芳賀言太郎のエッセイ
「El Camino(エル・カミーノ) 僕が歩いた1600km」 第20回
Japanese on 1600km pilgrimage to Santiago Vol.20
第20話 カテドラル ~レオンにて~
10/20(Sat) Sahagun – Mansilla de las Mulas (37.4km)
10/21(Sun) Mansilla de las Mulas – Leon (18.7km)
ヨーロッパのサイクルロードレースの開幕を告げる「パリ~ニース」が始まった。今年で74回を数えるこのレースは、毎年3月、パリ近郊から地中海のリゾート都市ニースを目指すレースである。「太陽を求めるレース」と言われるだけあって、1日目はまだ冬枯れの森を抜けていたのが日毎に辺りの気配が春めいてきて、一週間後のゴールでは緑鮮やかな地中海へと達する。季節の移り変わりと共に興味深いのは沿道に映し出される建築の数々で、数多の教会をはじめに古城から現代建築まで、空撮映像がそのままフランス観光案内にもなっている。印象深いのは、教会が地域毎、町毎に異なった表情を持っていることで、これはロマネスク、これはゴシック、こんどはルネサンスと、時にレースの展開そっちのけで空撮映像にかじりつくことになる。フランスであるから基本的にはロマネスクとゴシックなのだが、それがはっきりと色分けされているのが面白い。村や町はロマネスク、都市はゴシック、そして高い塔を持ち絢爛豪華な彫刻を施されたゴシックらしいゴシック教会はやはり大都市にしかない。そして発祥からしても当然なのかも知れないが、初日から前半、つまりパリ近郊からフランス北部はゴシックが多く、南に下るほどにロマネスクが増えて、ゴール近くの地中海沿岸となるとゴシックの教会はほとんど見られなくなる。1140年に始まるサン・ドニ修道院付属聖堂内陣改修に発し、イル・ド・フランスを中心に北フランス、ドイツ、イングランドへと伝播したゴシック建築は、陽光の乏しい高緯度地方の「光を求める」思いの結晶なのだろうか。
自動車道路脇の一本道をひたすら歩く。途中には村が無く、前にも後ろにも誰も人がいない状況は不安になるものだ。しかし、こういうひたすら長い距離を歩くこと以外は何も考えないで歩く日も必要である。
一本道
途中でトレッキングポールが壊れてしまった。これは軽さを最優先にして購入したカーボン製のもので(「私の愛用品」の第14回参照)、二本で300グラムという驚異的な軽さと、使わない時にはコンパクトに折りたたんでバッグにしまうことが出来るという優れたものではあったのだが、3ヶ月にも及ぶ巡礼への耐久性は持ち合わせてはいなかった。そもそも日帰りから数日行が前提なのだから無理な注文である。フランスでの一ヶ月半におよぶ巡礼行とピレネー越えで力を使い果たしたのか、スペインに入って1週間ぐらいでガタが出てきてしまった。グリップをテープで巻いたり、ジョイント部分に小石を詰めたりと応急処置をはかったものの、応急処置では済まなくなってしまった。
コンビニなどという便利なものはないので(あったら逆に興醒めである)宿泊した村で雑貨屋を探し、接着剤を買って修復を試みる。直ったとは言い難いが、だいぶ長い距離を歩き、酷使してきたから仕方がない。愛着もあるため、なんとか修理しながら使っていく。
レオン手前の陸橋
レオン。美しい街である。
レオンはカスティーリャ王国の首都として栄えた都市である。そしてこの町のシンボルは何と言ってもカテドラルである。
カテドラルとは、しばしば「大聖堂」と訳されるが、本来は「司教座聖堂」のことである。ギリシャ語で椅子を意味するカテドラ:kathedora「椅子」が語源で、椅子のある教会、つまり司教の椅子のある教会を意味している。実際には「大聖堂」であることが普通ではあるが、大きいからといって「カテドラル」であるわけではない。とはいえ、実際にはかなりアバウトで、教会法上では「カテドラル」ではなくても、一般的に「カテドラル」と呼ばれている教会も少なくない。もちろんこのレオンのカテドラルはどちらの意味においても「カテドラル」である。
カテドラル
レオンのカテドラルは、フランス・ゴシックの影響を直接に受けたゴシック建築とされる。トレドやセビリアのカテドラルのような無骨で肉感的なスペインらしいゴシック建築とは異なり、繊細で精神的な印象を受ける。初代の主任建築家は、ブルゴスのカテドラルの建設にも関わっていたフランス生まれのエンリケ親方と言われ、着工が13世紀半ばということもあって、平面プランはランスのカテドラルを、空間処理はアミアンのカテドラルを参考にしていると言われる。
入り口
大聖堂を有名にしているのはステンドグラスである。特に、フランスでは戦災等によって失われてしまっている中世の時代のステンドグラスが大量に残されているのが貴重である。現代では再現が不可能と言われる見事なステンドグラスが聖堂空間を埋め尽くしている。圧倒するような外観とは異なり、内部は色鮮やかな光で満たされた空間である。
内部 ステンドグラス
バラ窓
回廊
今では典型的な教会建築とされるゴシック建築だが、元々は「ゴート人の、ゴート風の」という意味で、つまり「野蛮人の」「洗練されていない」といった感じの悪口である。ギリシャ・ローマの古典時代を《復興》したと誇ったルネサンス時代のイタリア人が、アルプス以北の《後進》地域の建築様式を馬鹿にしてつけた名称で、総じて《中世》(つまり過去の栄光の時代とそれを復興した現在の間の《暗黒時代》ということである)の奇怪さや野蛮さを表す言葉として用いられた。しかし、19世紀に入って合理主義一辺倒の近代に対する反発から再評価が進み、「ゴシック・ロマンス」と呼ばれる小説の分野を手始めに、演劇や美術といった様々な分野で復権を果たすことになった。
ポップ・カルチャーの世界で良く聞くゴスロリという言葉はゴシック・ロリータの略である。ファッションの世界でも、ヨウジヤマモトには、「GOTHIC YOHJI YAMAMOTO」のコレクションラインがある。ゴシックの特徴である鋭く尖ったディテール、菱型、ユリ、ヘビ、天使などのモチーフをデザインに落とし込んでおり、ゴシック建築は現代のクリエーターにもインスピレーションを与えているのである。
歩いた総距離1084.9km
(はが げんたろう)
コラム 僕の愛用品 ~巡礼編~
第20回
レインジャケット
Columbia(コロンビア) Kipling Jacket(キップリング・ジャケット) 15,750
バルセロナ。地中海沿いにあるスペイン第二の都市、歴史と文化が融合するアートの町。そして、私が世界で一番好きな都市である。ある人は1992年のオリンピックを、またある人はフレディ・マーキュリーの曲を、ある人は奇才の建築家、アントニ・ガウディのサグラダ・ファミリアを、ある人は世界屈指のサッカークラブ、FCバルセロナを思い浮かべることだろう。バルセロナについて書きたいことはたくさんあるがそれはまた別の機会にしたいと思う。
このコロンビアのレインジャケットは私がバルセロナに短期で留学をする直前、幕張のアウトレットでそのデザインに一目惚れして買ったものである。バルセロナをイメージさせるカラフルで色鮮やかな色彩に私は心惹かれた。
コロンビア社はアメリカ、オレゴン州に本社を構える世界的なアウトドアブランドである。主にトレッキング用のアイテムを生産している。高機能のハイスペックなアイテムというよりも近くをハイキングするために必要な機能を持つアイテムを適正な値段で販売することを目標にしている。現会長のガート・ボイルは、「お子さんが何人もいる家庭で、高いジャケットやコートは何着も買えないでしょう。だからコロンビアでは適正な価格を大きなテーマにしています。私はアウトドアの世界をひとりでも多くの人に楽しんでもらいたいんです」と語っている。このジャケットもゴアテックスではなく、自社開発の素材を使用し、コストダウンを図っている。
このジャケットは本当に気に入っている。しかし、巡礼に持っていくレインウェアにはオススメできるものではない。正直、このレインウェアは蒸れる。まったく快適ではない。買ったときはそんなことなど考えてもいないし、気がつかない。(デザインを最優先して買ったのだから)。だから、巡礼中、雨に降られた時には大変だった(「エッセイ」第3回参照)。
しかし、その不便さもまた良いのではないかと今は改めて思う。もちろん機能はあったに越したことはない。ただ、そこまでハイスペックではなくてもいいのではないかと最近になっては思うところもある。ヒマラヤの8000m級の山に命懸けで登る登山家ではないのだから、たまに降る雨さえしのげば良いのである。蒸れて着ているものがびしょびしょになったとしても、風邪をひくぐらいである。
もし、私が初めて巡礼に旅立つ人に「雨具は何にすれば良いですか?」と聞かれれば、迷わず、ゴアテックスを使用しているものにしたら良いですよ、と答えるだろう。高機能の素晴らしい製品がいくらでもある。
ただ、もし自分が再度巡礼に行く機会が訪れたならば、不便でも、また、このジャケットを持っていくことだろう。快適であることに越したことはないが、快適な巡礼というのも逆に不自然である。思い通りにならない不自由さを楽しむのだ。人はそれに気付くためにこそ、巡礼という非合理的な行いをするのだから。

■芳賀言太郎 Gentaro HAGA
1990年生
2009年 芝浦工業大学工学部建築学科入学
2012年 BAC(Barcelona Architecture Center) Diploma修了
2014年 芝浦工業大学工学部建築学科卒業
2015年 立教大学大学院キリスト教学研究科博士前期課程所属
2012年にサンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路約1,600kmを3ヵ月かけて歩く。
卒業設計では父が牧師をしているプロテスタントの教会堂の計画案を作成。
大学院ではサンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路にあるロマネスク教会の研究を行っている。
●今日のお勧め作品は、石山修武です。
石山修武
「GAYAの中のMACHIDA ARC」
2014年
エッチング
Image size: 15.0x15.0cm
Sheet size: 28.0x25.3cm
Ed.7
サインあり
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※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
◆芳賀言太郎のエッセイ「El Camino(エル・カミーノ) 僕が歩いた1600km」は毎月11日の更新です。
「El Camino(エル・カミーノ) 僕が歩いた1600km」 第20回
Japanese on 1600km pilgrimage to Santiago Vol.20
第20話 カテドラル ~レオンにて~
10/20(Sat) Sahagun – Mansilla de las Mulas (37.4km)
10/21(Sun) Mansilla de las Mulas – Leon (18.7km)
ヨーロッパのサイクルロードレースの開幕を告げる「パリ~ニース」が始まった。今年で74回を数えるこのレースは、毎年3月、パリ近郊から地中海のリゾート都市ニースを目指すレースである。「太陽を求めるレース」と言われるだけあって、1日目はまだ冬枯れの森を抜けていたのが日毎に辺りの気配が春めいてきて、一週間後のゴールでは緑鮮やかな地中海へと達する。季節の移り変わりと共に興味深いのは沿道に映し出される建築の数々で、数多の教会をはじめに古城から現代建築まで、空撮映像がそのままフランス観光案内にもなっている。印象深いのは、教会が地域毎、町毎に異なった表情を持っていることで、これはロマネスク、これはゴシック、こんどはルネサンスと、時にレースの展開そっちのけで空撮映像にかじりつくことになる。フランスであるから基本的にはロマネスクとゴシックなのだが、それがはっきりと色分けされているのが面白い。村や町はロマネスク、都市はゴシック、そして高い塔を持ち絢爛豪華な彫刻を施されたゴシックらしいゴシック教会はやはり大都市にしかない。そして発祥からしても当然なのかも知れないが、初日から前半、つまりパリ近郊からフランス北部はゴシックが多く、南に下るほどにロマネスクが増えて、ゴール近くの地中海沿岸となるとゴシックの教会はほとんど見られなくなる。1140年に始まるサン・ドニ修道院付属聖堂内陣改修に発し、イル・ド・フランスを中心に北フランス、ドイツ、イングランドへと伝播したゴシック建築は、陽光の乏しい高緯度地方の「光を求める」思いの結晶なのだろうか。
自動車道路脇の一本道をひたすら歩く。途中には村が無く、前にも後ろにも誰も人がいない状況は不安になるものだ。しかし、こういうひたすら長い距離を歩くこと以外は何も考えないで歩く日も必要である。
一本道途中でトレッキングポールが壊れてしまった。これは軽さを最優先にして購入したカーボン製のもので(「私の愛用品」の第14回参照)、二本で300グラムという驚異的な軽さと、使わない時にはコンパクトに折りたたんでバッグにしまうことが出来るという優れたものではあったのだが、3ヶ月にも及ぶ巡礼への耐久性は持ち合わせてはいなかった。そもそも日帰りから数日行が前提なのだから無理な注文である。フランスでの一ヶ月半におよぶ巡礼行とピレネー越えで力を使い果たしたのか、スペインに入って1週間ぐらいでガタが出てきてしまった。グリップをテープで巻いたり、ジョイント部分に小石を詰めたりと応急処置をはかったものの、応急処置では済まなくなってしまった。
コンビニなどという便利なものはないので(あったら逆に興醒めである)宿泊した村で雑貨屋を探し、接着剤を買って修復を試みる。直ったとは言い難いが、だいぶ長い距離を歩き、酷使してきたから仕方がない。愛着もあるため、なんとか修理しながら使っていく。
レオン手前の陸橋レオン。美しい街である。
レオンはカスティーリャ王国の首都として栄えた都市である。そしてこの町のシンボルは何と言ってもカテドラルである。
カテドラルとは、しばしば「大聖堂」と訳されるが、本来は「司教座聖堂」のことである。ギリシャ語で椅子を意味するカテドラ:kathedora「椅子」が語源で、椅子のある教会、つまり司教の椅子のある教会を意味している。実際には「大聖堂」であることが普通ではあるが、大きいからといって「カテドラル」であるわけではない。とはいえ、実際にはかなりアバウトで、教会法上では「カテドラル」ではなくても、一般的に「カテドラル」と呼ばれている教会も少なくない。もちろんこのレオンのカテドラルはどちらの意味においても「カテドラル」である。
カテドラルレオンのカテドラルは、フランス・ゴシックの影響を直接に受けたゴシック建築とされる。トレドやセビリアのカテドラルのような無骨で肉感的なスペインらしいゴシック建築とは異なり、繊細で精神的な印象を受ける。初代の主任建築家は、ブルゴスのカテドラルの建設にも関わっていたフランス生まれのエンリケ親方と言われ、着工が13世紀半ばということもあって、平面プランはランスのカテドラルを、空間処理はアミアンのカテドラルを参考にしていると言われる。
入り口大聖堂を有名にしているのはステンドグラスである。特に、フランスでは戦災等によって失われてしまっている中世の時代のステンドグラスが大量に残されているのが貴重である。現代では再現が不可能と言われる見事なステンドグラスが聖堂空間を埋め尽くしている。圧倒するような外観とは異なり、内部は色鮮やかな光で満たされた空間である。
内部 ステンドグラス
バラ窓
回廊今では典型的な教会建築とされるゴシック建築だが、元々は「ゴート人の、ゴート風の」という意味で、つまり「野蛮人の」「洗練されていない」といった感じの悪口である。ギリシャ・ローマの古典時代を《復興》したと誇ったルネサンス時代のイタリア人が、アルプス以北の《後進》地域の建築様式を馬鹿にしてつけた名称で、総じて《中世》(つまり過去の栄光の時代とそれを復興した現在の間の《暗黒時代》ということである)の奇怪さや野蛮さを表す言葉として用いられた。しかし、19世紀に入って合理主義一辺倒の近代に対する反発から再評価が進み、「ゴシック・ロマンス」と呼ばれる小説の分野を手始めに、演劇や美術といった様々な分野で復権を果たすことになった。
ポップ・カルチャーの世界で良く聞くゴスロリという言葉はゴシック・ロリータの略である。ファッションの世界でも、ヨウジヤマモトには、「GOTHIC YOHJI YAMAMOTO」のコレクションラインがある。ゴシックの特徴である鋭く尖ったディテール、菱型、ユリ、ヘビ、天使などのモチーフをデザインに落とし込んでおり、ゴシック建築は現代のクリエーターにもインスピレーションを与えているのである。
歩いた総距離1084.9km
(はが げんたろう)
コラム 僕の愛用品 ~巡礼編~
第20回
レインジャケット
Columbia(コロンビア) Kipling Jacket(キップリング・ジャケット) 15,750
バルセロナ。地中海沿いにあるスペイン第二の都市、歴史と文化が融合するアートの町。そして、私が世界で一番好きな都市である。ある人は1992年のオリンピックを、またある人はフレディ・マーキュリーの曲を、ある人は奇才の建築家、アントニ・ガウディのサグラダ・ファミリアを、ある人は世界屈指のサッカークラブ、FCバルセロナを思い浮かべることだろう。バルセロナについて書きたいことはたくさんあるがそれはまた別の機会にしたいと思う。
このコロンビアのレインジャケットは私がバルセロナに短期で留学をする直前、幕張のアウトレットでそのデザインに一目惚れして買ったものである。バルセロナをイメージさせるカラフルで色鮮やかな色彩に私は心惹かれた。
コロンビア社はアメリカ、オレゴン州に本社を構える世界的なアウトドアブランドである。主にトレッキング用のアイテムを生産している。高機能のハイスペックなアイテムというよりも近くをハイキングするために必要な機能を持つアイテムを適正な値段で販売することを目標にしている。現会長のガート・ボイルは、「お子さんが何人もいる家庭で、高いジャケットやコートは何着も買えないでしょう。だからコロンビアでは適正な価格を大きなテーマにしています。私はアウトドアの世界をひとりでも多くの人に楽しんでもらいたいんです」と語っている。このジャケットもゴアテックスではなく、自社開発の素材を使用し、コストダウンを図っている。
このジャケットは本当に気に入っている。しかし、巡礼に持っていくレインウェアにはオススメできるものではない。正直、このレインウェアは蒸れる。まったく快適ではない。買ったときはそんなことなど考えてもいないし、気がつかない。(デザインを最優先して買ったのだから)。だから、巡礼中、雨に降られた時には大変だった(「エッセイ」第3回参照)。
しかし、その不便さもまた良いのではないかと今は改めて思う。もちろん機能はあったに越したことはない。ただ、そこまでハイスペックではなくてもいいのではないかと最近になっては思うところもある。ヒマラヤの8000m級の山に命懸けで登る登山家ではないのだから、たまに降る雨さえしのげば良いのである。蒸れて着ているものがびしょびしょになったとしても、風邪をひくぐらいである。
もし、私が初めて巡礼に旅立つ人に「雨具は何にすれば良いですか?」と聞かれれば、迷わず、ゴアテックスを使用しているものにしたら良いですよ、と答えるだろう。高機能の素晴らしい製品がいくらでもある。
ただ、もし自分が再度巡礼に行く機会が訪れたならば、不便でも、また、このジャケットを持っていくことだろう。快適であることに越したことはないが、快適な巡礼というのも逆に不自然である。思い通りにならない不自由さを楽しむのだ。人はそれに気付くためにこそ、巡礼という非合理的な行いをするのだから。

■芳賀言太郎 Gentaro HAGA
1990年生
2009年 芝浦工業大学工学部建築学科入学
2012年 BAC(Barcelona Architecture Center) Diploma修了
2014年 芝浦工業大学工学部建築学科卒業
2015年 立教大学大学院キリスト教学研究科博士前期課程所属
2012年にサンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路約1,600kmを3ヵ月かけて歩く。
卒業設計では父が牧師をしているプロテスタントの教会堂の計画案を作成。
大学院ではサンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路にあるロマネスク教会の研究を行っている。
●今日のお勧め作品は、石山修武です。
石山修武「GAYAの中のMACHIDA ARC」
2014年
エッチング
Image size: 15.0x15.0cm
Sheet size: 28.0x25.3cm
Ed.7
サインあり
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◆芳賀言太郎のエッセイ「El Camino(エル・カミーノ) 僕が歩いた1600km」は毎月11日の更新です。
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