野口琢郎のエッセイ「京都西陣から」 第31回

ART STAGE SINGAPOREを終え、次はニューヨークへ

1月、年も明けて早々にART STAGE SINGAPORE出展の為にシンガポールへ出発、僕はシンガポールでのアートフェア出展は2度目で、ART STAGE SINGAPOREは初めてでした。真冬の日本から常夏のシンガポールへ着いた時には汗が吹き出してちょっとクラクラしましたが、暑い国は好きなのですぐに慣れました。

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初日は展示作業、2日目からはいつものようにフェア開始から終了まで毎日ときの忘れものブースに張り付いていました。
以前シンガポール在住のアートライターの森迫さんから、シンガポールの人は自然に憧れがあるから、海とか空の作品はきっと好まれると思うとアドバイスを頂いていたのですが、その通りで、今回違うシリーズを2点並べましたが、海空を描いた大作の方が確実にお客様の反応は良く、素晴らしい、美しい、アメージングだとたくさん嬉しいお言葉を頂けました。

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そして、昨年の台北でのアートフェアで自分の作品を気に入って頂いたお客様が、今回わざわざシンガポールまでお越しくださり、大作を売約頂く事ができ、種蒔きといいますか、たとえその場で結果が出なかったとしても地道に作品を発表し続けて、現場に行って色々なお客様とお話する事の大切さを改めて感じました。
今回も出展のチャンスを頂き、現地でもお世話になったときの忘れものの皆様に心より感謝致します。

シンガポールは今とても不況らしく、帰り際に、来年はアートステージという形でもうフェアは開催されないのでは、という噂もうかがいましたが、違う形でもアートフェアが開催され、また出展させて頂けるチャンスがあるのであれば、ぜひ行ってみたいです。

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そして次は3月の頭にニューヨークで開催される紙ベースのアートフェア、Art on Paperにときの忘れものさんのブースから出展させて頂きます。
紙ベース作品のみのアートフェアという事で、いつも木パネルベースの自分は当初メンバーに入っていなかったのですが、ぜひ出展したかったので、紙でも作れますのでとお願いし、出展させて頂く事となりました。

元々の西陣の箔屋の仕事は和紙ベースの仕事だったので、紙ベースでの作品制作は特に難しいという事はなく、いつもと違う事といえば額装が必要な事。
いつもお世話になっている額屋の大地堂さんに自分のイメージを伝えて念入りに話し合い、マット、額共に真っ白で統一し、箔の反射が綺麗に見えるよう、表面にガラスやアクリルを入れませんでした。

紙は耳付きの海外の厚手水彩紙で、漆が染み込むと歪みがでるので、あらかじめ裏にシナベニヤを貼り付けてから制作を始めました。

作品は「Quiet hope」79×108cm、「Infinite」56.7×76.5cm、「Landscape#40」76.5×56.7cmの3点です。

「Quiet hope」野口琢郎
「Quiet hope」


「Infinite」野口琢郎
「Infinite」


「Landscape#40」野口琢郎
「Landscape#40」


「Quiet hope」と「Infinite」は出来る限りシンプルに、箔の美しさだけでも十分魅せられる作品にしたいと思いました。
「Landscape#40」は以前のLandscape#38、39などで使っていた引っ掻きの技法と、それまでの型紙などを使った技法の長所をミックスして制作しました。
気がつけばこのシリーズも40点目、1点目の#1を制作したのが2007年の秋頃なので、ちょうど10年程で40点、一年平均4点は意外に少ないですが、少しずつ変化や進化をしてきました。
このペースで作り続けたとしたら#100ができるのは15年後の2032年頃、世界がまだギリギリ平和で、元気に生きていればその時は56歳位、# 100の頃にはどんな進化をしているのか楽しみです。

さてニューヨークに行くのは3度目、展示は初めてなので、どんな反応をして頂けるのか楽しみです。
のぐち たくろう

野口琢郎 Takuro NOGUCHI(1975-)
1975年京都府生まれ。1997年京都造形芸術大学洋画科卒業。2000年長崎市にて写真家・東松照明の助手に就く。2001年京都西陣の生家に戻り、家業である箔屋野口の五代目を継ぐため修行に入る。その後も精力的に創作活動を続け、2004年の初個展以来毎年個展を開催している。

*画廊亭主敬白
昨日はいろいろな人がすれ違いになった一日でした。
京都からふらりと来たのはこのブログの執筆者・野口琢郎さん。
野口さんが帰られた直後に突然訪れた海外からの若いカップル、聞けば「ノグチの絵が欲しい」。
え~いまさっきまでここにいたのに~と思っても後の祭り。
あいにく全部の在庫を倉庫に運んだばかりで画廊には一点もなく、パソコンでイメージを見てもらいました。
カップルが去って間もなくドアを開けたのはNii fine artsの新居さん、大阪での野口さんの扱い画廊です。
不思議なこともあるものですね。

●今日のお勧め作品は野口琢郎です。
06_noguchi_LS37野口琢郎
「Landscape#37」
2016年
箔画(Lacquer, Gold/Silver/Platinum foil, Charcoal, Resin, Clear acrylic paint on Wood panel)
65.2×53.0cm
サインあり

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◆ニューヨークで開催されるArt on Paperに出展します。野口琢郎も出品参加します。
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会期:2017年3月2日[木]~3月5日[日]
VIPプレビュー:2017年3月2日(木)
一般公開:2017年3月3日(金)~5日(日)11:00~19:00
(5日は12:00から18:00まで)
会場:Pier 36 New York
299 South St, New York, NY 10002
ときの忘れものブースナンバー:G15
公式サイト:http://thepaperfair.com/ny
出品作家:磯崎新安藤忠雄内間安瑆野口琢郎光嶋裕介細江英公植田正治堀尾貞治ジョナス・メカス草間彌生マイケル・グレイヴス

◆野口琢郎のエッセイ「京都西陣から」は毎月15日の更新です。