開催されるART STAGE JAKARTAとなります。
1月にシンガポールで大変お世話になった画廊も今回ART BUSANに出展されており、お食事をご一緒してお話しさせていただいた所、今回釜山に来ていただいた作家の作品はインドネシアでは十分に目があると聞くことができました。同時にインドネシアは日本やシンガポールと比べて著しく治安が悪いとも聞かされたせいでやや腰が引けておりますが、今回のフェアの悔しさは、是が非でもジャカルタで晴らさせてもらう所存です。
(しんざわ ゆう)
*画廊亭主敬白
当初は亭主と社長も乗り込んでかつてない広さのブースを舞台にときの忘れもののベストセレクションをアピールするつもりだったのですが、釜山からほろ苦い戦果を手にスタッフが帰国しました。
バカでかい会場、多数の海外ギャラリーの参加、まではよかったのですが、フェアを運営する事務局の不手際の数々にはあいた口がふさがらない、お粗末なフェアでした。
そもそも釜山への参加を決めたのは毎月のように韓国に出かけている旧知の画廊さんが事務局の面々と来廊、熱心に出展を勧めてくれたからでした。海外からの出展に力を入れ、集客や情報の発信についても大いに期待できるということでした。ところがその直後に、話を持ってきた当の画廊さんが行方不明になってしまった(笑)。
つてを失った私たちは連日のように事務局に電話してあれこれ質問するのですが要領を得ない。
海外のフェアで重要なのは代金の決済です。世界の主要フェアでカードが使えないところはありません。ところが釜山の事務局は予告もなく突然「昨年トラブルがあったので、今年はカードは使えません」と連絡してきました。これにはさすがに世界中から非難が殺到したらしく、開幕直前になってようやくカード使用が可能になったのですが、一事が万事、不慣れとかでは済ませられない失態が続きます。
公式ホームページはあるのですが、最終日になっても私たちの出品作品はただの一点も掲載されませんでした。出展ギャラリーのリストはあるのですが、リンクすら張られていません。某小山さんのような有名画廊の出品作品はたくさん掲載されているのに、私たち無名画廊は何の紹介もない。同じ大金を払っているのに不公平です。おそらく事務局の力量をこえていたのでしょう。ホームページすら不完全なのに、集客なんて無理。
いつもだったら必ずある事前の問い合わせなど皆無で、プレビューの人出は惨憺たるものでした。売り上げゼロが続き、留守番の私たちは胃が痛くなる毎日。最終日にやっと5点が売れ(うち1点は日本の画廊さんに買っていただきました。感謝!)、サンタフェの悪夢の再来にはなりませんでしたが、広いブースに合わせ力作を用意して現地まで出張ってくれた葉栗剛さん、長崎美希さん、野口琢郎さん、秋葉シスイさんには、申しわけない結果となってしまいました。
そんななかでの救いは、事務局が手配してくれたIさんという通訳の女性が素晴らしい方だったことです。高校卒業後ずっと韓国で暮らし、韓国人と結婚、本職は翻訳家ということですが、最終日に何とか販売に繋がったのはIさんの接客力と人柄のおかげといってもいいでしょう、記して感謝をささげたいと思います。
◆明日のギャラリーコンサートはキャンセルなどあり、まだ残席があります。ぜひお出かけください。
ときの忘れもの・拾遺 ギャラリーコンサートのご案内
第2回「J.S.バッハへ~チェロとギターによるソロとデュオ」
日時:2016年5月27日(金)18時~19時
出演:富田牧子(チェロ)、塩谷牧子(ギター)
プロデュース:大野幸
曲目予定:J.S.バッハ、Z.コダーイ、F.プーランク、A.ピアソラ他
*要予約=料金:1,000円
必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記して、メールにてお申し込みください。
info@tokinowasuremono.com
◆スタッフSの「海外ネットサーフィン」は毎月26日の更新です。
「Art Busan 2016」
BEXCO, Busan

会期:2016年5月20日[金]~5月23日[月]
会場:BEXCO(韓国・釜山)
読者の皆様こんにちわ。5月12日から14日に開催されたアートフェア東京の余韻も冷めぬ内から、韓国は釜山より、次なるアートフェアのレポートをお届けさせていただきます、スタッフSこと新澤です。
最早お約束と化しつつある、前後日が快晴にも拘わらず移動日のみを雨に降られて向かうは韓国第二の都市・釜山。今回はソウルに行く時と違い成田空港からの出発とあって、つい羽田に向かったりしないように注意しての移動でしたが、成田に到着して作家兼スタッフの秋葉シスイさんと合流した所で早速のハプニングが。当初は現地で合流する予定だったときの忘れもの社長もまさかの戦線離脱…! 3月に亭主が事故に遭って以来、張り詰めていた緊張の糸が、アートフェア東京を乗り切ってついに切れてしまったようです。飛行機搭乗間際に社長の航空券やホテルのキャンセルをノートPCで行い、降り続ける雨空へ飛び立ち一路釜山へ。
2012年のBAMA以来、2度目の釜山となる自分ですが、前回は全日会場のホテルにこもりきりで終わってしまったためにろくに地理も覚えておらず、今回も何か質問されるたびにシドロモドロで空回りを繰り返すという、我ながらなんだかなぁ…という有様でした。
今回はとにかくブースサイズが広いため、設営も使える時間は全て利用しようということで、設営日の前日に現地入り。1月のART STAGE SINGAPOREではホテルが遠くて苦労したことから、今回は会場から徒歩5分のワンルーム型ホテルを予約。チェックインはなしで、部屋の鍵もドアの電子ロックにメールで連絡されたパスコードを打ち込むという無人方式に戸惑いましたが、今までにない方式にちょっとワクワクもしました。ホテルまでのタクシーの運転の荒っぽさに酔った体調を休めながら荷物を片付けていると、作家の野口琢郎さん、葉栗剛さん、長崎美希さん達もホテルに到着したと連絡が。夕飯に丁度良い時間だったので、集合した後は韓国に来たらやはりこれ、ということで近所の焼肉屋へ。お店の人がやたらとテキパキと肉を焼き、切り分けた上に取り分けまでしてくれるせいで少々忙しなかった夕飯が済んだ後は、腹ごなしに世界有数の敷地面積を持つ新世界デパートへ行ってみましたが、フェア会場のBEXCO周辺のお店は閉店時間がやたらと早く、通常のお店は9時、飲食店でも10時には閉店とあって中まで見ることは適わず、入口だけ確認してこの日は終了となりました。

翌日、会場までの近さに感動しながらブースに辿り着くと、過去最大サイズのブースの前に鎮座する5つの木箱。兎に角中身を出さねば始まらないと野口さん、葉栗さん、長崎さんにもお手伝いいただき、まずは平面作品を詰めた木箱二つを開けて作品を取り出して取り出して取り出して…流石に過去最大の出品数なだけあり、平面作品を取り出すだけでも一苦労でした。作品を全て引っ張り出したら、木箱をブースの外に押し出し、事前に大番頭の尾立さんに用意していただいた展示プランに沿って壁に並べて、いざ展示作業開始!
1月のシンガポールでは、長崎さんの作品を入れるディスプレイケースの取り付けに時間がかかり過ぎてしまい、他のほとんどの展示は秋葉さんによるものという体たらく、今回こそは! と意気込んだものの、結果は計ったかのように1月の焼き直し。何が自分の作業をここまで遅くしているのか……。それでもなんとか作品の展示を終えれば仕上げは画廊のロゴや作家名のカッティングシールを壁面上部に貼りつけです。位置決め程度ならば椅子の上につま先立ちでどうにかできましたが、流石に貼り付けは安定した足場(脚立)なしには厳しい。事務局からは事前に有料で貸し出しが可能と聞いていたので行ってみるも、何時行っても返却されていない。焦れて幾つ脚立を用意しているのかと訊いてみれば、たったの2脚。200近い画廊が参加しており、その4分の1は海外からの参加なのに2脚……これはダメだと当日の借りだしには見切りをつけ、明日の朝一からの予約を入れて設営日は終了。
会場入りした時点でのブース風景。ブースのサイズもさることながら、その入り口をふさぐ木箱のサイズと数に思わず放心。
自分がこちらの壁面と葉栗木彫作品に手こずっている間に…
秋葉さんは野口さんと一緒に内側の延べ40mにも及ぶ壁面展示を完了。我ながらこの差には情けないやら恥ずかしいやら。


特別公開日、作業開始時間から会場に向かい、秋葉さんが作品価格の円からウォンへの換算に四苦八苦される中、自分は朝一でようやく借りられた脚立によじ登って、昨日の内に位置決めしておいたカッティングシールを片っ端から貼り付けて行き、ついでにライトの位置調整やらをしていると、あっと言う間に開場30分前。ホテルが近いからと作業着で来ていたので、慌てて一度ホテルに戻って接客用の服に着替えてとんぼ返り。事務局に手配してもらった通訳スタッフの方と顔合わせを済ませ、お客様を迎えるべく準備完了したときの忘れものブースは以下のようになりました。
幅10m、奥行き10mの大スペース。葉栗剛の大型木彫を中央に置いても、余裕で通り抜けられます。
韓国では刺青は評判が良くないとのことなので、今回は男気シリーズ以前の作品を展示。
葉栗さんの出品作品の詳細はコチラ
外側の壁にも作品がズラリ。こちらは手前から長崎美希、草間彌生、小野隆生を展示。
長崎さんの出品作品の詳細はコチラ。
内側のブースは、左側の手前から野口琢郎。野口さんの出品作品の詳細はコチラをクリック。
具体(吉原治良、松谷武判、浮田要三、文承根)、ナム・ジュン・パイク、瀧口修造、瑛九。
ブース中央に新作を含む秋葉シスイの100号クラスの個展スペース。秋葉さんの出品作品の詳細はコチラ。
ブースの右側は建築家のドローイングコーナーとして光嶋裕介、フランク・ロイド・ライト、磯崎新、安藤忠雄、ル・コルビュジエ。
ブースの安全基準上必要だと開催直前に通達され、増設された壁面端のL字の短辺内側にはマン・レイのペン画。何とか13:00の開場には間に合いましたが、15:00まではVIP以上のVVIP限定の入場ということもあり、会場の広さと相まってどうにも閑散とした印象の出だしでした。15:00になりVIPプレビューの時間になっても劇的に来場者が増えることもなく、結局この日は一人の方に野口さんの作品価格について訊かれただけで終了。先行きの不安さを通訳の方に調べてもらった美味しいカルビタンで吹き飛ばし、明日こそはと意気込んだフェア初日でした。
一般公開日は来場者の数はそこそこあり、ブースがエントランスに近かったので開場前に外を見てみると、連日入場待ちの長蛇の列。これなら期待が持てるかも! と、思いきや、いざ開場してみるとブースに入ってくる人が妙に少ない。どうなってるのと入り口を確認してみると、皆入ってくるなり左右に分かれてしまい、真っ直ぐ進んだ先にあるときの忘れものブースに来るのは3分の1程度。いやいやそれなら帰り際にブースの前を通る筈、と思うも出入り口は他にも2つあり、来場者の流れは「見て回る」というより「通り過ぎていく」という印象が強かったです。
一般公開日の開場前風景。ここだけみると中々の人の入りなのですが…
後から知ったことですが、釜山では今回のフェアの直前(二週間前)に地元の画廊協会主催のアートフェアが開催されており、コレクターの多くは既にそちらで作品を購入済み、結果財布の紐が固くなっていた模様。今回安藤忠雄と磯崎新の作品をご購入いただいたお客様も、2週間前のアートフェアで12点も買ってしまっていたため、ウチとは丁々発止の値切り合戦が繰り広げられることとなりました。
最終日、ときの忘れものの定番であるエディション作品や、物故作家の作品が駆け込みで売れたものの、野口さんの作品は価格交渉まで進むも注文はなし、葉栗さんと長崎さんの作品は皆微笑ましく見られてこそいましたが、購入を検討するような素振りの方は現れないまま、終了となってしまいました。サンタフェのような完敗でこそありませんでしたが、現地にお越しいただいた作家の皆さまの作品が売れなかったことは、自分としても非常に悔しいことでした。
次回の海外アートフェアは、8月の第1週にインドネシアで開催されるART STAGE JAKARTAとなります。
1月にシンガポールで大変お世話になった画廊も今回ART BUSANに出展されており、お食事をご一緒してお話しさせていただいた所、今回釜山に来ていただいた作家の作品はインドネシアでは十分に目があると聞くことができました。同時にインドネシアは日本やシンガポールと比べて著しく治安が悪いとも聞かされたせいでやや腰が引けておりますが、今回のフェアの悔しさは、是が非でもジャカルタで晴らさせてもらう所存です。
(しんざわ ゆう)
*画廊亭主敬白
当初は亭主と社長も乗り込んでかつてない広さのブースを舞台にときの忘れもののベストセレクションをアピールするつもりだったのですが、釜山からほろ苦い戦果を手にスタッフが帰国しました。
バカでかい会場、多数の海外ギャラリーの参加、まではよかったのですが、フェアを運営する事務局の不手際の数々にはあいた口がふさがらない、お粗末なフェアでした。
そもそも釜山への参加を決めたのは毎月のように韓国に出かけている旧知の画廊さんが事務局の面々と来廊、熱心に出展を勧めてくれたからでした。海外からの出展に力を入れ、集客や情報の発信についても大いに期待できるということでした。ところがその直後に、話を持ってきた当の画廊さんが行方不明になってしまった(笑)。
つてを失った私たちは連日のように事務局に電話してあれこれ質問するのですが要領を得ない。
海外のフェアで重要なのは代金の決済です。世界の主要フェアでカードが使えないところはありません。ところが釜山の事務局は予告もなく突然「昨年トラブルがあったので、今年はカードは使えません」と連絡してきました。これにはさすがに世界中から非難が殺到したらしく、開幕直前になってようやくカード使用が可能になったのですが、一事が万事、不慣れとかでは済ませられない失態が続きます。
公式ホームページはあるのですが、最終日になっても私たちの出品作品はただの一点も掲載されませんでした。出展ギャラリーのリストはあるのですが、リンクすら張られていません。某小山さんのような有名画廊の出品作品はたくさん掲載されているのに、私たち無名画廊は何の紹介もない。同じ大金を払っているのに不公平です。おそらく事務局の力量をこえていたのでしょう。ホームページすら不完全なのに、集客なんて無理。
いつもだったら必ずある事前の問い合わせなど皆無で、プレビューの人出は惨憺たるものでした。売り上げゼロが続き、留守番の私たちは胃が痛くなる毎日。最終日にやっと5点が売れ(うち1点は日本の画廊さんに買っていただきました。感謝!)、サンタフェの悪夢の再来にはなりませんでしたが、広いブースに合わせ力作を用意して現地まで出張ってくれた葉栗剛さん、長崎美希さん、野口琢郎さん、秋葉シスイさんには、申しわけない結果となってしまいました。
そんななかでの救いは、事務局が手配してくれたIさんという通訳の女性が素晴らしい方だったことです。高校卒業後ずっと韓国で暮らし、韓国人と結婚、本職は翻訳家ということですが、最終日に何とか販売に繋がったのはIさんの接客力と人柄のおかげといってもいいでしょう、記して感謝をささげたいと思います。
◆明日のギャラリーコンサートはキャンセルなどあり、まだ残席があります。ぜひお出かけください。
ときの忘れもの・拾遺 ギャラリーコンサートのご案内
第2回「J.S.バッハへ~チェロとギターによるソロとデュオ」
日時:2016年5月27日(金)18時~19時
出演:富田牧子(チェロ)、塩谷牧子(ギター)
プロデュース:大野幸
曲目予定:J.S.バッハ、Z.コダーイ、F.プーランク、A.ピアソラ他
*要予約=料金:1,000円
必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記して、メールにてお申し込みください。
info@tokinowasuremono.com
◆スタッフSの「海外ネットサーフィン」は毎月26日の更新です。
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