佐藤研吾のエッセイ「大地について―インドから建築を考える―」第91回
制作の準備と勉強
前稿で、家への興味と記し、ギャラリー各所に立体を布置していくようなアイデアを思いついた。そのあと、そのギャラリー空間を頭に描きながら、ひとまず小さな模型をいくつかつくり、模型同士の関係を検討している。本来ならばまずギャラリー全体を模型化すべきところだったが、残念ながら時間があまり無かったためにいきなり立体の模型を作ってしまったという申し訳ない都合もある。とはいえ、それが返って実際の空間から少しだけ離れて考えることもできるので良かったりもする。
今回は立体それぞれの関係をより意識して考えようとしている。さらには、まだはっきりとはわからないが、複数のカメラを向かい合わせて撮影し合うのではなく、鏡を使ってカメラそれ自体の像を写そうとも考えている。鏡を使った自撮り、、かなり自己言及的で、TikTokのような今のSNSの形式にも通じてしまいそうだが、そのあたりはまだ良くわからない。宮川淳の『鏡・空間・イマージュ』に書かれていることが、断片的にではあるが昔からとても気になっていて、それがある種の創作における起点となるだろうという思惑を抱き続けている。半年前のアートフェア東京で出した「仮面と連担」ではほとんど同じ形の似たような写真機を5台向かい合わせていたが、その続きのトライアルでもある。

(検討模型。線的な向かい合わせの関係から進めている。それぞれのユニットがときの忘れものギャラリーの各所に並ぶことを想定している。)
並行して、ガラスを基材とした写真制作を勉強している。まず、ガラス乾板の薬品をローレライ社から購入して試作をやってみた。ネガは数年前にピンホールカメラで撮影したものを使った。この薬品はどうやらガラスよりも画用紙などのほうがしっかり定着するようである。これによって、印画紙の規格から自由になれるのが自分にはとてもありがたい。ただし引き続き勉強が必要である。

(画用紙に感光剤を塗布した自作印画紙。この場合、刷毛の調整が大きく影響してくる)
その後、ガラス湿板の可能性もあるのではと思い、ガラス湿板のワークショップに参加してみた(Foto Studio Argentoさんのところで)。8×10の写真機を転用した2Lサイズのガラス湿板の撮影を教えてもらい、薬品の取り扱い方や管理の仕方をさまざまに知った。湿板写真は気温にもよるがおおよそ20分程度しか感光時間が無いので、レンズを用いない大型のピンホールカメラに使えるかはまだわからないが、引き続き可能性を考えてみたい。(とはいえ、どこかでレンズを用いた写真機もどこかで考えなければ、とも思っている、。やらなければいけないことはいっぱいある!)

(ガラス湿板の制作途中の様子。これは通常黒い背景紙に当てて飾るものだが、この半透明な状態がかなり面白い(被写体は筆者))
8月からは写真機の制作を開始する予定であるが、引き続き写真の作り方そのものについても勉強しようと思っている。(世の中の小学生がやっている自由研究と同じくらいの熱量で)
(さとう けんご)
■佐藤研吾(さとう けんご)
1989年神奈川県横浜生まれ。2011年東京大学工学部建築学科卒業。2013年早稲田大学大学院建築学専攻修士課程(石山修武研究室)修了。同専攻嘱託研究員を経て、2014年よりスタジオGAYA。2015年よりインドのVadodara Design AcademyのAssistant Professor、および東京大学工学系研究科建築学専攻博士課程在籍。福島・大玉村で藍染の活動をする「歓藍社」所属。インドでデザインワークショップ「In-Field Studio」を主宰。「一般社団法人コロガロウ」設立。2022年3月ときの忘れもので二回目となる個展「佐藤研吾展 群空洞と囲い」を開催。今秋11月には三回目の個展をときの忘れもので開催します。
・佐藤研吾のエッセイ「大地について―インドから建築を考える―」は毎月7日の更新です。
●本日のお勧め作品は佐藤研吾です。
《窓はないわけではない 03》
2024年
ゼラチンシルバープリント
18.0×18.0cm
サインあり
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
●「杣木浩一×宮脇愛子」展カタログを刊行
ときの忘れもの 2024年 25.7×17.2㎝ 24P
執筆:杣木浩一
図版:26点掲載(杣木浩一13点、宮脇愛子13点)
編集:尾立麗子(ときの忘れもの)
デザイン:岡本一宣デザイン事務所
価格:1,100円(税込み)+送料250円
オンラインでも販売中です。
●取り扱い作家たちの展覧会情報(7月ー8月)は7月1日ブログに掲載しました。
●ときの忘れものの建築空間についてはWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。

〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS ときの忘れもの
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
E-mail:info@tokinowasuremono.com
http://www.tokinowasuremono.com/
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
制作の準備と勉強
前稿で、家への興味と記し、ギャラリー各所に立体を布置していくようなアイデアを思いついた。そのあと、そのギャラリー空間を頭に描きながら、ひとまず小さな模型をいくつかつくり、模型同士の関係を検討している。本来ならばまずギャラリー全体を模型化すべきところだったが、残念ながら時間があまり無かったためにいきなり立体の模型を作ってしまったという申し訳ない都合もある。とはいえ、それが返って実際の空間から少しだけ離れて考えることもできるので良かったりもする。
今回は立体それぞれの関係をより意識して考えようとしている。さらには、まだはっきりとはわからないが、複数のカメラを向かい合わせて撮影し合うのではなく、鏡を使ってカメラそれ自体の像を写そうとも考えている。鏡を使った自撮り、、かなり自己言及的で、TikTokのような今のSNSの形式にも通じてしまいそうだが、そのあたりはまだ良くわからない。宮川淳の『鏡・空間・イマージュ』に書かれていることが、断片的にではあるが昔からとても気になっていて、それがある種の創作における起点となるだろうという思惑を抱き続けている。半年前のアートフェア東京で出した「仮面と連担」ではほとんど同じ形の似たような写真機を5台向かい合わせていたが、その続きのトライアルでもある。

(検討模型。線的な向かい合わせの関係から進めている。それぞれのユニットがときの忘れものギャラリーの各所に並ぶことを想定している。)
並行して、ガラスを基材とした写真制作を勉強している。まず、ガラス乾板の薬品をローレライ社から購入して試作をやってみた。ネガは数年前にピンホールカメラで撮影したものを使った。この薬品はどうやらガラスよりも画用紙などのほうがしっかり定着するようである。これによって、印画紙の規格から自由になれるのが自分にはとてもありがたい。ただし引き続き勉強が必要である。

(画用紙に感光剤を塗布した自作印画紙。この場合、刷毛の調整が大きく影響してくる)
その後、ガラス湿板の可能性もあるのではと思い、ガラス湿板のワークショップに参加してみた(Foto Studio Argentoさんのところで)。8×10の写真機を転用した2Lサイズのガラス湿板の撮影を教えてもらい、薬品の取り扱い方や管理の仕方をさまざまに知った。湿板写真は気温にもよるがおおよそ20分程度しか感光時間が無いので、レンズを用いない大型のピンホールカメラに使えるかはまだわからないが、引き続き可能性を考えてみたい。(とはいえ、どこかでレンズを用いた写真機もどこかで考えなければ、とも思っている、。やらなければいけないことはいっぱいある!)

(ガラス湿板の制作途中の様子。これは通常黒い背景紙に当てて飾るものだが、この半透明な状態がかなり面白い(被写体は筆者))
8月からは写真機の制作を開始する予定であるが、引き続き写真の作り方そのものについても勉強しようと思っている。(世の中の小学生がやっている自由研究と同じくらいの熱量で)
(さとう けんご)
■佐藤研吾(さとう けんご)
1989年神奈川県横浜生まれ。2011年東京大学工学部建築学科卒業。2013年早稲田大学大学院建築学専攻修士課程(石山修武研究室)修了。同専攻嘱託研究員を経て、2014年よりスタジオGAYA。2015年よりインドのVadodara Design AcademyのAssistant Professor、および東京大学工学系研究科建築学専攻博士課程在籍。福島・大玉村で藍染の活動をする「歓藍社」所属。インドでデザインワークショップ「In-Field Studio」を主宰。「一般社団法人コロガロウ」設立。2022年3月ときの忘れもので二回目となる個展「佐藤研吾展 群空洞と囲い」を開催。今秋11月には三回目の個展をときの忘れもので開催します。
・佐藤研吾のエッセイ「大地について―インドから建築を考える―」は毎月7日の更新です。
●本日のお勧め作品は佐藤研吾です。
《窓はないわけではない 03》2024年
ゼラチンシルバープリント
18.0×18.0cm
サインあり
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※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
●「杣木浩一×宮脇愛子」展カタログを刊行
ときの忘れもの 2024年 25.7×17.2㎝ 24P執筆:杣木浩一
図版:26点掲載(杣木浩一13点、宮脇愛子13点)
編集:尾立麗子(ときの忘れもの)
デザイン:岡本一宣デザイン事務所
価格:1,100円(税込み)+送料250円
オンラインでも販売中です。
●取り扱い作家たちの展覧会情報(7月ー8月)は7月1日ブログに掲載しました。
●ときの忘れものの建築空間についてはWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。

〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS ときの忘れもの
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
E-mail:info@tokinowasuremono.com
http://www.tokinowasuremono.com/
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
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