先日「リストラ」実施の予告をいたしました。
第一弾の「日・月・祝日休廊」に続き、リストラ第二弾のお知らせです。
DMはがき(案内状)を廃止します。
1995年6月の第一回展以来、前回の「恩地孝四郎展」まで273回の企画展を開催してきました。ほとんどの場合、案内状(DMはがき)を製作してきましたが、以後は季節のご挨拶等は別として、DMはがきはつくりません。
エフェメラの石原輝雄さんの言葉をまつまでもなく、<紙(実物)で遺す>ことの重要性は重々承知しておりますが、DMはがきにかかる諸費用やメール時代の趨勢を考えるとその維持は難しいと判断しました。もちろんアーカイブとして何らかの形(紙)で展示記録は作成します。
いままでメルマガとDMはがきの二本立てでしたが、今月から企画展のご案内はメルマガだけとなります。
恐れ入りますがメールアドレスをお持ちのお客様におかれましては、「メルマガ配信希望」のメールをときの忘れもの宛(info@tokinowasuremono.com)、お送りくださいますようお願いいたします。
既にアドレス登録をなさっている皆様には、引き続きメルマガをお送りします。
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ときの忘れもの News Letter Vol.1
◆「アートブックラウンジ Vol.01“版画挿入本の世界”」
会期:2016年3月9日[水]~3月17日[木] ※日・月・祝日は休廊

今回より日・月・祝日は休廊しますので、実質7日間の会期です。
短い会期ですが、ご来廊のうえ実物(版画挿入本)を手にとってご覧ください。
同時開催:文承根展
浜田宏司さんの企画・監修のもと、本をテーマにした新たな展覧会シリーズを開催します(年4回開催予定)。
~~
企画展のタイトル「アートブックラウンジ」ですが、私が韓国のアートフェアの特別展として実施された企画タイトルです。
ご存知の通り大規模なアートフェアは、世界各国から画商が集結し、出展ギャラリーが推薦する美術作品を展示販売する見本市です。ただ、韓国や台湾、そして先日訪問したシンガポールなど、アジアのアートフェアを実際に足を運んで視察した限り、開催国から出展している画廊の展示作品の多くは、ローカル色が強く自分が理解している現代美術の文脈からは乖離しているように感じることが多々ありました(※ここでの感慨は、私個人が抱いた印象であり、全く別の価値観があることを前提としています)。 現地のギャラリースタッフに「なぜこの作品を出品しているのか?」と、作品の見どころや作品コンセプトを尋ねても、「インパクトがあるから」、「可愛いモチーフの作品で、自国では人気(よく売れている)の作家だから」など、ほとんどの場合抽象的な回答が返ってくるだけで、作品のコンセプトやアートヒストリーにおけるポジショニングなどロジカルな回答が帰ってくることは大手の画廊を除いてごく稀です。
「なぜ、アジアの新興国における現代美術市場には、作品を語る上でロジカルな言葉が存在しないのか?」
そもそも、東アジア圏において美術作品なるものに国際的な視点から市場価値が生まれアートマーケットなるものが誕生したのがここ十数年間の出来事です(アカデミックな視点を除く)。もちろん、それ以前からも韓国の李禹煥やナムジュンパイク、中国のアイウエイウエイ、蔡國強など、今では国際的なアートマーケットで評価されている作家もいますが、その多くは自国ではなく海外で活動し評価されてきた作家たちです。
「アートブックラウンジ」は、そんなローカル色の強いカオスティックなマーケットを読み解くためのツールとして企画された展覧会です。百年近い現代美術の歴史のタイムラインを引き、重要な作家や展覧会、作品を紹介する本の表紙のパネルをカテゴリーごとに展示し、実際にその書籍を手にとってアートに対する理解を深めるための入り口となることを目標としました。そして、綿貫さんからの「“本”をテーマにした展覧会を企画しなさい」という特命のもと、今年3月からときの忘れものを会場にして、新たな企画として実施する運びとなりました。
今までのコアなアートファン以外に、まだアートをコレクションしたことのないコレクタービギナーやそれこそアートに関心のなかった領域にまで足を運んでいただくようなテーマ設定を心がけます。企画に関しては、従来通りのときの忘れものならではのカテゴリー(建築家の作品など)に加えて、今までにときの忘れものが扱っていないアート以外のジャンルをテーマにした選書と作品をご覧いただく予定です。単に美術作品を鑑賞するだけではなく、関連書籍を通じて作品に対する理解を深めることが可能な場を提供したいと考えています。
第一回目の企画は、「アートブックラウンジ Vol.01“版画挿入本の世界”」と題した展覧会を開催します。
アンディ・ウォーホル、ジャスパー・ジョーンズ、李禹煥、文承根、靉嘔、大沢昌助、ジョナス・メカス、磯崎新、サム・フランシス、フランチェスコ・クレメンテ、パウル・クレー、大竹伸朗、ほか合計20名以上の作家の版画作品が挿入された書籍をご展示販売いたします。
版画挿入本に関しては、ときの忘れものの前身でもある版元現代版画センターが日本においてはパイオニアでありこの画廊が誇るべきアイデンティティーでもあると考えています。展覧会を通じて画廊の歴史を俯瞰しつつ、初心者でも比較的手が届きやすい価格帯のエディション作品をコレクションする機会を提供します。どうぞ、ご期待ください。
浜田宏司(「アートブックラウンジ展キュレイター/Gallery CAUTIONディレクター)
■同時開催:「文承根展」
文承根の希少な版画作品10点をご覧いただきます。
文承根 MOON Seung-keun
出品番号1)《Untitle》
1981年
serigraph/unique
イメージサイズ:71.8×60.0cm
シートサイズ:98.9×69.3cm
signed
1947年石川県に生まれた文承根は、1960年代後半からほぼ独学で美術表現を開始し主に関西を中心に活動します。1968年弱冠21歳にして吉原治良に見出され具体展に出品し、翌1969年の第5回国際青年美術家展で受賞しました。それまでは「藤野登」として発表していたのですが、1971年からは「文承根(MOON SEUNG-KEUN ムン・スングン)」を名乗ります。
「具体」解散後は独自の表現を求め、京阪神地域を中心に個展を開催し、国内外のグループ展にも積極的に参加し、1970年前後に東京を中心に勃興した「もの派」と、80年代の「関西ニューウェーブ」 との狭間の時代において、油彩・水彩・版画から立体や写真・映像作品まで 幅広いジャンルでの制作を展開しました。
自身の病を見つめた上で、あらゆる技法や素材を試しながら作品を作り続けますが、1982年胆嚢癌により34歳の生涯を閉じました。
文承根 MOON Seung-keun
出品番号2)《Untitle》
1977年
offset on paper
イメージサイズ:49.1×72.4cm
シートサイズ:63.0×91.7cm
Ed.20 signed
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
没後15年の2007年、京都国立近代美術館と千葉市美術館で開催された「文承根+八木正 1973-83の仕事」は、1980年代初頭にその才能を惜しまれながら夭折した二人の軌跡をたどる画期的な展覧会でした。
文承根が1970年代半ばから集中して制作された色を何層もぬり重ねた水彩や、街の一瞬の光景を撮影した写真を素材とした版画作品、油彩、立体、写真など幅広い分野において遺した作品は、深い批評性と高い完成度を示しており、いまさらながらその若い死が惜しまれたのでした。
短い会期の展示ですが、ぜひご高覧ください。
~~~~
●ときの忘れもの・拾遺 ギャラリーコンサートのご案内
3月19日を第一回としてプロデューサーに建築家の大野幸さんを迎えて、年4回ほどギャラリーコンサートを開催します。
ギャラリーという空間はそこに美術作品がなければただの箱に過ぎません。壁面に絵が飾られ色彩と光が訪れるお客様の心に届き、さらに美しい音色が響いたらどんなにか豊かな気持ちになれるでしょう。
そういう思いをずっと暖めてきました。
演奏者にはやるなら思いっきり冒険して欲しい。それを実現してくれそうなプロデューサーと演奏家にようやく巡り会えた。もっとも大野さんとは30年近いつきあいでいつかはと思っておりました。
演奏時間は約1時間、毎回テーマを設け(第一回はバッハと現代音楽)開催します。定員は皆さんがゆったり椅子で楽しめる13人を予定しています(立ち見なし、予約は先着順)。どうぞお早めにお申込みください。
第1回「独奏チェロによるJ.S.バッハと現代の音楽 ~ガット(羊腸)弦の音色で~」
日時:2016年3月19日(土)18:00~19:00
会場:ときの忘れもの
出演:富田牧子(チェロ)、木田いずみ(歌)
プロデュース:大野幸
曲目予定:J.S.バッハ(1685-1750 )/無伴奏チェロ組曲第1番
クルターク・ジェルジュ (1926- )/「ジョン・ケージへのオマージュ~ためらいがちな言葉」
ジョン・ケージ (1912-1992)/4’33”
尾高惇忠 (1944- )/「瞑想」
・・・など
(曲目は変更する場合がございます。ご了承ください。)
料金:1,000円 *要予約
必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記の上、メールにてお申し込みください。
E-mail. info@tokinowasuremono.com
~~
ときの忘れもの・拾遺
-ギャラリーコンサートに寄せて-
大野幸
綿貫令子、不二夫御夫妻の「ときの忘れもの」は、ちいさな画廊です。少人数で-幸運なときは一人きりで-比較的サイズの小さい作品と親密に対面できる青山の隠れ家です。
行列にまみれて前の人の後頭部ばかりが見える大美術館で開かれる企画展とは対照的、大きな器からこぼれた佳作を拾い集めるような、きめ細かい展示が魅力の一つです。
その綿貫御夫妻が、ちいさな画廊でコンサートをしたいと言い出し、旧知の仲とはいえ、あろうことか私にその企画をせよとの仰せがありました。そこで、畑違いではありますが、日頃感じている次のようなことを手掛かりに、何が出来るか考えてみました。
音楽をとりまく環境は大きな変化にさらされています。電子音の氾濫、ネット経由の音源のみで音楽を聴く習慣、曲の編成に相応しくない巨大なホールでの演奏会、そして日常の雑音・騒音の洪水。今の私達は、音を聴く力、音楽が語るメッセージを受け取る力をどこかに置き忘れたまま、音に無感覚になってきているのではないでしょうか。
「ときの忘れもの」でコンサートをするならば、こぼれた佳作を拾い上げるように、忘れかけていた音楽に関わる力を、もう一度取り戻させてくれるかもしれないという期待を込めた企画にしたいと思いました。少人数、至近距離、は画廊のサイズが与えてくれる好条件!ですが、さらに、知られていない楽曲や作曲家を紹介すること、あまり馴染の無い古いスタイルの楽器を使うこと、画廊所蔵作品とのコラボなど、できることはたくさんありそうです。
コンサートは、不定期・年4回ぐらいのペースで継続することを目指しています。幕開けの一年間は、チェリストの富田牧子さんに登場して頂くことになりました。普段音楽や美術に慣れ親しんでいる方々も、その機会が少ない方々も、音楽と美術の側面に当てられた光に浮かぶ新しい輪郭を共に見つけ、共に楽しんでくださいますことを願っています。
(2016年1月 おおの こう)

■富田牧子(チェロ奏者) Makiko TOMITA, Cellist
東京芸術大学在学中にリサイタルを行い、室内楽奏者として活動を始める。ソロだけでなく室内楽(特に弦楽四重奏)でヨーロッパ各地の音楽祭や講習会に参加。大学院修士課程修了後、ハンガリー・ブダペストに2年間留学、バルトーク弦楽四重奏団チェロ奏者ラースロー・メズー氏に師事。NHK-FM「名曲リサイタル」、ORF(オーストリア放送)の公開録音に出演。2003年以降、ソロリサイタルのほか、弦楽四重奏団メンバーとしての活動を経て、様々な楽器との組み合わせによる「充実した内容の音楽を間近で味わうコンサート」の企画・制作・演奏を続けている。バロックと現代両方の楽器にガット(羊腸)弦を用い、時代に合った奏法を学び直し、より深い音楽と楽器の理解を探求中。自然体の音楽と室内楽の楽しさを広める活動をライフワークとし、国内外で共感の輪が広がりつつある。

■大野 幸(建築家) Ko OONO, Architect
本籍広島。1987年早稲田大学理工学部建築学科卒業。1989年同修士課程修了、同年「磯崎新アトリエ」に参加。「Arata Isozaki 1960/1990 Architecture(世界巡回展)」「エジプト文明史博物館展示計画」「有時庵」「奈義町現代美術館」「シェイク・サウド邸」などを担当。2001年「大野幸空間研究所」設立後、「テサロニキ・メガロン・コンサートホール」を磯崎新と協働。2012年「設計対話」設立メンバーとなり、中国を起点としアジア全域に業務を拡大。現在「イソザキ・アオキ アンド アソシエイツ」に参加し「エジプト日本科学技術大学(アレキサンドリア)」が進行中。ピリオド楽器でバッハのカンタータ演奏などに参加しているヴァイオリニスト。
●お知らせ
ときの忘れものは2016年3月より日曜、月曜、祝日は休廊します。
従来企画展開催中は無休で営業していましたが、今後は企画展を開催中でも、日曜、月曜、祝日は休廊します。
第一弾の「日・月・祝日休廊」に続き、リストラ第二弾のお知らせです。
DMはがき(案内状)を廃止します。
1995年6月の第一回展以来、前回の「恩地孝四郎展」まで273回の企画展を開催してきました。ほとんどの場合、案内状(DMはがき)を製作してきましたが、以後は季節のご挨拶等は別として、DMはがきはつくりません。
エフェメラの石原輝雄さんの言葉をまつまでもなく、<紙(実物)で遺す>ことの重要性は重々承知しておりますが、DMはがきにかかる諸費用やメール時代の趨勢を考えるとその維持は難しいと判断しました。もちろんアーカイブとして何らかの形(紙)で展示記録は作成します。
いままでメルマガとDMはがきの二本立てでしたが、今月から企画展のご案内はメルマガだけとなります。
恐れ入りますがメールアドレスをお持ちのお客様におかれましては、「メルマガ配信希望」のメールをときの忘れもの宛(info@tokinowasuremono.com)、お送りくださいますようお願いいたします。
既にアドレス登録をなさっている皆様には、引き続きメルマガをお送りします。
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ときの忘れもの News Letter Vol.1
◆「アートブックラウンジ Vol.01“版画挿入本の世界”」
会期:2016年3月9日[水]~3月17日[木] ※日・月・祝日は休廊

今回より日・月・祝日は休廊しますので、実質7日間の会期です。
短い会期ですが、ご来廊のうえ実物(版画挿入本)を手にとってご覧ください。
同時開催:文承根展
浜田宏司さんの企画・監修のもと、本をテーマにした新たな展覧会シリーズを開催します(年4回開催予定)。
~~
企画展のタイトル「アートブックラウンジ」ですが、私が韓国のアートフェアの特別展として実施された企画タイトルです。
ご存知の通り大規模なアートフェアは、世界各国から画商が集結し、出展ギャラリーが推薦する美術作品を展示販売する見本市です。ただ、韓国や台湾、そして先日訪問したシンガポールなど、アジアのアートフェアを実際に足を運んで視察した限り、開催国から出展している画廊の展示作品の多くは、ローカル色が強く自分が理解している現代美術の文脈からは乖離しているように感じることが多々ありました(※ここでの感慨は、私個人が抱いた印象であり、全く別の価値観があることを前提としています)。 現地のギャラリースタッフに「なぜこの作品を出品しているのか?」と、作品の見どころや作品コンセプトを尋ねても、「インパクトがあるから」、「可愛いモチーフの作品で、自国では人気(よく売れている)の作家だから」など、ほとんどの場合抽象的な回答が返ってくるだけで、作品のコンセプトやアートヒストリーにおけるポジショニングなどロジカルな回答が帰ってくることは大手の画廊を除いてごく稀です。
「なぜ、アジアの新興国における現代美術市場には、作品を語る上でロジカルな言葉が存在しないのか?」
そもそも、東アジア圏において美術作品なるものに国際的な視点から市場価値が生まれアートマーケットなるものが誕生したのがここ十数年間の出来事です(アカデミックな視点を除く)。もちろん、それ以前からも韓国の李禹煥やナムジュンパイク、中国のアイウエイウエイ、蔡國強など、今では国際的なアートマーケットで評価されている作家もいますが、その多くは自国ではなく海外で活動し評価されてきた作家たちです。
「アートブックラウンジ」は、そんなローカル色の強いカオスティックなマーケットを読み解くためのツールとして企画された展覧会です。百年近い現代美術の歴史のタイムラインを引き、重要な作家や展覧会、作品を紹介する本の表紙のパネルをカテゴリーごとに展示し、実際にその書籍を手にとってアートに対する理解を深めるための入り口となることを目標としました。そして、綿貫さんからの「“本”をテーマにした展覧会を企画しなさい」という特命のもと、今年3月からときの忘れものを会場にして、新たな企画として実施する運びとなりました。
今までのコアなアートファン以外に、まだアートをコレクションしたことのないコレクタービギナーやそれこそアートに関心のなかった領域にまで足を運んでいただくようなテーマ設定を心がけます。企画に関しては、従来通りのときの忘れものならではのカテゴリー(建築家の作品など)に加えて、今までにときの忘れものが扱っていないアート以外のジャンルをテーマにした選書と作品をご覧いただく予定です。単に美術作品を鑑賞するだけではなく、関連書籍を通じて作品に対する理解を深めることが可能な場を提供したいと考えています。
第一回目の企画は、「アートブックラウンジ Vol.01“版画挿入本の世界”」と題した展覧会を開催します。
アンディ・ウォーホル、ジャスパー・ジョーンズ、李禹煥、文承根、靉嘔、大沢昌助、ジョナス・メカス、磯崎新、サム・フランシス、フランチェスコ・クレメンテ、パウル・クレー、大竹伸朗、ほか合計20名以上の作家の版画作品が挿入された書籍をご展示販売いたします。
版画挿入本に関しては、ときの忘れものの前身でもある版元現代版画センターが日本においてはパイオニアでありこの画廊が誇るべきアイデンティティーでもあると考えています。展覧会を通じて画廊の歴史を俯瞰しつつ、初心者でも比較的手が届きやすい価格帯のエディション作品をコレクションする機会を提供します。どうぞ、ご期待ください。
浜田宏司(「アートブックラウンジ展キュレイター/Gallery CAUTIONディレクター)
■同時開催:「文承根展」
文承根の希少な版画作品10点をご覧いただきます。
文承根 MOON Seung-keun出品番号1)《Untitle》
1981年
serigraph/unique
イメージサイズ:71.8×60.0cm
シートサイズ:98.9×69.3cm
signed
1947年石川県に生まれた文承根は、1960年代後半からほぼ独学で美術表現を開始し主に関西を中心に活動します。1968年弱冠21歳にして吉原治良に見出され具体展に出品し、翌1969年の第5回国際青年美術家展で受賞しました。それまでは「藤野登」として発表していたのですが、1971年からは「文承根(MOON SEUNG-KEUN ムン・スングン)」を名乗ります。
「具体」解散後は独自の表現を求め、京阪神地域を中心に個展を開催し、国内外のグループ展にも積極的に参加し、1970年前後に東京を中心に勃興した「もの派」と、80年代の「関西ニューウェーブ」 との狭間の時代において、油彩・水彩・版画から立体や写真・映像作品まで 幅広いジャンルでの制作を展開しました。
自身の病を見つめた上で、あらゆる技法や素材を試しながら作品を作り続けますが、1982年胆嚢癌により34歳の生涯を閉じました。
文承根 MOON Seung-keun出品番号2)《Untitle》
1977年
offset on paper
イメージサイズ:49.1×72.4cm
シートサイズ:63.0×91.7cm
Ed.20 signed
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
没後15年の2007年、京都国立近代美術館と千葉市美術館で開催された「文承根+八木正 1973-83の仕事」は、1980年代初頭にその才能を惜しまれながら夭折した二人の軌跡をたどる画期的な展覧会でした。
文承根が1970年代半ばから集中して制作された色を何層もぬり重ねた水彩や、街の一瞬の光景を撮影した写真を素材とした版画作品、油彩、立体、写真など幅広い分野において遺した作品は、深い批評性と高い完成度を示しており、いまさらながらその若い死が惜しまれたのでした。
短い会期の展示ですが、ぜひご高覧ください。
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●ときの忘れもの・拾遺 ギャラリーコンサートのご案内
3月19日を第一回としてプロデューサーに建築家の大野幸さんを迎えて、年4回ほどギャラリーコンサートを開催します。
ギャラリーという空間はそこに美術作品がなければただの箱に過ぎません。壁面に絵が飾られ色彩と光が訪れるお客様の心に届き、さらに美しい音色が響いたらどんなにか豊かな気持ちになれるでしょう。
そういう思いをずっと暖めてきました。
演奏者にはやるなら思いっきり冒険して欲しい。それを実現してくれそうなプロデューサーと演奏家にようやく巡り会えた。もっとも大野さんとは30年近いつきあいでいつかはと思っておりました。
演奏時間は約1時間、毎回テーマを設け(第一回はバッハと現代音楽)開催します。定員は皆さんがゆったり椅子で楽しめる13人を予定しています(立ち見なし、予約は先着順)。どうぞお早めにお申込みください。
第1回「独奏チェロによるJ.S.バッハと現代の音楽 ~ガット(羊腸)弦の音色で~」
日時:2016年3月19日(土)18:00~19:00
会場:ときの忘れもの
出演:富田牧子(チェロ)、木田いずみ(歌)
プロデュース:大野幸
曲目予定:J.S.バッハ(1685-1750 )/無伴奏チェロ組曲第1番
クルターク・ジェルジュ (1926- )/「ジョン・ケージへのオマージュ~ためらいがちな言葉」
ジョン・ケージ (1912-1992)/4’33”
尾高惇忠 (1944- )/「瞑想」
・・・など
(曲目は変更する場合がございます。ご了承ください。)
料金:1,000円 *要予約
必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記の上、メールにてお申し込みください。
E-mail. info@tokinowasuremono.com
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ときの忘れもの・拾遺
-ギャラリーコンサートに寄せて-
大野幸
綿貫令子、不二夫御夫妻の「ときの忘れもの」は、ちいさな画廊です。少人数で-幸運なときは一人きりで-比較的サイズの小さい作品と親密に対面できる青山の隠れ家です。
行列にまみれて前の人の後頭部ばかりが見える大美術館で開かれる企画展とは対照的、大きな器からこぼれた佳作を拾い集めるような、きめ細かい展示が魅力の一つです。
その綿貫御夫妻が、ちいさな画廊でコンサートをしたいと言い出し、旧知の仲とはいえ、あろうことか私にその企画をせよとの仰せがありました。そこで、畑違いではありますが、日頃感じている次のようなことを手掛かりに、何が出来るか考えてみました。
音楽をとりまく環境は大きな変化にさらされています。電子音の氾濫、ネット経由の音源のみで音楽を聴く習慣、曲の編成に相応しくない巨大なホールでの演奏会、そして日常の雑音・騒音の洪水。今の私達は、音を聴く力、音楽が語るメッセージを受け取る力をどこかに置き忘れたまま、音に無感覚になってきているのではないでしょうか。
「ときの忘れもの」でコンサートをするならば、こぼれた佳作を拾い上げるように、忘れかけていた音楽に関わる力を、もう一度取り戻させてくれるかもしれないという期待を込めた企画にしたいと思いました。少人数、至近距離、は画廊のサイズが与えてくれる好条件!ですが、さらに、知られていない楽曲や作曲家を紹介すること、あまり馴染の無い古いスタイルの楽器を使うこと、画廊所蔵作品とのコラボなど、できることはたくさんありそうです。
コンサートは、不定期・年4回ぐらいのペースで継続することを目指しています。幕開けの一年間は、チェリストの富田牧子さんに登場して頂くことになりました。普段音楽や美術に慣れ親しんでいる方々も、その機会が少ない方々も、音楽と美術の側面に当てられた光に浮かぶ新しい輪郭を共に見つけ、共に楽しんでくださいますことを願っています。
(2016年1月 おおの こう)

■富田牧子(チェロ奏者) Makiko TOMITA, Cellist
東京芸術大学在学中にリサイタルを行い、室内楽奏者として活動を始める。ソロだけでなく室内楽(特に弦楽四重奏)でヨーロッパ各地の音楽祭や講習会に参加。大学院修士課程修了後、ハンガリー・ブダペストに2年間留学、バルトーク弦楽四重奏団チェロ奏者ラースロー・メズー氏に師事。NHK-FM「名曲リサイタル」、ORF(オーストリア放送)の公開録音に出演。2003年以降、ソロリサイタルのほか、弦楽四重奏団メンバーとしての活動を経て、様々な楽器との組み合わせによる「充実した内容の音楽を間近で味わうコンサート」の企画・制作・演奏を続けている。バロックと現代両方の楽器にガット(羊腸)弦を用い、時代に合った奏法を学び直し、より深い音楽と楽器の理解を探求中。自然体の音楽と室内楽の楽しさを広める活動をライフワークとし、国内外で共感の輪が広がりつつある。

■大野 幸(建築家) Ko OONO, Architect
本籍広島。1987年早稲田大学理工学部建築学科卒業。1989年同修士課程修了、同年「磯崎新アトリエ」に参加。「Arata Isozaki 1960/1990 Architecture(世界巡回展)」「エジプト文明史博物館展示計画」「有時庵」「奈義町現代美術館」「シェイク・サウド邸」などを担当。2001年「大野幸空間研究所」設立後、「テサロニキ・メガロン・コンサートホール」を磯崎新と協働。2012年「設計対話」設立メンバーとなり、中国を起点としアジア全域に業務を拡大。現在「イソザキ・アオキ アンド アソシエイツ」に参加し「エジプト日本科学技術大学(アレキサンドリア)」が進行中。ピリオド楽器でバッハのカンタータ演奏などに参加しているヴァイオリニスト。
●お知らせ
ときの忘れものは2016年3月より日曜、月曜、祝日は休廊します。
従来企画展開催中は無休で営業していましたが、今後は企画展を開催中でも、日曜、月曜、祝日は休廊します。
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