画廊では「2025コレクション展4」を開催中です。

ときの忘れものが他の画廊と少し異なるのは取り扱いジャンルに「建築家のドローイング」を掲げていることでしょうか。

ウィキペディアによれば、建築家とは<建築の設計や監理、その他関連業務など建築関係のプロフェッショナルサービスを提供する職業、あるいはその専門家>だそうですが、私たちが創業以来、注目してきたのは技術者としての建築家というより、アーティストとしての建築家です。そのことを気づかせてくれたのは磯崎新先生でした。「俺は海外ではアートオリエンテッド・アーキテクトと呼ばれているんだ。」 芸術志向型建築家という言葉を教えてくれたのも磯崎先生でした。

私たちは1970年代から磯崎新先生をはじめ、安藤忠雄先生、六角鬼丈先生、石山修武先生、倉俣史朗先生たちの版画エディションを制作し、海外ではル・コルビュジエマイケル・グレイヴスを中心に紹介してきました。若い世代の建築家としては佐藤研吾さん、杉山幸一郎さんに大いに期待しています。
ちょつと余談ですが、名建築の条件、一も二もなく「施主が建築家と闘って生まれた建築」です。いくら有名建築家だからといってお任せします、ではいい建築は生まれません。つい先日もあるサイトで安藤建築をぼろくそに言う投稿を読んだのですが、安藤先生といえども施主あっての建築です。安藤先生に公共建築(主に国内)に傑作が少ないのは施主(多くは自治体)が安藤先生と闘っていないからです。その点、個人の施主は自分の財布でつくるんだから必死です。
海外の施主(個人、企業、自治体)は黙っていません。代表作・フォートワース現代美術館(2002年竣工)のときは設計段階で美術館の学芸員が安藤先生に徹底的に議論を仕掛け、へたな妥協はしなかったそうです。そんな覚悟は日本のお役人や学芸員にはないでしょうね(涙)。

話がまた横道にそれちゃいましたが、お名前を挙げた建築家たちの中で磯崎先生よりも早い時期に会っていたのは実は石山修武先生です。その経緯は後で記すとして、石山先生の最初のエディションを本日はご紹介します。

〈石山修武 画文集 世田谷村日記 ここになまみの建築家がいます〉

石山修武世田谷村日記

石山修武画文集
『世田谷村日記 ここになまみの建築家がいます』

2004年
ときの忘れもの 発行
執筆:石山修武
84ページ
26.5×20.0cm
限定100部
石山修武銅版画3点入り
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1)石山修武
〈石山修武 画文集 世田谷村日記 ここになまみの建築家がいます〉より《荒地》

2004年 銅版
10.0×15.0cm
Ed.100

2) 石山修武
〈石山修武 画文集 世田谷村日記 ここになまみの建築家がいます〉より《森の風景》

2004年 銅版
10.0×15.0cm
Ed.100

3) 石山修武
〈石山修武 画文集 世田谷村日記 ここになまみの建築家がいます〉より《森の風景》《都市の不安》

2004年 銅版
10.0×15.0cm
Ed.100

昨日のブログにも書いたのですが、昔、飯田橋に「憂陀」というバーがありました。当時亭主は毎日新聞に勤めていましたが(1969年入社)、パレスサイドビルの地下の倉庫番をしていた金森さんと、大阪の戦前の名市長と謳われた關 一(せきはじめ)のお孫さんの二人が始めた店でした。地獄の憂陀とオーナーの二人についてはこのブログの伊豆の長八美術館の項で書きましたが、亭主はじめ毎夜飲みに通う客は多けれど、つけで飲むばかり。亭主も溜めに溜め、遂に200万円を越したときはさすがに双方あきれかえって笑うほかありませんでした。かくして「憂陀」は黒字倒産寸前となりましたが、起死回生、カウンター10席の小さな店から数十人は入る大きな店に大移転します。その経緯を書くと長くなるので端折るとして、内装を担当したのが、詩人にして建築家だった立原道造の友人、武基雄先生の事務所でした。その関係もあり多くの建築家はじめ、作家の野間宏さん、デザイナーの粟津潔さん、杉浦康平さん、建築家の石山修武さん、人類学者の鶴見良行さんらが常連で、まだ勤務医時代の高橋龍太郎さんもおられました。

因みに立原道造の恋人「薔薇色の少女」、水戸部アサイさんは石本建築事務所の同僚でしたが、1938年(昭和13)4月の夕暮れ、武さんと三人で資生堂パーラーでシャーベットを食べたのが初デートでした。
後年、
石本事務所に入り桐生の大川美術館の設計を担当したのが松本竣介の遺児・莞さんです。

◆「2025コレクション展4/瑛九、ウォーホル、ホックニー他」
会期:2025年8月1日(金)~8月16日(土) 11:00~19:00 ※日曜・月曜・祝日休廊

出品作家:靉嘔、赤瀬川原平、安藤忠雄、畦地梅太郎、泉茂、石山修武、磯辺行久、伊藤公象、瑛九、オノサト・トシノブ、恩地孝四郎、加藤清之、北川太郎、草間彌生、倉俣史朗、島州一、嶋田しづ、田名網敬一、難波田龍起、野田哲也、長谷川潔、日和崎尊夫、舟越保武、舟越直木、堀尾貞治、槇文彦、宮脇愛子、元永定正、百瀬寿、山口薫、横尾忠則、若林奮、アンディ・ウォーホル、ジョン・ケージ、ジャン・フォートリエ、デイヴィッド・ホックニー、ソニア・ドローネー、フェルナン・レジェ、マリー・ローランサンほか。
出品全47点の画像とデータは8月2日ブログに掲載しました。