コロナ禍でなかなか美術館に足が向きませんが、亭主の今年一番の推しは千葉市美術館の前川千帆展です。瑛九展にたまたま来廊されたお客さんを捕まえては「千葉にGo!」と叫びまくっています。
20210911142355_00003前川千帆《屋上風景》
昭和6(1931)年
木版多色摺、紙
平木浮世絵財団所蔵

20210911142355_00001前川千帆《ピクニック》
昭和3(1928)年
木版多色摺、紙
個人蔵

20210911142355_00002前川千帆《新東京百景 五反田駅》
昭和7(1932)年
木版多色摺、紙
東京都現代美術館所蔵

20210910174430_00003前川千帆《日本風景版画軽井沢之部 避暑期の旧軽井沢》
昭和4(1929)年
木版多色摺、紙
千葉市美術館所蔵

20210910174430_00004前川千帆《雪の噴火湾》
昭和6(1931)年
木版多色摺、紙
平木浮世絵財団所蔵

20210911142355_00003_2前川千帆《湖の見える室》
昭和7(1932)年
木版多色摺、紙
千葉市美術館所蔵

20210910174430_00005前川千帆《野風呂》
昭和10(1935)年
木版多色摺、紙
平木浮世絵財団所蔵

20210911142355_00004前川千帆《野遊び》
昭和12(1937)年
木版多色摺、紙
平木浮世絵財団所蔵

20210910174430_00006前川千帆《紙漉場》
昭和17(1942)年
木版多色摺、紙
平木浮世絵財団所蔵

20210910182319_00003前川千帆《指宿》/『続版画浴泉譜』
昭和19(1944)年
木版多色摺、紙
個人蔵

20210910174430_00008前川千帆《公園の一隅》
昭和30(1955)年
木版多色摺、紙
平木浮世絵財団所蔵

20210910174430_00009前川千帆《三角ずきん》制作年不詳
木版多色摺、紙
平木浮世絵財団所蔵

20210910182319_00002前川千帆《和倉/『続続版画浴泉譜』》
昭和27(1952)年
木版多色摺、紙
個人蔵

20210910182319_00001前川千帆《鳴子/『続続続版画浴泉譜』》
昭和31(1956)年
木版多色摺、紙
個人蔵

*画廊亭主敬白
何が得意かと聞かれたら躊躇なく創作版画と答えます。理由はホームページに書いたとおりですが、多くの作品を見て、触れて、買った(そして売った)という自負からです。しかしそれだけじゃ駄目なんですね。
366点、40数年振りの大回顧展を一点一点見ていくうちに今まで思いもしなかった千帆版画の特徴に気づき愕然としました。
上掲は亭主が付箋をはった数十点の中から若いスタッフが任意に選らんだものです。すべてに女性が描かれています。
働く女性だったり、温泉に入る女性だったり、群像はほとんどがアベックか家族連れです。
亭主は自分の趣味(露天風呂愛好会)もあって千帆を版画浴泉譜に代表される温泉や鄙びた風景、新興都市を描いた版画家として見ていました。
創作版画を代表する版画集に『新東京百景』があります。昭和初期に関東大震災により壊滅した東京の復興の姿を、恩地孝四郎、諏訪兼紀、平塚運一、川上澄生、深沢索一、藤森静雄、逸見享、前川千帆の8人が分担して描いた大連作です。彼らの作品を数多く扱いましたが、千帆ほど同時代を生きる女性たちを描いた版画家はいない、と千葉の会場で突然(76にもなって)気づいたのでした。
いわゆる新版画や竹久夢二たちの男目線による「美人画」とは全く異なる視点で、千帆は当時の社会をともに生きた女性たちを(克明なスケッチをもとに)あたたかくユーモアをたたえた筆致で木版に彫り続けました。そんな作家は当時はいなかった。《屋上風景》のモボ・モガたちのお洒落な姿は今でも新鮮です。
亭主は山下和美の大ファンで「天才 柳沢教授の生活」は枕頭の愛読書ですが、千帆の《ピクニック》は柳沢家の家族を彷彿とさせます。
今夜から千帆の図録もベッドの脇に置くことになりそうです。

最後の1点はスタッフの好みかしら。
20210910174430_00001前川千帆《猫》
制作年不詳
木版墨摺、紙
平木浮世絵財団所蔵
*作品画像は千葉市美術館のお許しを得て、図録から転載させていただきました。

●「平木コレクションによる 前川千帆展
会期:2021年7月13日[火] – 9月20日[月・祝]
会場:千葉市美術館
20210817171910_0000120210817171910_00002
*8月22日ブログに担当学芸員の西山純子さんのエッセイ「平木コレクションによる 前川千帆展」を掲載しましたので、ぜひお読みください。
会期は残り僅か、20日までです。見逃したらきっと後悔します。

●図録のご紹介
1631256894399『平木コレクションによる 前川千帆展』図録
編集:西山純子(千葉市美術館)
展示編集協力:公益財団法人平木浮世絵財団、佐藤光信、森山悦乃、松村真佐子
ブックデザイン:川添英昭
印刷製本:日本写真印刷コミュニケーションズ株式会社
発行:千葉市美術館
発行日:2021年7月13日
サイズ:231 × 185 × 20 mm
ページ数:256ページ
税込価格 2,420円₊送料520円
※ときの忘れもので取り扱っています。

●本日のお勧めは瑛九です。
33瑛九 Q Ei
《フォトデッサン型紙44》
水彩・セロファン
45.0x49.5cm
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※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください

●ときの忘れものは2017年に青山から〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。もともと住宅だった阿部勤設計の建物LAS CASASを使って、毎月展覧会Web展)を開催し、美術書の編集事務所としても活動しています。
WEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>の特集も是非ご覧ください。
ときの忘れものはJR及び南北線の駒込駅南口から徒歩約8分です。
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