ペルー、クスコから帰国し13年の年月が過ぎたかと思うと時の流れの速さを感じずには居られない。今春、二度目の在外研修でイタリア、カッラーラの採石場の前に私は立った。この13年間で自分自身がどのように変化し、成長できたか考える機会となった。
ペルーでの3年間は毎日必死だった。自分自身の核のようなものを見いだそうとアンデスの山々を歩き回り、遺跡を調査し、雄大な大地の元で制作し、穴の開いた靴を修理し、工夫し、現地の人々に協力して貰い作品を造り続けた。計画的に何かをすると言うよりは目の前にあること、やりたいと思うことに正面からぶつかり一つずつこなしていった感じである。当時の私にとって3年間の時間は無限のように感じられた。今から思えば時間に追われる事無く自分の為だけに使える3年間は宝物のような時間だった。

ペルーでの制作
イタリアでの1ヶ月はアッという間に過ぎ去った、カッラーラの採石場を目の前にしたワイン醸造家宅に滞在させて頂き、採石場を見ながら制作する。思ったよりも弱々しい葡萄の木が、春の訪れを待っているかのように感じられた。そして心の内面を刻むような彫刻を制作されるジュリアーノ・ヴァンジ氏、誰もが楽しめる美術館を探求され続けたオメロ触覚美術館館長御夫妻、40年の歳月をかけ異国の地に教会を建てられた建築家の渡邊泰男氏など、イタリアで活躍されている方々にお目にかかってお話を伺える時間を持つことが出来た。

オメロ触覚美術館館長ご夫妻が持参した作品を触察している様子
思い返すと夢のような時間だった。何だか私が私自身では無く、仮想の世界を歩いているように感じられた。ふわふわと流れていきそうな自分自身をつなぎ止めてくれたのは矢張り彫刻を造り、自分自身と向き合う時間だった。なかなか作品にならない憂鬱な時間が続いたが、闇の中を手探りで少しずつ進んでいくような感覚こそが次の表現に繋がる何かかもしれないと思えた。

カッラーラにて制作
イタリアから帰国し、日常の時間に追われている。「ときの忘れもの」の庭に作品を設置して頂いた。庭に並んだ作品を見ていると作品を制作した頃、ペルーから帰国し風土を強く意識していた頃の時間に思いが向かった。時間の流れが頭の中で行ったり来たりしている。
(きたがわ たろう)

《静けさ》2013年、ベルファースト 於:ときの忘れもの

《静けさ》2019年、ベルファースト 於:ときの忘れもの

《静けさ》2013年、ベルファースト 於:ときの忘れもの

《コダイ》2018年、ベルファースト 於:ときの忘れもの
■北川 太郎 KITAGAWA Taro
1976年兵庫県生まれ。2000年金沢美術工芸大学美術工芸学部美術科彫刻専攻卒業。2007年愛知県立芸術大学大学院美術研究科(彫刻領域)修了。2007-2010年文化庁新進芸術家海外研修員(3年派遣)、ペルー(クスコ)。2023年文化庁新進芸術家海外研修員(短期派遣)、イタリア(カッラーラ)。主な個展に2000年オスマ美術館(ペルー)、2019年奈義町現代美術館(岡山)、2020年高梁市成羽美術館、2021年ときわミュージアム(山口)。主なグループ展に2021年「すべてのひとに石がひつよう」ヴァンジ彫刻庭園美術館、2022年「これってさわれるのかな?-彫刻に触れる展覧会-」神奈川県立近代美術館鎌倉別館、2022年「DOMANI・明日展」国立新美術館。パブリック・コレクション:神奈川県立近代美術館、岡山県立美術館、奈義町現代美術館(岡山)、ヴァンジ彫刻庭園美術館(静岡)、ときわミュージアム(山口)、台中市文化局(台湾)。
●ジョナス・メカスの映像作品27点を収録した8枚組のボックスセット「JONAS MEKAS : DIARIES, NOTES & SKETCHES VOL. 1-8 (Blu-Ray版/DVD版)」を販売しています。
映像フォーマット:Blu-Ray、リージョンフリー/DVD PAL、リージョンフリー
各作品の撮影形式:16mmフィルム、ビデオ
制作年:1963~2014年
合計再生時間:1,262分
価格等については、3月4日ブログをご参照ください。
●ときの忘れものは2017年に青山から〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。阿部勤が設計した個人住宅だった空間で企画展の開催、版画のエディション、美術書の編集等を行なっています(WEBマガジン コラージ2017年12月号18~24頁の特集参照)。
JR及び南北線の駒込駅南口から徒歩約8分です。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
E-mail:info@tokinowasuremono.com
http://www.tokinowasuremono.com/
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。*日・月・祝日は休廊
ペルーでの3年間は毎日必死だった。自分自身の核のようなものを見いだそうとアンデスの山々を歩き回り、遺跡を調査し、雄大な大地の元で制作し、穴の開いた靴を修理し、工夫し、現地の人々に協力して貰い作品を造り続けた。計画的に何かをすると言うよりは目の前にあること、やりたいと思うことに正面からぶつかり一つずつこなしていった感じである。当時の私にとって3年間の時間は無限のように感じられた。今から思えば時間に追われる事無く自分の為だけに使える3年間は宝物のような時間だった。

ペルーでの制作
イタリアでの1ヶ月はアッという間に過ぎ去った、カッラーラの採石場を目の前にしたワイン醸造家宅に滞在させて頂き、採石場を見ながら制作する。思ったよりも弱々しい葡萄の木が、春の訪れを待っているかのように感じられた。そして心の内面を刻むような彫刻を制作されるジュリアーノ・ヴァンジ氏、誰もが楽しめる美術館を探求され続けたオメロ触覚美術館館長御夫妻、40年の歳月をかけ異国の地に教会を建てられた建築家の渡邊泰男氏など、イタリアで活躍されている方々にお目にかかってお話を伺える時間を持つことが出来た。

オメロ触覚美術館館長ご夫妻が持参した作品を触察している様子
思い返すと夢のような時間だった。何だか私が私自身では無く、仮想の世界を歩いているように感じられた。ふわふわと流れていきそうな自分自身をつなぎ止めてくれたのは矢張り彫刻を造り、自分自身と向き合う時間だった。なかなか作品にならない憂鬱な時間が続いたが、闇の中を手探りで少しずつ進んでいくような感覚こそが次の表現に繋がる何かかもしれないと思えた。

カッラーラにて制作
イタリアから帰国し、日常の時間に追われている。「ときの忘れもの」の庭に作品を設置して頂いた。庭に並んだ作品を見ていると作品を制作した頃、ペルーから帰国し風土を強く意識していた頃の時間に思いが向かった。時間の流れが頭の中で行ったり来たりしている。
(きたがわ たろう)

《静けさ》2013年、ベルファースト 於:ときの忘れもの

《静けさ》2019年、ベルファースト 於:ときの忘れもの

《静けさ》2013年、ベルファースト 於:ときの忘れもの

《コダイ》2018年、ベルファースト 於:ときの忘れもの
■北川 太郎 KITAGAWA Taro
1976年兵庫県生まれ。2000年金沢美術工芸大学美術工芸学部美術科彫刻専攻卒業。2007年愛知県立芸術大学大学院美術研究科(彫刻領域)修了。2007-2010年文化庁新進芸術家海外研修員(3年派遣)、ペルー(クスコ)。2023年文化庁新進芸術家海外研修員(短期派遣)、イタリア(カッラーラ)。主な個展に2000年オスマ美術館(ペルー)、2019年奈義町現代美術館(岡山)、2020年高梁市成羽美術館、2021年ときわミュージアム(山口)。主なグループ展に2021年「すべてのひとに石がひつよう」ヴァンジ彫刻庭園美術館、2022年「これってさわれるのかな?-彫刻に触れる展覧会-」神奈川県立近代美術館鎌倉別館、2022年「DOMANI・明日展」国立新美術館。パブリック・コレクション:神奈川県立近代美術館、岡山県立美術館、奈義町現代美術館(岡山)、ヴァンジ彫刻庭園美術館(静岡)、ときわミュージアム(山口)、台中市文化局(台湾)。
●ジョナス・メカスの映像作品27点を収録した8枚組のボックスセット「JONAS MEKAS : DIARIES, NOTES & SKETCHES VOL. 1-8 (Blu-Ray版/DVD版)」を販売しています。
映像フォーマット:Blu-Ray、リージョンフリー/DVD PAL、リージョンフリー各作品の撮影形式:16mmフィルム、ビデオ
制作年:1963~2014年
合計再生時間:1,262分
価格等については、3月4日ブログをご参照ください。
●ときの忘れものは2017年に青山から〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。阿部勤が設計した個人住宅だった空間で企画展の開催、版画のエディション、美術書の編集等を行なっています(WEBマガジン コラージ2017年12月号18~24頁の特集参照)。
JR及び南北線の駒込駅南口から徒歩約8分です。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
E-mail:info@tokinowasuremono.com
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営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。*日・月・祝日は休廊
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