1936(昭和11)年2月松本禎子と結婚した佐藤俊介(1912年4月生まれ、結婚当時は23歳)は松本家に戸主として入籍し松本俊介となります。
9月第23回二科展に出品するとともに、同月、靉光、北川實、難波田龍起、鶴岡政男と洋画小品展を開催します。彼らはいずれも竣介と親しい画家たちで、翌10月に妻禎子と創刊した雑誌『雜記帳』にもしばしば寄稿しています。

随筆(エッセエ)雑誌『雜記帳』10月創刊号には、宮澤賢治(遺稿)、関根秀雄、伊原青々園、武田麟太郎、伊藤廉、猪熊弦一郎、森田たま、林芙美子、木村秀政、大江賢次、岸丈夫、高見順、古澤元、佐波甫、向坂丈吉、森惣一、八並誠一、難波田龍起、佐藤彬、松本俊介(竣介)が寄稿し、藤川栄子と鶴岡政男が素描を寄せ、随筆を寄稿した猪熊、岸、難波田は文章に合わせ挿画も掲載されています。

24歳の無名といってもいい青年が編集したこの雑誌のレベルには驚かざるを得ません。
本日紹介する難波田龍起(1905年8月生まれ)は竣介より7才ほど年長、お互いを信頼し合う仲間であり、創刊号から終刊号(14号)までしばしば登場しています。挿画もですが、文章の方が多い。
目次から難波田龍起の寄稿したものを抜き出してみると、
第1号(創刊号):公園
第2号:畫家の手記
第3号:菊作る父の死を悼みて
第7号:現代女性の一斷面
第9号:アポロへの道
第11号:吾が父を語る
第14号:文化序説

雑記帳03p47難波田龍起雜記帳03号p47所収 難波田龍起

難波田龍起(1905-1997) Nambata Tatsuoki
北海道旭川生まれ。1923年早稲田第一高等学校に入学、関東大震災直後の夜警当番で高村光太郎と出会い絵画の道を志す。早稲田大学政経学部を中退し、太平洋画会研究所、本郷絵画研究所に学ぶ。1933年頃から松本竣介、鶴岡政男らと親交を深める。川島理一郎主宰の金曜会に入り、1935年仲間と[フォルム]を結成。1937年自由美術家協会の結成に参加、1959年に退会するまで連続出品した。戦前は古代ギリシャへの憧憬をテーマとした具象絵画を多く描き、戦後は幾何学的抽象を経て、50年代後半から<交錯し躍動する線のシリーズ>を開始、独自の表現様式を確立する。1978年現代版画センターより銅版画集『街と人』『海辺の詩』を刊行。最晩年まで様々な手法で抽象表現絵画の可能性を追求した。1988年毎日芸術賞を受賞、1996年文化功労者として顕彰を受ける。

出品No.12 難波田龍起《花》
012_Nambata
1930年代
板に油彩
27.0x21.7cm(3号)
サインあり
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◆ときの忘れものは「松本竣介と『雜記帳』」展を開催しています。
会期:2019年10月8日(火)~10月26日(土) *日・月・祝日休廊
両面
「松本竣介と『雜記帳』」展図録のご案内
松本竣介と雑記帳2019年 
ときの忘れもの刊
B5判 44ページ
テキスト:小松崎拓男
収録作家:松本竣介恩地孝四郎福沢一郎海老原喜之助難波田龍起鶴岡政男桂ゆき
価格:1,100円(税込)
梱包送料:250円

*メールにてお申し込みください。

・松本竣介の画集、カタログを特別頒布しています。
小松崎拓男さんの連載エッセイ「松本竣介研究ノート」は毎月3日の更新です。
・大川美術館の小此木美代子さんのエッセイ/「松本竣介 アトリエの時間」について
・東京国立近代美術館の大谷省吾さんのエッセイ「松本竣介の素描について」
・練馬区立美術館の喜夛孝臣さんのエッセイ/花束の如く美しく―「松本竣介と野田英夫―大川美術館収蔵品を中心に―」展を見て―
植田実さんの連載エッセイ「生きているTATEMONO 松本竣介を読む」(全14回)
深野一朗さんのエッセイ「ヤノベさんと松本竣介」

●ときの忘れものは青山から〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。
阿部勤設計の新しい空間はWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
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