frgmのエッセイ「ルリユール 書物への偏愛」第37回

接着について・ルリユール編


以前、ルリユールは常に接着の連続ですとご紹介いたしました(と同時にヤスリかけの連続でもありますが・・・)。今回は、接着に使用する「のり」の種類について触れていきたいと思います。

大まかにくくって、日本語では「のり」、フランス語では「colle」ですが、英語の場合は、「glue」と「paste」の2つのカテゴリーに分かれているようです。
1つ目の「glue」は、動物の皮や骨が原料の接着剤です。日本だと膠、フランスだとcolle forteやcolle d’osと言ったところでしょうか。水で煮溶かしたり、湯煎をして使いますが、温めているとケモノ臭が立ちのぼります。速乾性があるので、紙の「伸び縮み運動」による「反り」が少なくて済むようです。しかし、その分手早く作業しなければなりません。
2つ目の「paste」は、穀物が原料の接着剤で、米粉や小麦粉などです。日本だとでんぷんのり(芋類も入りますが)、フランスだとcolle de pâteやcolle d’amidonとなり、こちらも水を加え煮詰めて準備をします。glueと比べてしっとりとしていて乾くのが遅いため、落ち着いて革を貼るのに向いています。
(私は残念ながら、ケモノ系のりのglueは、「嗅いだ」ことはありますが、「使った」ことはありません。)

一番応用範囲のあるものは、革、紙やクロスにも使用できる、ボンドとでんぷんのりを混ぜて作るcolle mélangéeです。
革貼りなどゆっくりと作業したい場合は、でんぷんのりの割合を多めにし、薄い紙やクラフト紙のような、水分を含むと激しく「伸び縮み運動」をする種類の紙を貼る時は、貼り合わせるボード紙の反りが最小限に済むように、ボンドの割合を多めにして手早く作業します。

私は、ルリユールを始めるまでは、紙に「目」があることや、革に「シボ」があるなんて思いもしませんでした。
紙にのりを「入れる」と、紙は通っている「目」に従って「伸び運動」をします。使用する紙が水分を含んだ時にどのぐらい伸びるのか、また乾いた時の「縮み運動」がどのぐらいボード紙を引っ張り、反らせてしまうのかを考慮に入れ、のりの具合を調整し、作業のペースをアップダウンさせ、さらにはそこら中にのりのシミをつけないように常に身ぎれいにしておかなければなりません。

ルリユールは、そんな地道な作業の積み重ねで成り立っております。
(文:中村美奈子
中村(大)のコピー


●作品紹介~中村美奈子制作
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中村美奈子
《革装文鎮》

・山羊革(外側)
・鉄塊(内側)
・金箔・パラジウム箔
・真鍮ワイヤー
・2016年制作
・47×47×47mm
日常でもデスク周りで使える文鎮にテクスト(ウィリアム・ブレイク)を箔押ししました。

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●ルリユール用語集
ルリユールには、なじみのない用語が数々あります。そこで、frgmの作品をご覧いただく際の手がかりとして、用語集を作成しました。

本の名称
01各部名称(1)天
(2)地
(3)小口(前小口)
(4)背
(5)平(ひら)
(6)見返し(きき紙)
(7)見返し(遊び紙)
(8)チリ
(9)デコール(ドリュール)
(10)デコール(ドリュール)


額縁装
表紙の上下・左右四辺を革で囲い、額縁に見立てた形の半革装(下図参照)。

角革装
表紙の上下角に三角に革を貼る形の半革装(下図参照)。

シュミーズ
表紙の革装を保護する為のジャケット(カバー)。総革装の場合、本にシュミーズをかぶせた後、スリップケースに入れる。

スリップケース
本を出し入れするタイプの保存箱。

総革装
表紙全体を革でおおう表装方法(下図参照)【→半革装】。

デコール
金箔押しにより紋様付けをするドリュール、革を細工して貼り込むモザイクなどの、装飾の総称。

二重装
見返しきき紙(表紙の内側にあたる部分)に革を貼る装幀方法。

パーチメント
羊皮紙の英語表記。

パッセ・カルトン
綴じ付け製本。麻紐を綴じ糸で抱き込むようにかがり、その麻紐の端を表紙芯紙に通すことにより、ミゾのない形の本にする。
製作工程の早い段階で本体と表紙を一体化させ、堅固な構造体とする、ヨーロッパで発達した製本方式。

半革装
表紙の一部に革を用いる場合の表記。三種類のタイプがある(両袖装・額縁装・角革装)(下図参照)【→総革装】。
革を貼った残りの部分は、マーブル紙や他の装飾紙を貼る。

夫婦函
両面開きになる箱。総革装の、特に立体的なデコールがある本で、スリップケースに出し入れ出来ない場合に用いる。

ランゲット製本
折丁のノドと背中合わせになるように折った紙を、糸かがりし、結びつける。背中合わせに綴じた紙をランゲットと言う。
全ての折丁のランゲットを接着したあと、表装材でおおい、装飾を施す。和装本から着想を得た製本形態(下図参照)。

両袖装
小口側の上下に亘るように革を貼る形の半革装(下図参照)。

様々な製本形態
両袖装両袖装


額縁装額縁装


角革装角革装


総革装総革装


ランゲット装ランゲット製本


中村美奈子さんが瀧口修造にオマージュした文鎮を制作しました。
中村美奈子 文鎮こげ茶、赤、緑、オレンジの4色あります。
一個:大5,500円 小5,000円(税別)
二個組:10,000円(税別)
三個組:14,000円(税別)
紙ケース付、送料は一律500円(何個でも)。
瀧口ファンならずとも手元に置きたくなるような色彩豊かな佳品です。特別頒布中ですのでどうぞご注文ください。

●書籍のご案内
TAKIGUCHI_3-4『瀧口修造展 III・IV 瀧口修造とマルセル・デュシャン』図録
2017年10月
ときの忘れもの 発行
92ページ
21.5x15.2cm
テキスト:瀧口修造(再録)、土渕信彦、工藤香澄
デザイン:北澤敏彦
掲載図版:65点
価格:2,500円(税別)*送料別途250円


●ときの忘れものは、〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました(詳しくは6月5日及び6月16日のブログ参照)。
電話番号と営業時間が変わりました。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 
営業時間=火曜~土曜の平日11時~18時。日・月・祝日は休廊。

JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
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◆frgmメンバーによるエッセイ「ルリユール 書物への偏愛」は毎月3日の更新です。