佐藤研吾のエッセイ「大地について―インドから建築を考える―」第97回
インドのムンバイに滞在中。

建築家のKatsushi Gotoさん、クリエイティブディレクターのCharlie Levineさん、そしてアーティストのVishwa Shroffさんが主宰するSquare Works Laboratory (SqW:Lab)というワークショップに参加させてもらっている。インド国内外からアーティストが数人参加して共同制作に取り組む。コロナの期間を除いて、2年に一度開催しているそうで、[domesticating]というテーマと[drawing]という制作のあり方を共通のものとしているとのこと。domesticatingについては、なかなか全体的なその概念を掴みきれてはいないのだけれども、(自分の英語能力の無さをここで改めて痛感している)、すくなくともそれぞれの暮らしに関わるものでであり、それはつまり自らの領域の内外をなんとなく輪郭付けるものでもあるがゆえに、何らかの政治性を帯びざるを得ないようだ。
実は今回のムンバイ滞在の最中も、ちょうど、福島県の郡山でRED MEDICINEさんというインド料理屋の新店舗の内装工事の現場が進んでいる。日本帰国後にはその店舗内装をどうするかの特に仕上げの詳細を決めていくことになる。このムンバイ滞在は、偶然にもそのリサーチを兼ねることになった。RED MEDICINEの水野さんに聞けば、日本では何人か、全国各所にそうしたインド現地の味を再現、あるいは大きなリスペクトを持って店を営んでいる方々がいるらしい。(以前、東京・三軒茶屋のSUNVALLEY HOTELさんというお店に一緒に伺わせてもらった。)

ムンバイの老舗、LEOPOLD CAFEのMutton Kheema Pav

LEOPOLD CAFEの店内。

KYANI & CO.というイラーニカフェのMasala Omelette

KYANI & CO.の店内。鉄骨の柱が木の梁を支え、その上に石の天井スラブが乗っている。
そんな方々が探求している味が、インドのどのあたりのお店を思い浮かべているのかはとても気になる。もしかするとそれは、インドの最先端に流行っているような店の味ではなく、むしろかなり昔から変わらずそれぞれのスタイルを続けている人たちについてなのかもしれない、とも思った。(SUNVALLEY HOTELさんの店内の雰囲気を思い出しながら)
リスペクト、あるいはオマージュという行為も、おそらくは先程のdomesticatingという自分自身の輪郭再定義のあり方と関わるのかもしれない。一見するととても奇妙に見える外部の取り込みが、だんだんと咀嚼しながら、domesticateされていき、それはそういうものなのだという新たな前提となっていくのかもしれない。

クリケットをやる人々で溢れかえっていたShivaji Park
(さとう けんご)
■佐藤研吾(さとう けんご)
1989年神奈川県横浜生まれ。2011年東京大学工学部建築学科卒業。2013年早稲田大学大学院建築学専攻修士課程(石山修武研究室)修了。同専攻嘱託研究員を経て、2014年よりスタジオGAYA。2015年よりインドのVadodara Design AcademyのAssistant Professor、および東京大学工学系研究科建築学専攻博士課程在籍。福島・大玉村で藍染の活動をする「歓藍社」所属。インドでデザインワークショップ「In-Field Studio」を主宰。「一般社団法人コロガロウ」設立。2018年12月初個展「佐藤研吾展―囲いこみとお節介」をときの忘れもので開催。2022年3月第2回個展「佐藤研吾展 群空洞と囲い」を、2024年11月第3回個展「佐藤研吾展 くぐり間くぐり」をときの忘れもので開催した。
・佐藤研吾のエッセイ「大地について―インドから建築を考える―」は毎月7日の更新です。
●本日のお勧め作品は佐藤研吾です。
《窓はないわけではない 30》
2024年
ゼラチンシルバープリント
18.0×18.0cm
サインあり
作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
●ときの忘れものの建築空間についてはWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。
〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 E-mail:info@tokinowasuremono.com
http://www.tokinowasuremono.com/
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。日・月・祝日は原則として休廊ですが、企画によっては開廊、営業しています。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
インドのムンバイに滞在中。

建築家のKatsushi Gotoさん、クリエイティブディレクターのCharlie Levineさん、そしてアーティストのVishwa Shroffさんが主宰するSquare Works Laboratory (SqW:Lab)というワークショップに参加させてもらっている。インド国内外からアーティストが数人参加して共同制作に取り組む。コロナの期間を除いて、2年に一度開催しているそうで、[domesticating]というテーマと[drawing]という制作のあり方を共通のものとしているとのこと。domesticatingについては、なかなか全体的なその概念を掴みきれてはいないのだけれども、(自分の英語能力の無さをここで改めて痛感している)、すくなくともそれぞれの暮らしに関わるものでであり、それはつまり自らの領域の内外をなんとなく輪郭付けるものでもあるがゆえに、何らかの政治性を帯びざるを得ないようだ。
実は今回のムンバイ滞在の最中も、ちょうど、福島県の郡山でRED MEDICINEさんというインド料理屋の新店舗の内装工事の現場が進んでいる。日本帰国後にはその店舗内装をどうするかの特に仕上げの詳細を決めていくことになる。このムンバイ滞在は、偶然にもそのリサーチを兼ねることになった。RED MEDICINEの水野さんに聞けば、日本では何人か、全国各所にそうしたインド現地の味を再現、あるいは大きなリスペクトを持って店を営んでいる方々がいるらしい。(以前、東京・三軒茶屋のSUNVALLEY HOTELさんというお店に一緒に伺わせてもらった。)

ムンバイの老舗、LEOPOLD CAFEのMutton Kheema Pav

LEOPOLD CAFEの店内。

KYANI & CO.というイラーニカフェのMasala Omelette

KYANI & CO.の店内。鉄骨の柱が木の梁を支え、その上に石の天井スラブが乗っている。
そんな方々が探求している味が、インドのどのあたりのお店を思い浮かべているのかはとても気になる。もしかするとそれは、インドの最先端に流行っているような店の味ではなく、むしろかなり昔から変わらずそれぞれのスタイルを続けている人たちについてなのかもしれない、とも思った。(SUNVALLEY HOTELさんの店内の雰囲気を思い出しながら)
リスペクト、あるいはオマージュという行為も、おそらくは先程のdomesticatingという自分自身の輪郭再定義のあり方と関わるのかもしれない。一見するととても奇妙に見える外部の取り込みが、だんだんと咀嚼しながら、domesticateされていき、それはそういうものなのだという新たな前提となっていくのかもしれない。

クリケットをやる人々で溢れかえっていたShivaji Park
(さとう けんご)
■佐藤研吾(さとう けんご)
1989年神奈川県横浜生まれ。2011年東京大学工学部建築学科卒業。2013年早稲田大学大学院建築学専攻修士課程(石山修武研究室)修了。同専攻嘱託研究員を経て、2014年よりスタジオGAYA。2015年よりインドのVadodara Design AcademyのAssistant Professor、および東京大学工学系研究科建築学専攻博士課程在籍。福島・大玉村で藍染の活動をする「歓藍社」所属。インドでデザインワークショップ「In-Field Studio」を主宰。「一般社団法人コロガロウ」設立。2018年12月初個展「佐藤研吾展―囲いこみとお節介」をときの忘れもので開催。2022年3月第2回個展「佐藤研吾展 群空洞と囲い」を、2024年11月第3回個展「佐藤研吾展 くぐり間くぐり」をときの忘れもので開催した。
・佐藤研吾のエッセイ「大地について―インドから建築を考える―」は毎月7日の更新です。
●本日のお勧め作品は佐藤研吾です。
《窓はないわけではない 30》2024年
ゼラチンシルバープリント
18.0×18.0cm
サインあり
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※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
●ときの忘れものの建築空間についてはWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。
〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 E-mail:info@tokinowasuremono.com
http://www.tokinowasuremono.com/
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。日・月・祝日は原則として休廊ですが、企画によっては開廊、営業しています。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
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