佐藤研吾のエッセイ「大地について―インドから建築を考える―」第26回
「遠く離れた、同じ地域の2つのプロジェクトを同時に進めていくための作法を考える」
・シャンティニケタン、コルカタにおける新規建築プロジェクトについて
インド・シャンティニケタンのビシュバ・バロティ大学に、日本文化を研究する学者ギータ先生がいる。先生は特に宮沢賢治とラビンドラナート・タゴールの思想的連関あたりを専門としている。3年前、私が初めてシャンティニケタンを訪れて会ったのがギータ先生で、そこで私が宮沢賢治の話をしたことに非常に共感してくれたのがギータ先生であった。その、タゴールと宮沢賢治の連関、学校という共同体なるものの可能性についてをもっと考究すべきだとなって、始めたのがIn-Field Studio in Santiniketanであった。
彼女はシャンティニケタンと都市コルカタを行き来する生活をしており、その二つの場所に「宮沢賢治研究所」なる拠点を作ろうとしている。
そんな思想を持った人のための、2つの居場所について考えている。

シャンティニケタンのギータ先生の家スケッチ。離れと母屋双方に構える大きな本棚と、双方を繋ぐための廊下があり得る。
さらには、インドの二つの家から、日本の東北を遠視するためにどのような設え、構えが必要か。ましてや、農民芸術概論の実践者である宮沢賢治へ向かうには、農業他を軸とした非公式な学校の開校も必要だろう。そんな共同体作りを通じて、改めてインド・ベンガルの地のタゴールと繋がるのではないか。

すでに基礎は別設計者によって決められているため、その基礎形状に合わせた上家を組み立てる。構造は現地で一般的なコンクリート+レンガを想定するが、内部には木架構をしつらえるのはどうだろうか。

コルカタのギータ先生の家のスケッチ。道路を挟んで見える運河との高さ関係を考慮して、地上階と2階の床形状を検討する。座の生活は日本とインドどちらにも残るが、その違いとして表面の素材(木と石)があるかもしれない。
一方で、設計者である私自身は日本の東北(福島)にいる。そのトランスな状況からカタチを組み立てる上で、家具スケールの大きさと、座の生活、すなわち床面の設計から組み立てを始めている。
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そして、さらにもう一つのプロジェクトが始まりつつある。同じくシャンティニケタンにて晩年を過ごし、いくつかの木製家具、内装造作を残した日本大工・カサハラキンタローの記念館の計画である。これについては、前回の投稿に少し書いた。
インド東部でいかにして木造の建設が可能か、の構法的な面からアプローチを検討している。施主は現地に住むカサハラの子孫の方々ではあるが、既往の研究も少なく、学術的調査を含めて計画を進めていく。

キンタローカサハラ記念館のスケッチ。躯体構造として木造を想定し、現地の技術を考慮して単純な形状とするが、足元については、シロアリ対策を含んだ基礎立ち上がり付近の形状の検討を今後行っていく。

キンタローカサハラ記念館のスケッチ。ミュージアムに隣接して、木製家具工房を配置することを考える。
以上2つの計画はもちろん別々のものであるが、同時期、同じ地域で進行しているため、むしろこれから両者がどう融解していくかが、重要な気がしている。
(さとう けんご)
■佐藤研吾(さとう けんご)
1989年神奈川県横浜生まれ。2011年東京大学工学部建築学科卒業。2013年早稲田大学大学院建築学専攻修士課程(石山修武研究室)修了。同専攻嘱託研究員を経て、2014年よりスタジオGAYA。2015年よりインドのVadodara Design AcademyのAssistant Professor、および東京大学工学系研究科建築学専攻博士課程在籍。福島・大玉村で藍染の活動をする「歓藍社」所属。インドでデザインワークショップ「In-Field Studio」を主宰。
◆佐藤研吾のエッセイ「大地について―インドから建築を考える―」は毎月7日の更新です。
●ホームページのトップの誌面を刷新し、中央列最下段に「作品紹介」のコーナーを新設しました。
安藤忠雄から六角鬼丈まで「主な取扱作家」38作家(各3~5点)の127作品を一挙掲載したのに続き、靉嘔、山田正亮、アントニン・レーモンド、磯辺行久、ジョエル・シャピロ、槇文彦、マン・レイ、嶋田しづ等を次々と掲載しています。すべて在庫がありますので、ご注文いただけます。
画面をスクロールすると全点をご覧いただけますし、ご興味のある画面をクリックすると当該作品のページ(詳細なデータ入り)にリンクします。
作品紹介の更新は毎週4回(火曜・木曜・金曜・土曜)を予定しています。
●本日のお勧め作品は倉俣史朗です。
倉俣史朗 Shiro KURAMATA
Ephemera(Flower Vase)
1989(1989-2019)
アクリル、アルミパイプ カラーアルマイト、ガラス管
D18.0xH140.0cm
製造元:株式会社日南(Original Design Shop SPIRAL)
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
◆ときの忘れものは今年も<ART FAIR TOKYO 2019>に出展し、「倉俣史朗展」を開催します。
VIPプレビュー:2019年3月7日(木)
一般公開:2019年3月8日(金)~10日(日)
会場:有楽町駅前・東京国際フォーラム ホールE & ロビーギャラリー
ときの忘れものブースナンバー:G128
公式サイト:https://artfairtokyo.com/
出品作家:倉俣史朗+磯崎新・安藤忠雄
●ときの忘れものは〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。阿部勤設計の新しい空間についてはWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 E-mail:info@tokinowasuremono.com
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。

「遠く離れた、同じ地域の2つのプロジェクトを同時に進めていくための作法を考える」
・シャンティニケタン、コルカタにおける新規建築プロジェクトについて
インド・シャンティニケタンのビシュバ・バロティ大学に、日本文化を研究する学者ギータ先生がいる。先生は特に宮沢賢治とラビンドラナート・タゴールの思想的連関あたりを専門としている。3年前、私が初めてシャンティニケタンを訪れて会ったのがギータ先生で、そこで私が宮沢賢治の話をしたことに非常に共感してくれたのがギータ先生であった。その、タゴールと宮沢賢治の連関、学校という共同体なるものの可能性についてをもっと考究すべきだとなって、始めたのがIn-Field Studio in Santiniketanであった。
彼女はシャンティニケタンと都市コルカタを行き来する生活をしており、その二つの場所に「宮沢賢治研究所」なる拠点を作ろうとしている。
そんな思想を持った人のための、2つの居場所について考えている。

シャンティニケタンのギータ先生の家スケッチ。離れと母屋双方に構える大きな本棚と、双方を繋ぐための廊下があり得る。
さらには、インドの二つの家から、日本の東北を遠視するためにどのような設え、構えが必要か。ましてや、農民芸術概論の実践者である宮沢賢治へ向かうには、農業他を軸とした非公式な学校の開校も必要だろう。そんな共同体作りを通じて、改めてインド・ベンガルの地のタゴールと繋がるのではないか。

すでに基礎は別設計者によって決められているため、その基礎形状に合わせた上家を組み立てる。構造は現地で一般的なコンクリート+レンガを想定するが、内部には木架構をしつらえるのはどうだろうか。

コルカタのギータ先生の家のスケッチ。道路を挟んで見える運河との高さ関係を考慮して、地上階と2階の床形状を検討する。座の生活は日本とインドどちらにも残るが、その違いとして表面の素材(木と石)があるかもしれない。
一方で、設計者である私自身は日本の東北(福島)にいる。そのトランスな状況からカタチを組み立てる上で、家具スケールの大きさと、座の生活、すなわち床面の設計から組み立てを始めている。
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そして、さらにもう一つのプロジェクトが始まりつつある。同じくシャンティニケタンにて晩年を過ごし、いくつかの木製家具、内装造作を残した日本大工・カサハラキンタローの記念館の計画である。これについては、前回の投稿に少し書いた。
インド東部でいかにして木造の建設が可能か、の構法的な面からアプローチを検討している。施主は現地に住むカサハラの子孫の方々ではあるが、既往の研究も少なく、学術的調査を含めて計画を進めていく。

キンタローカサハラ記念館のスケッチ。躯体構造として木造を想定し、現地の技術を考慮して単純な形状とするが、足元については、シロアリ対策を含んだ基礎立ち上がり付近の形状の検討を今後行っていく。

キンタローカサハラ記念館のスケッチ。ミュージアムに隣接して、木製家具工房を配置することを考える。
以上2つの計画はもちろん別々のものであるが、同時期、同じ地域で進行しているため、むしろこれから両者がどう融解していくかが、重要な気がしている。
(さとう けんご)
■佐藤研吾(さとう けんご)
1989年神奈川県横浜生まれ。2011年東京大学工学部建築学科卒業。2013年早稲田大学大学院建築学専攻修士課程(石山修武研究室)修了。同専攻嘱託研究員を経て、2014年よりスタジオGAYA。2015年よりインドのVadodara Design AcademyのAssistant Professor、および東京大学工学系研究科建築学専攻博士課程在籍。福島・大玉村で藍染の活動をする「歓藍社」所属。インドでデザインワークショップ「In-Field Studio」を主宰。
◆佐藤研吾のエッセイ「大地について―インドから建築を考える―」は毎月7日の更新です。
●ホームページのトップの誌面を刷新し、中央列最下段に「作品紹介」のコーナーを新設しました。
安藤忠雄から六角鬼丈まで「主な取扱作家」38作家(各3~5点)の127作品を一挙掲載したのに続き、靉嘔、山田正亮、アントニン・レーモンド、磯辺行久、ジョエル・シャピロ、槇文彦、マン・レイ、嶋田しづ等を次々と掲載しています。すべて在庫がありますので、ご注文いただけます。
画面をスクロールすると全点をご覧いただけますし、ご興味のある画面をクリックすると当該作品のページ(詳細なデータ入り)にリンクします。
作品紹介の更新は毎週4回(火曜・木曜・金曜・土曜)を予定しています。
●本日のお勧め作品は倉俣史朗です。
倉俣史朗 Shiro KURAMATAEphemera(Flower Vase)
1989(1989-2019)
アクリル、アルミパイプ カラーアルマイト、ガラス管
D18.0xH140.0cm
製造元:株式会社日南(Original Design Shop SPIRAL)
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
◆ときの忘れものは今年も<ART FAIR TOKYO 2019>に出展し、「倉俣史朗展」を開催します。
VIPプレビュー:2019年3月7日(木)一般公開:2019年3月8日(金)~10日(日)
会場:有楽町駅前・東京国際フォーラム ホールE & ロビーギャラリー
ときの忘れものブースナンバー:G128
公式サイト:https://artfairtokyo.com/
出品作家:倉俣史朗+磯崎新・安藤忠雄
●ときの忘れものは〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。阿部勤設計の新しい空間についてはWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 E-mail:info@tokinowasuremono.com
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。

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