明日、8月20日は宮脇愛子先生の命日です(2014年8月20日没)。
ときの忘れものが生前の宮脇先生を迎えて最後の展覧会(宮脇愛子新作展2013)をしたのは、亡くなる前年の12月でした。
1970年代からいろいろご指導いただき、たくさんのエディションをつくりました。
そのいくつかをご紹介します。
宮脇愛子のオリジナル・ドローイングとシルクスクリーン入り小冊子、
『Hommage a Man Ray マン・レイへのオマージュ』(DVD付き)
『Hommage a Man Ray マン・レイへのオマージュ』
発行日:2010年9月28日
発行:ときの忘れもの
限定25部(番号・サイン入り)
著者:宮脇愛子、マン・レイ
写真:宮脇愛子、磯崎新
シルクスクリーン刷り:石田了一
デザイン:北澤敏彦
折本形式(蛇腹)、皮ケース入り、表裏各15ページ
サイズ:18.0×14.5cm


・ 宮脇愛子オリジナルドローイング、自筆サイン入り
・ 宮脇愛子が1959年より2010年まで制作したドローイングより、シルクスクリーン13点を挿入
・ 磯崎新撮影「アトリエのマン・レイと宮脇愛子」カラー写真1点貼り込み
・ 宮脇愛子に贈られたマン・レイ作品の画像貼り込み(印刷)
・ マン・レイとの交流と、『うつろひ』への宮脇愛子インタビューDVD(約10分)付き
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
シルクスクリーンや銅版のエディションも多数発表しました。
グランドをひいた銅版全体を細かな線描で埋め尽くした連作集『宮脇愛子 銅版画集/1980』の序文は辻邦生先生に書いていただきました。

宮脇愛子《作品 V》
宮脇愛子先生、辻邦生先生への感謝の気持ちを込めて、再録させていただきます。
無限への鏡
辻邦生
私が宮脇愛子さんの作品に深く魅了されたのは、パリの「間」展に展示された『うつろい』 を見たときであった。もちろん他の作品は以前からよく見ていたし、彫刻家その人とは作品を見る前からの知り合いだが、作品の内奥の光に貫かれて、 私自身が変容したかに感じられる強烈な体験は、それ以前にはなかったのである。
『うつろい』は宮脇愛子さんの造型的な語彙である、断面がセクション・ペーパー状になった、金属立体による見事な作品である。私はその前に立った瞬間、そこに平安貴族のみやびな宴を見ているような気がした。「間」展そのものが異国の都会のなかへ突出した日本の伝統美の展覧会であっただけに、そうした伝統性と共鳴し合って、艶なる典雅さを造型した宮脇愛子さんの作品は、ひときわ人々の心を魅惑したのであった。
「それは何といったらいいか、“あらぬもの”とでもよぶべき何か、オスカー・ワイルドのいうすべてのものの背後にある、或るかくされたものの精〉とでもいうべき何かを、つねに見ようとしてきたような気がする」と宮脇愛子さん自身が書いているように、その作品は冷たい硬質な形体を持つ金属体であるにもかかわらず、そこに漂うのは、高貴な官能性と清らかな憂愁感であった。平安貴族の一夜の遊宴のはてにくる夜明けの透明な悲しみに似たものが、ほのかな光となって、そこにたたずんでいたのである。
もしこういう情感を何か具象的なもので描いたらどうだろう。おそらくずっと鮮度の低い、夾雑物の多い感興となり、われわれを遠くに誘うことはないだろう。
それを端的に感じさせるのが宮脇愛子さんの銅版画である。作者は、彫刻においてセクション・ペーパー状の断面を語彙としたように、銅版画においては網目状の形体を語彙としている。この語彙を駆使することによって、作者は、具象では実現できない最も澄明な情感を、その澄んだ透明さのままに形象化してゆくのである。
私は、これらの銅版画のなかに、辻󠄀ヶ花に見られる仄かな幽艶を感じるし、小紋の持つ華やかな繊細さが燃え立っているとも見えるのだが、同時に、初夏の高原の森がみどりに煌めき渡っているさまも感じるのである。
夜、燈火の下で、私はそこにギリシア神話の舞台を見ることがあるし、時には、夕日に赤く反射する黄金色の海原を感じることもある。
つまり宮脇愛子さんのこれらの銅版画の作品は、無限の情感のヴァリエーションを一つの鏡に映したごときものである。 それは〈あらぬもの〉の現前という魔術的な力業によって初めて達成された、言語を絶した境である。それは言葉をかえれば形体の祝祭にめぐり会うことに他ならない。言語を絶するとは、時間を絶すること――すなわち永遠に達することであるのを、われわれはかかる形体の祝祭においてのみ、納得するのである。
(つじ くにお)
1999年2月「磯崎新 新作展」のオープニングの二次会 左から辻佐保子先生、磯崎新先生、辻邦生先生、宮脇愛子先生

左から六角鬼丈先生、植田実先生、綿貫令子、綿貫不二夫

1983年4月26日「ジャン・ベルト・ヴァンニ展」レセプション 宮脇愛子先生(左)と小田襄先生 於・イタリア大使館
●8月13日(日)~8月21(月)は夏季休廊中です。
◆「阿部勤建築で一枚の版画(リトグラフ)を見る」
2023年8月25日(金)~9月2日(土) 11:00-19:00 *日曜・月曜・祝日は休廊
本年1月に亡くなられた阿部勤先生(1936-2023)は2021年11月22日の日付の入ったリトグラフ「中心のある家」を制作されていました。
阿部先生が設計された個人住宅Las Casas(2017年からギャラリーときの忘れもの)で、その建築空間を体感していただきながら、遺された版画作品をご覧ください。併せてル・コルビュジエ、安藤忠雄、磯崎新、マイケル・グレイヴス、アントニン・レーモンド、石山修武、六角鬼丈、毛綱毅曠、倉俣史朗、佐藤研吾、杉山幸一郎、光嶋裕介などの建築家の版画・ドローイングを展示します。
●ときの忘れものが販売しているジョナス・メカスの映像作品27点を収録した8枚組のボックスセット「JONAS MEKAS : DIARIES, NOTES & SKETCHES VOL. 1-8 (Blu-Ray版/DVD版)」が今年度の『ボローニャ復元映画祭(Il Cinema Ritrovato)』で「ベストボックスセット賞」を受賞しました。
映像フォーマット:Blu-Ray、リージョンフリー/DVD PAL、リージョンフリー
各作品の撮影形式:16mmフィルム、ビデオ
制作年:1963~2014年
合計再生時間:1,262分
価格:
Blu-Ray版:18,000円(税込)
DVD版:15,000円(税込)
商品の詳細は3月4日ブログをご参照ください。
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
●ときの忘れものの建築は阿部勤先生の設計です。
建築空間についてはWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。
〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 E-mail:info@tokinowasuremono.com
http://www.tokinowasuremono.com/
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。

ときの忘れものが生前の宮脇先生を迎えて最後の展覧会(宮脇愛子新作展2013)をしたのは、亡くなる前年の12月でした。
1970年代からいろいろご指導いただき、たくさんのエディションをつくりました。
そのいくつかをご紹介します。
宮脇愛子のオリジナル・ドローイングとシルクスクリーン入り小冊子、
『Hommage a Man Ray マン・レイへのオマージュ』(DVD付き)
『Hommage a Man Ray マン・レイへのオマージュ』発行日:2010年9月28日
発行:ときの忘れもの
限定25部(番号・サイン入り)
著者:宮脇愛子、マン・レイ
写真:宮脇愛子、磯崎新
シルクスクリーン刷り:石田了一
デザイン:北澤敏彦
折本形式(蛇腹)、皮ケース入り、表裏各15ページ
サイズ:18.0×14.5cm


・ 宮脇愛子オリジナルドローイング、自筆サイン入り
・ 宮脇愛子が1959年より2010年まで制作したドローイングより、シルクスクリーン13点を挿入
・ 磯崎新撮影「アトリエのマン・レイと宮脇愛子」カラー写真1点貼り込み
・ 宮脇愛子に贈られたマン・レイ作品の画像貼り込み(印刷)
・ マン・レイとの交流と、『うつろひ』への宮脇愛子インタビューDVD(約10分)付き
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※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
シルクスクリーンや銅版のエディションも多数発表しました。
グランドをひいた銅版全体を細かな線描で埋め尽くした連作集『宮脇愛子 銅版画集/1980』の序文は辻邦生先生に書いていただきました。

宮脇愛子《作品 V》
宮脇愛子先生、辻邦生先生への感謝の気持ちを込めて、再録させていただきます。
無限への鏡
辻邦生
私が宮脇愛子さんの作品に深く魅了されたのは、パリの「間」展に展示された『うつろい』 を見たときであった。もちろん他の作品は以前からよく見ていたし、彫刻家その人とは作品を見る前からの知り合いだが、作品の内奥の光に貫かれて、 私自身が変容したかに感じられる強烈な体験は、それ以前にはなかったのである。
『うつろい』は宮脇愛子さんの造型的な語彙である、断面がセクション・ペーパー状になった、金属立体による見事な作品である。私はその前に立った瞬間、そこに平安貴族のみやびな宴を見ているような気がした。「間」展そのものが異国の都会のなかへ突出した日本の伝統美の展覧会であっただけに、そうした伝統性と共鳴し合って、艶なる典雅さを造型した宮脇愛子さんの作品は、ひときわ人々の心を魅惑したのであった。
「それは何といったらいいか、“あらぬもの”とでもよぶべき何か、オスカー・ワイルドのいうすべてのものの背後にある、或るかくされたものの精〉とでもいうべき何かを、つねに見ようとしてきたような気がする」と宮脇愛子さん自身が書いているように、その作品は冷たい硬質な形体を持つ金属体であるにもかかわらず、そこに漂うのは、高貴な官能性と清らかな憂愁感であった。平安貴族の一夜の遊宴のはてにくる夜明けの透明な悲しみに似たものが、ほのかな光となって、そこにたたずんでいたのである。
もしこういう情感を何か具象的なもので描いたらどうだろう。おそらくずっと鮮度の低い、夾雑物の多い感興となり、われわれを遠くに誘うことはないだろう。
それを端的に感じさせるのが宮脇愛子さんの銅版画である。作者は、彫刻においてセクション・ペーパー状の断面を語彙としたように、銅版画においては網目状の形体を語彙としている。この語彙を駆使することによって、作者は、具象では実現できない最も澄明な情感を、その澄んだ透明さのままに形象化してゆくのである。
私は、これらの銅版画のなかに、辻󠄀ヶ花に見られる仄かな幽艶を感じるし、小紋の持つ華やかな繊細さが燃え立っているとも見えるのだが、同時に、初夏の高原の森がみどりに煌めき渡っているさまも感じるのである。
夜、燈火の下で、私はそこにギリシア神話の舞台を見ることがあるし、時には、夕日に赤く反射する黄金色の海原を感じることもある。
つまり宮脇愛子さんのこれらの銅版画の作品は、無限の情感のヴァリエーションを一つの鏡に映したごときものである。 それは〈あらぬもの〉の現前という魔術的な力業によって初めて達成された、言語を絶した境である。それは言葉をかえれば形体の祝祭にめぐり会うことに他ならない。言語を絶するとは、時間を絶すること――すなわち永遠に達することであるのを、われわれはかかる形体の祝祭においてのみ、納得するのである。
(つじ くにお)
1999年2月「磯崎新 新作展」のオープニングの二次会 左から辻佐保子先生、磯崎新先生、辻邦生先生、宮脇愛子先生
左から六角鬼丈先生、植田実先生、綿貫令子、綿貫不二夫

1983年4月26日「ジャン・ベルト・ヴァンニ展」レセプション 宮脇愛子先生(左)と小田襄先生 於・イタリア大使館
●8月13日(日)~8月21(月)は夏季休廊中です。
◆「阿部勤建築で一枚の版画(リトグラフ)を見る」
2023年8月25日(金)~9月2日(土) 11:00-19:00 *日曜・月曜・祝日は休廊
本年1月に亡くなられた阿部勤先生(1936-2023)は2021年11月22日の日付の入ったリトグラフ「中心のある家」を制作されていました。阿部先生が設計された個人住宅Las Casas(2017年からギャラリーときの忘れもの)で、その建築空間を体感していただきながら、遺された版画作品をご覧ください。併せてル・コルビュジエ、安藤忠雄、磯崎新、マイケル・グレイヴス、アントニン・レーモンド、石山修武、六角鬼丈、毛綱毅曠、倉俣史朗、佐藤研吾、杉山幸一郎、光嶋裕介などの建築家の版画・ドローイングを展示します。
●ときの忘れものが販売しているジョナス・メカスの映像作品27点を収録した8枚組のボックスセット「JONAS MEKAS : DIARIES, NOTES & SKETCHES VOL. 1-8 (Blu-Ray版/DVD版)」が今年度の『ボローニャ復元映画祭(Il Cinema Ritrovato)』で「ベストボックスセット賞」を受賞しました。
映像フォーマット:Blu-Ray、リージョンフリー/DVD PAL、リージョンフリー各作品の撮影形式:16mmフィルム、ビデオ
制作年:1963~2014年
合計再生時間:1,262分
価格:
Blu-Ray版:18,000円(税込)
DVD版:15,000円(税込)
商品の詳細は3月4日ブログをご参照ください。
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●ときの忘れものの建築は阿部勤先生の設計です。
建築空間についてはWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。
〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 E-mail:info@tokinowasuremono.com
http://www.tokinowasuremono.com/
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。

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