「刷り師・石田了一の仕事」第2回「工房訪問記その2」
「刷り師・石田了一の仕事」第1回「工房訪問記その1」に続き、今回もスタッフ3人で石田工房を訪れた日の様子をレポートいたします。
倉俣史朗「Cahier(カイエ)」を例としてシルクスクリーン制作の様子を目の当たりにし、プロの仕事に感銘を受けていたのもつかのま、石田さんが「自分たちで(シルクスクリーンを)つくってみる?」と思いがけない一言をかけてくださいました。

石田了一さん
草間彌生、磯崎新、アンディ・ウォーホルら、レジェンドたちの作品を手掛けられてきた石田さんに、まさかオリジナル作品を刷っていただけることになるなんて……夢のようなお誘いに驚きながらも、迷わず体験をさせていただくことに。
まずは、刷りたい絵柄を製版フィルム上に表現していきます。スタッフMJは絵筆で、スタッフIはクレヨンで絵を描き、スタッフMはカッターで赤いフィルムを剥がして模様を表現しました。ちなみに磯崎新《TSUKUBA》も、同様のカッティングフィルムで制作されているそうです。


絵柄が完成したら、乳剤を塗ったメッシュ(網の目)の上にフィルムを固定し、「焼付用光源装置」で紫外線ランプを照射。3分ほど露光すると紫外線の当たった箇所の乳剤が固まります。そのあと勢いよく水で洗い流すと、光が当たらなかった箇所=製版フィルムに絵を描いた箇所からは乳剤が落ちてメッシュ(網の目)が露出。いわゆる「版」が完成します。






体より大きい機械をなんなく使いこなし、流れるような手つきで版を洗う石田さんの姿にスタッフたちの目は釘付け。
版が乾いたら、いよいよ台にセットし、インクをのせて「刷り」の工程に移ります。刷り台には小さな穴があいており、下から空気を吸うことで紙がぴったりと圧着する仕組みになっているそう。作品を刷る前に一度メッシュにインクを通しておくと、刷るときにちょうどいい抵抗が生まれるそうです。

今回使わせてもらったのは、1インチの中に250網のあるメッシュ(テトロンスクリーン)
まず初めに刷ってもらったのは、スタッフMの作品。黄色と青の2色をつかい、その境界をグラデーションにしたいとオーダーしました。


境界線の位置を微妙に調整しながらインクをまぜていく工程は、素人には簡単に真似できるものではありません。「ぼかしの石田」たる所以を垣間見た瞬間でした。


刷った作品は内容にもよるものの、だいたい1時間くらいで乾くそう
続くMJの作品でも、この「ぼかし」をオーダー。水色と黄色の配色はMの作品とも似ていますが、石田さんは1回ごとに目当ての色をつくりだしてくださいました。刷る工程を2回ほど体験したMJいわく「スキージの角度や動かし方が本当に難しい。石田さんの技術を痛感しました」とのこと。


1作品を刷るごとに、石油系の溶剤で作業台のインクを拭い、拭ったあとの新聞紙を1枚1枚畳んでいく石田さんの姿からは、その丁寧な仕事ぶりがよく伝わってきます。「作品を刷っている時間より拭いている時間のほうが長い」というご本人の言葉には、説得力が滲んでいました。

続くIの作品では、贅沢にも倉俣史朗《カイエ》で使用したインクをお裾分けいただきました。何回刷るかによって、クレヨンの質感や全体のニュアンスが変化していく様子が面白かったです。薄い色を10回くらい重ねて刷ると漆のような上品なつやが出る場合もあるのだとか。

刷りを体験させてもらう様子
それぞれのオーダーに対して、まるで作家さんに向き合うように丁寧に作品を刷ってくださった石田さん。最後に工房のスタンプまで押してくださいました。

そうして出来上がった3人の作品がこちら。

スタッフM

スタッフMJ

スタッフI
昼過ぎから始まった工房見学ですが、作品が完成するころには外が真っ暗になっていました。1日をかけて、教科書では学ぶことのできない知識をわけてくださった石田了一さん、大谷京子さんには頭があがりません。
1988年から愛用されているという石田さんの車に揺られて駅まで送っていただく時間、胸には幸福な余韻が満ちていました。
●新連載「刷り師・石田了一の仕事」は毎月3日の更新です。次回は2024年8月3日を予定しています。どうぞお楽しみに。
●本日のお勧め作品は菅井汲です。
《HOLIDAY 3》
1978年
シルクスクリーン(刷り:石田了一)
イメージサイズ:22.0×16.0cm
シートサイズ:29.2×25.1cm
Ed.250
サインあり
※レゾネNo284(阿部出版)
作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
「刷り師・石田了一の仕事」第1回「工房訪問記その1」に続き、今回もスタッフ3人で石田工房を訪れた日の様子をレポートいたします。
倉俣史朗「Cahier(カイエ)」を例としてシルクスクリーン制作の様子を目の当たりにし、プロの仕事に感銘を受けていたのもつかのま、石田さんが「自分たちで(シルクスクリーンを)つくってみる?」と思いがけない一言をかけてくださいました。

石田了一さん
草間彌生、磯崎新、アンディ・ウォーホルら、レジェンドたちの作品を手掛けられてきた石田さんに、まさかオリジナル作品を刷っていただけることになるなんて……夢のようなお誘いに驚きながらも、迷わず体験をさせていただくことに。
まずは、刷りたい絵柄を製版フィルム上に表現していきます。スタッフMJは絵筆で、スタッフIはクレヨンで絵を描き、スタッフMはカッターで赤いフィルムを剥がして模様を表現しました。ちなみに磯崎新《TSUKUBA》も、同様のカッティングフィルムで制作されているそうです。


絵柄が完成したら、乳剤を塗ったメッシュ(網の目)の上にフィルムを固定し、「焼付用光源装置」で紫外線ランプを照射。3分ほど露光すると紫外線の当たった箇所の乳剤が固まります。そのあと勢いよく水で洗い流すと、光が当たらなかった箇所=製版フィルムに絵を描いた箇所からは乳剤が落ちてメッシュ(網の目)が露出。いわゆる「版」が完成します。






体より大きい機械をなんなく使いこなし、流れるような手つきで版を洗う石田さんの姿にスタッフたちの目は釘付け。
版が乾いたら、いよいよ台にセットし、インクをのせて「刷り」の工程に移ります。刷り台には小さな穴があいており、下から空気を吸うことで紙がぴったりと圧着する仕組みになっているそう。作品を刷る前に一度メッシュにインクを通しておくと、刷るときにちょうどいい抵抗が生まれるそうです。

今回使わせてもらったのは、1インチの中に250網のあるメッシュ(テトロンスクリーン)
まず初めに刷ってもらったのは、スタッフMの作品。黄色と青の2色をつかい、その境界をグラデーションにしたいとオーダーしました。


境界線の位置を微妙に調整しながらインクをまぜていく工程は、素人には簡単に真似できるものではありません。「ぼかしの石田」たる所以を垣間見た瞬間でした。


刷った作品は内容にもよるものの、だいたい1時間くらいで乾くそう
続くMJの作品でも、この「ぼかし」をオーダー。水色と黄色の配色はMの作品とも似ていますが、石田さんは1回ごとに目当ての色をつくりだしてくださいました。刷る工程を2回ほど体験したMJいわく「スキージの角度や動かし方が本当に難しい。石田さんの技術を痛感しました」とのこと。


1作品を刷るごとに、石油系の溶剤で作業台のインクを拭い、拭ったあとの新聞紙を1枚1枚畳んでいく石田さんの姿からは、その丁寧な仕事ぶりがよく伝わってきます。「作品を刷っている時間より拭いている時間のほうが長い」というご本人の言葉には、説得力が滲んでいました。

続くIの作品では、贅沢にも倉俣史朗《カイエ》で使用したインクをお裾分けいただきました。何回刷るかによって、クレヨンの質感や全体のニュアンスが変化していく様子が面白かったです。薄い色を10回くらい重ねて刷ると漆のような上品なつやが出る場合もあるのだとか。

刷りを体験させてもらう様子
それぞれのオーダーに対して、まるで作家さんに向き合うように丁寧に作品を刷ってくださった石田さん。最後に工房のスタンプまで押してくださいました。

そうして出来上がった3人の作品がこちら。

スタッフM

スタッフMJ

スタッフI
昼過ぎから始まった工房見学ですが、作品が完成するころには外が真っ暗になっていました。1日をかけて、教科書では学ぶことのできない知識をわけてくださった石田了一さん、大谷京子さんには頭があがりません。
1988年から愛用されているという石田さんの車に揺られて駅まで送っていただく時間、胸には幸福な余韻が満ちていました。
●新連載「刷り師・石田了一の仕事」は毎月3日の更新です。次回は2024年8月3日を予定しています。どうぞお楽しみに。
●本日のお勧め作品は菅井汲です。
《HOLIDAY 3》1978年
シルクスクリーン(刷り:石田了一)
イメージサイズ:22.0×16.0cm
シートサイズ:29.2×25.1cm
Ed.250
サインあり
※レゾネNo284(阿部出版)
作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
コメント