現代美術=売れない、という時代を長く経験してきた亭主ですが、まさか生きているうちに、例えば「具体」の吉原治良白髪一雄のニセモノ(贋作)が出現するなんて思いもよりませんでした。
草間彌生に至ってはタブローばかりではなく版画の贋作が横行し、先日は私どものエディション作品にまで草間スタジオの保証をつけてくれなんて言われ、絶句しました。版元はうちなんですよ、これ以上の真作の保証はないと思うのですが・・・・
まぁそれだけ現代美術が売れる時代になったのだから喜ぶべきなのでしょう。

今回ご紹介するのは、草間彌生の1986年作のシルクスクリーン2点です。
もちろん、正真正銘の真作(モンモノ)であります。

草間_ポスター_額

上掲の展示写真では、マットで文字が隠れていますが、実はこの作品、ちょっと珍しい例なのですが、今から30年前に日仏会館の注文により制作された講演会のポスターです。
総数(サイン入り、文字無しを含め)で300部ほど刷られたのですが(ポスターは180部)、果たして半分も残っているかどうか。
大半は無料でいろいろなところに配布され、壁にテープや鋲でとめられ、あげくは破棄されたでしょう、たとえ残っていても鋲の穴など傷があり、今となっては完璧なコレクションのものは希少です。
(画面をクリックすると拡大されます)
1986年5月7日ポスター草間彌生
「無限の水玉 Dots Infinity」
1986年 シルクスクリーン
イメージサイズ:28x32cm
シートサイズ:51.5x36.4cm
文字の刷られて無い作品(ed. 100, AP10)の他に、日仏会館ポスターとして180枚が制作された。
版画工房のエンボスあり
This image was also used as a poster for Maison Franco-Japonaise in an edition of 180
版元:日仏会館
publisher: Maison Franco-Japonaise, Tokyo
*レゾネ番号94(阿部出版)


1986年10月17日ポスター草間彌生
「無限の網 Infinity Nets」
1986年 シルクスクリーン
イメージサイズ:28x32cm
シートサイズ:51.5x36.4cm
文字の刷られて無い作品(ed. 100, AP10)の他に、日仏会館ポスターとして180枚が制作された。
版画工房のエンボスあり
This image was also used as a poster for Maison Franco-Japonaise in an edition of 180
版元:日仏会館
publisher: Maison Franco-Japonaise, Tokyo
*レゾネ番号95(阿部出版)

こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください

版元となった日仏会館は、日本経済近代化の功績者渋沢栄一と、著名な詩人でもあった当時の駐日フランス大使ポール・クローデル等によって「日仏両国の協力によって相互の文化研究を行い、交流をはかる」ことを目的として、1924年(大正13年)に設立された団体です。

刷りを担当したのは、久利屋グラフィック(松村宏さん)です。
シルクスクリーンは先駆者岡部徳三さんや、石田了一さんの工房が有名ですが、松村さんは1980年4月に工房を開いたばかりで、ろくに仕事が無かった。ある偶然で、日仏会館からのポスターの仕事が舞い込み、その後20年にわたる日仏会館ポスターシリーズが始まりました。今回ご紹介する草間彌生など、150作家・300点にのぼる作品が制作されました。
参加した作家の幾人かを挙げれば、宇佐美圭司、横尾忠則若林奮磯崎新宮脇愛子、菅木志雄、加納光於堀内正和靉嘔、高松次郎、槇文彦、田淵安一、舟越直木、島田しづ、堂本尚郎、今井俊満、東野芳明などなど、錚々たるメンバーです。
さすが文化の国、作家の選定もセンスがいい。