画廊では本日から4日間という短い会期ですが、
特集展示:尾形一郎・尾形優とル・コルビュジエを開催します。
会期=2022年4月6日[水]―4月9日[土]  11:00-19:00
16

続いて、ときの忘れものの4月~7月にかけての企画展をご案内いたします。

◆中村潤展 うろうろをへて こつこつのはて
会期=2022年4月15日(金)~4月24日(日) 11:00-19:00 
※会期中無休

340a
2019年に、「Tricolore2019―中村潤・尾崎森平・谷川桐子展」で初めてときの忘れもので展示をした中村潤。トイレットペーパーを編んで造形した作品や方眼紙を針と糸で刺したオブジェ作品を京都で制作しています。今回はときの忘れもの初の個展という形式で作品を発表。不思議なカタチ、細やかな編みこみ、作品は柔らかな雰囲気を持ちながらも、一度見たら忘れられない強烈な印象を与えます。
【ステートメント】
紙や糸くずなどを素材に大、小、様々な立体物をつくります。
気になる素材を手に取り、手触りを確かめたり,光にあてて眺めたり。手の中で遊ぶように始まる作品制作の主な技法は、編む、折る、ねじる、縫う等、生活に親しみにある手の技法です。
積み重なり、繰り返されるだけでふつふつと沸くおかしみのような色や形を期待して、手を動かします。
無理矢理ではない「へー」とか「ほー」とか「きれい」とか「なんでー」の形を見たいのです。
何かを表すためでも、考えるためでも無い色や形の結実がポンと置かれると,空間がすっと広がってのびやかになる。そんなことになればいいなと思います。春を楽しみに、こつこつと冬を過ごします。

nakamura_rock中村潤
《岩》
2020年

54.0×116.0×50.0cm
Signed

nakamura_pique02中村潤
"pique2"
2021年
紙、糸
10.0×14.0×11.0cm
Signed

中村潤 NAKAMURA Megu (1985-)
1985年生まれ。京都府在住。2011年京都市立芸術大学大学院彫刻専攻修了。
主な展覧会に「「市」@ ACG Villa Kyoto」(ACG Villa Kyoto、2021、京都)、「HOME PARTY 06 –蝶や花や(ちやほや)-」(みずのき美術館、2020、京都)、「Tricolore2019―中村潤・尾崎森平・谷川桐子展」(ギャラリー ときの忘れもの、2019、東京)、個展「さて」(gallery morning kyoto、2019、京都)、「ART OSAKA 2019」ホテルグランヴィア大阪(大阪)、個展「Showcase Gallery 2018-2019」(横浜市民ギャラリーあざみ野エントランスロビー、神奈川、2018)、「清流の国ぎふ芸術祭 Art Award IN THE CUBE2017」(岐阜県美術館、岐阜、2017、入賞)、個展「めいめいの重なり」(アートスペース虹、2017、京都)、「Art Court Frontier 2014 #12」(アートコートギャラリー、2014、大阪)、「ゲンビどこでも企画公募2011展」(広島市現代美術館、2011、広島、審査員特別賞)など。ほか、ワークショップも多数実施。
https://www.instagram.com/nakamura_megu/


生誕110年 松本竣介展
会期=2022年5月10日(火)~5月28日(土) 11:00-19:00 
※日・月・祝日休廊

39_matsumoto_0401表面1200
今年生誕110年を迎える松本竣介(1912-1948)。太平洋戦争直前に「生きてゐる画家」という文を発表して自由芸術を標榜し、戦後すぐには「全日本美術家に諮る」という美術家の団結を求める文を画家たちに送るなど、明確な意志を貫いた作家でもあり、その早世が惜しまれました。
本展では、松本竣介が当時3歳になる愛息を描いた1942年の油彩《コップを持つ子ども》と素描を中心に、肖像画に焦点を当て12点の作品をご覧いただきます。油彩《コップを持つ子ども》はこれまでにほとんど公開されたことのない作品です。
展覧会に合わせてカタログを刊行します(テキスト:大谷省吾/東京国立近代美術館)。

色面と輪郭線との関係を注意深くたどっていけば、やはり何度か交互に描き進められていることがわかる。そして背景。深い闇に用いられている色彩も、服やコップに用いられているのと同じ朱色が下層に認められる一方で、その補色となる青緑色も重ねられていることがわかる。それによって闇の深みが増すわけだ。背景を何層にも深く塗りこめる一方で、前述の丸みのある額に見られるような明部を際立たせていくことで、子どもは闇の中に浮かぶ灯のような存在感を獲得するのである。
―大谷省吾「松本竣介《コップを持つ子ども》について」『生誕110年 松本竣介展』(ときの忘れもの、2022)より


松本竣介_コップを持つ子ども松本竣介
《コップを持つ子ども》1942年 板・油彩
35.5×27.5cm  右下にサイン、年記あり
『松本竣介画集』(1963年、平凡社)No.56
『松本竣介油彩』(1978年、綜合工房)No.100


matsumoto-42松本竣介
《顔》(4)
1947年頃 紙にインク
イメージサイズ:10.5×7.5cm
シートサイズ:13.8×9.8cm
印サインあり



◆ 伊藤公象作品集刊行記念展―ソラリスの襞
2022年6月3日(金)~6月12日(日)11:00-19:00
*会期中無休
協力:ARTS ISOZAKI

「ソラリスの襞」とは、現在準備中の磯崎寛也詩集のタイトルである。磯崎氏は「ソラリスの海《回帰記憶》のなかで—伊藤公象」 展(2021年9月~2022年3月)を開催した水戸のARTRS ISOZAKIの代表であり、伊藤公象作品集制作プロジェクトのチーフプロデューサーも務めている。展覧会と作品集について打ち合わせを重ねる中で、伊藤公象のドローイングを掲載した詩集の企画が熟成してきた。「ソラリス」とは、海が一つの生命体という惑星を描いたスタニスワフ・レムのSF小説であり、土にエロス(生成)を感じる伊藤の作品世界と重ねて展覧会タイトルとした。
 伊藤にとっては、山本太郎の『鬼文』(青土社、1975年)の装丁に関って以来の詩とのコラボレーションである。今回、詩集のために伊藤が準備した挿画は言葉を失わせるものだった。成形した粘土を乾燥させるときに、収縮して割れるのを防ぐため台との間に紙を挟む。その紙に残されたシワに着目した作品が伊藤の《褶曲》シリーズであり、そのインスタレーションは「関係」そのものを造形化した作品として高い評価を得てきた。その《褶曲》に色彩とイメージが加わって、たぐい希なドローイングが誕生した。
 新聞用紙に施された描画が、粘土と板の間で縮むことでランダムなシワが生まれ、色彩も微妙に滲む。私たちはそのとらえ所のないイメージとともに、言葉にできない感情に揺らぐことになる。似たような表現技法デカルコマニーでは、絵の具を紙で挟み、剥がすところにどうしても人為が関与するが、《褶曲》で粘土と板の間に生まれるシワは全くの偶然が産み出す。伊藤の中心テーマであるエロスがドローイングとして出現したといえる。
 本展は、伊藤公象作品集刊行記念展だが、ARTS ISOZAKIのご理解とご協力を得て、この立体感のあるドローイング「ソラリスの襞」を体験できる貴重な機会となった。半世紀にわたる伊藤の展覧会歴でも、ドローイングを中心として構成されるのは初めてである。同時に展示される《回帰記憶》や《pearl blueの襞》、紙の褶曲《白い襞—鳥たち—》で、伊藤の作品の魅力を十全に感じ取って頂きたい。

ブルーパールの襞伊藤公象
《ブルーパールの襞》
ARTS ISOZAKI 屋上にて常設
撮影:大谷健二

回帰記憶1_2021年_セラミック_焼成土_撮影_大谷健二伊藤公象
《回帰記憶》1
2021年
セラミック(焼成土)
撮影:大谷健二

伊藤公象(b.1932)
石川県金沢市に生まれる。1972年茨城県笠間市に伊藤知香と現伊藤アトリエを設立。1997年女子美術大学教授、同大学院教授(1999年定年及び満期退職)。2002年金沢美術工芸大学大学院専任教授(2009年任期満了退職。現在、金沢美術工芸大学大学院 非常勤講師)。IAC国際陶芸アカデミー会員。
主な活動として、1978年「インド・トリエンナーレ」日本代表として参加し、ゴールドメダル受賞。1984年「ヴェネチア・ビエンナーレ」に日本代表として参加。1985年伊藤公象企画の野外展示会「'85 涸沼・土の光景」(茨城県涸沼湖畔にて)をプロデュースし、「瀬戸内国際」や「越後妻有」等、大規模な野外国際芸術祭のルーツと評価される。2002年英国国立テート・ギャラリーのセント・アイビス美術館にて個展「ウイルス-地の襞、海襞」開催。2009年「伊藤公象 WORKS 1974~2009」展(茨城県陶芸美術館、東京都現代美術館の巡回展)2016年「KENPOKU ART 2016 茨城県北芸術祭」に参加。穂積家住宅の庭園にて多軟面体のインスタレーションを披露。2018年新潟県「水と土の芸術祭2018」に参加、メイン会場にてインスタレーション「地表の襞 エロスとタナトスの迫間」を展示。現在も笠間の伊藤アトリエで精力的に制作活動を行う。



◆ ガウディ生誕170年 細江英公写真展
2022年6月21日(火)~7月9日(土) 11:00-19:00 
*日・月・祝日休廊


今年はスペインの建築家アントニ・ガウディ(1852-1926)の生誕170年記念の年です。本展では、写真家・細江英公(b. 1933)によるガウディ建築の写真を展示いたします。細江英公は1964年にバルセロナでガウディ建築と衝撃的な出合いをします。その13年後、1977年から数度に亘って「サグラダファミリア」「グエル公園」「カサバトリョ」などガウディ建築の撮影を行ない、〈ガウディへの讃歌〉を発表しました。40年以上も前に撮影・プリントされたヴィンテージプリントのモノクロとカラーを20点ご覧いただきます。
また、ときの忘れもののブログでは、長くスペインに在住し、ガウディ研究を行なっている丹下敏明先生の連載が始まっています。こちらも是非ご覧ください。

12_sagrada_familia細江英公
《Sagrada Familia》1977 
ヴィンテージ・ゼラチンシルバープリン
38.4x57.5cm/50.5x60.6cm
サインあり

細江英公 HOSOE Eikoh(b.1933)
1933年山形県に生まれる。50年英語を学ぶため米軍居住地に通い、アメリカ人の子供たちを撮影。51年第1回「富士フォトコンテスト」で最高賞を受賞し、写真家を志す。54年東京写真短期大学(現・東京工芸大学)写真技術科卒業。デモクラート美術家協会の瑛九と出会い、強い影響を受ける。56年銀座・小西六フォトギャラリーにて初個展。59年「VIVO」の設立に参加(61年解散)。60年日本写真批評家協会新人賞、富士フォトコンテスト年間作家賞受賞。63年写真集『薔薇刑』で日本写真批評家協会作家賞受賞。70年写真集『鎌鼬』で芸術選奨文部大臣賞受賞。75年東京写真大学短期大学部(現・東京工芸大学)の教授となる。82年全米とパリで個展開催、パリ市賞受賞。83年アルル国際写真フェスティバル名誉賞受賞。94年東京工芸大学芸術学部教授に就任。日本写真協会年度賞(93年)受賞。95年清里フォトアートミュージアムの初代館長に就任。98年東京工芸大学芸術学部(2003年で定年退職)及び大学院芸術学研究科(修士)課程教授に就任(02年博士課程教授に就任)。紫綬褒章受章。03年ロンドンにて英王立写真協会創立150周年特別記念メダル受章。06年日本人初のルーシー賞(アメリカ)受賞。07年旭日小綬章叙勲。2010年文化功労者に選ばれる。2017年旭日重光章叙勲

●ときの忘れものは2017年に青山から〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。阿部勤が設計した個人住宅だった空間で企画展の開催、版画のエディション、美術書の編集等を行なっています(WEBマガジン コラージ2017年12月号18~24頁の特集参照)。
JR及び南北線の駒込駅南口から徒歩約8分です。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 
E-mail:info@tokinowasuremono.com
http://www.tokinowasuremono.com/
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。*日・月・祝日は休廊ですが、4月15日(金)~24日(日)「中村潤展 うろうろをへて こつこつのはて」は会期中無休です。