ときの忘れものの主力部隊はいまソウルです。
韓国最大の国際アートフェア「KIAF 2010」が始まりました。
亭主はじめ留守部隊はのんびりお土産を待つ、なんてわけありません。
明日11日から始まる「奈良美智24歳×瑛九24歳 画家の出発」展の準備に大童です。
案内状600
◆奈良美智24歳×瑛九24歳 画家の出発
会期=2010年9月11日[土]―18日[土] 
12:00-19:00 *会期中無休

時代を切り開き、新しい表現を提示してきたどんな天才画家にも無名時代があり、彼等は試行錯誤を重ねながら自らのスタイルを獲得してゆきます。
ときの忘れものは1995年の開廊以来、瑛九という日本の近代美術史に屹立する作家をずっと紹介し続けてきました。
連続企画「瑛九展」の第一回展は1996年3月でした。
それ以来、瑛九が48年の生涯で取り組んだ油彩、水彩、コラージュ、フォトデッサン、版画(銅版、リトグラフ、木版)、素描などのジャンル別の展示はもちろん、昨年2009年2月に開催した「第19回瑛九展」では、<時を超えて>と題し、瑛九と時代をともにした難波田龍起、村井正誠、森芳雄、松本竣介、オノサト・トシノブ、三上誠、長谷川三郎、山田光春らの作品を同時に展示し、瑛九の生きた軌跡を追いかけてきました。

1911年生まれの杉田秀夫が、印画紙による新たな表現を模索し100点にのぼるフォトデッサン(フォトグラム)を携えて宮崎から上京し、初めて瑛九と名乗り、銀座の紀伊國屋画廊でフォトデッサンによる初個展を開いたのは1936年(昭和11)、24歳のときでした。

それから半世紀、1959年生まれの奈良美智が名古屋のSpace to Spaceで初めての個展を開き、故郷弘前で初の展覧会(ギャラリー・デネガで二人展)を開いたのが1984年(昭和59)、やはり24歳のときでした。

今回の企画は、半世紀を隔てて、二人が自ら画家として出発したときに制作した作品を展示し、その後の活躍を予感する才能のきらめきをさぐろうとするものです。

本展のためにカタログを刊行しました。
B5判、15ページ、執筆:三上豊、出品作品図版:15点、参考図版:27点)
価格;1,000円(税込、送料無料)

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今回のカタログは僅か15頁の薄いものですが、情報としては重要なデータが入っています。
特に、奈良美智さんの初個展ですが、1984年に名古屋のSpace to Spaceというギャラリーで開催したことはわかっているのですが、肝心の会期が特定されていませんでした。
美術手帖の奈良さん特集はもちろん、奈良さんの各美術館のカタログなど、たくさんの資料を渉猟したのですが、どこにも書いてない!
これには参りました。
小山登美夫さんにうかがっても「わからない」とのこと・・・
間接的な資料ではなく、当時の案内状(一次資料)を探しだすのが、こういうときの基本です。
ネットの時代というのは凄いものですね。恐らく奈良さんのところにも残っていない初個展の案内状の所有者を見つけることができたときは、小躍りしました。
26年前、奈良さんが名古屋で開催して二つの個展の案内状を保管していたのは、「ヒトは猫のペットである」という素敵なブログの主宰者でした。
http://yandrd.exblog.jp/
その顛末を主宰者の by y_and_r_d さんが9日付のブログに書いてくださいましたので、ぜひお読みください。
http://yandrd.exblog.jp/13202622/
美術館の展覧会のカタログというのは99%残ります。古本屋さん探せば何とかなる。
チラシや案内状はほとんどが捨てられて残らない。
一番残らないのがチケットの半券。
今回奈良さんの初個展の案内状をby y_and_r_dさんが所蔵していたのは決して偶然ではなく、「残す」意志を明確にお持ちだったのがよくわかります。
感謝です!

瑛九(Ei-Q)
1911年宮崎生まれ。本名・杉田秀夫。1925年中学を退学し上京、戸塚にある私立・日本美術学校洋画科に入学し、この頃より油絵を描く。15歳で『アトリヱ』『みづゑ』など美術雑誌に評論を執筆。1930年日本美術学校を退学。オリエンタル写真学校に入学し写真の研究を行なう。「フォトグラム」の制作を始め、写真評論を写真雑誌『フォトタイムス』に発表する。1936年印画紙による新しい作品を制作し上京、久保貞次郎と共に画家・長谷川三郎を訪ねる。長谷川と美術評論家・外山卯三郎の協力で、この作品を「フォト・デッサン」と命名、「瑛九(Q Ei)」の名で発表することを決定し、フォトデッサン作品集『眠りの理由』を刊行。1937年自由美術家協会創立に参加。既成の画壇や公募団体を批判し、1951年デモクラート美術家協会を創立。靉嘔、池田満寿夫、磯辺行久、河原温、細江英公ら若い作家たちに大きな影響を与えた。油彩、フォトデッサン、版画などに挑み、独自の世界を生み出す。1960年48歳で永逝。

瑛九1瑛九
《作品-B(アート作品・青)》
1935年油彩(ボード)
29.0x24.0cm(F3号) *久保貞次郎旧蔵
山田光春『私家版・瑛九油絵作品写真集』(1977年刊)No.19所収
久保貞次郎『美術の世界2 瑛九と仲間たち』(1985 冬至書房新社)口絵掲載

瑛九2瑛九
《from "Reason of Sleep"『眠りの理由』より》
1936年 
フォトデッサン(フォトグラム)
26.7x22.0cm 
Ed.40



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奈良 美智(Yoshitomo NARA)
1959年青森県弘前市に生まれる。画家・彫刻家。青森県の高校を卒業後、武蔵野美術大学入学。同大学中退後、愛知県立芸術大学および大学院修了。美術系予備校講師を経て1988-1993年渡独ドイツ国立デュッセルドルフ芸術アカデミーに在籍。1993年現代ドイツを代表するアーティストA.R.ペンクに師事しマイスターシュウラーを取得ケルンに在住し創作活動を展開。1994年からケルンにて制作活動し、2000年8月、ケルンを離れ日本を拠点に創作活動を展開。1995 年名古屋市芸術奨励賞受賞。1998 年カリフォルニア大学ロサンゼルス分校(UCLA)、アメリカにて3ヶ月間の客員教授。2000年 東京在住。2005年から栃木在住。ニューヨーク近代美術館(MoMA)やロサンゼルス現代美術館に作品が所蔵されるなど国際的に活躍し、日本の現代美術の第二世代を代表するひとり。にらみつけるような目の女の子をモチーフにしたドローイングやアクリル絵具による絵画で知られている。
奈良美智1奈良美智
《SANCHAN WITH SHARK"in the room"》
1984年
油彩・キャンバス
130.0x130.0cm
signed  *初個展出品作

奈良美智2奈良美智
《Fire Enjine, with fire fighter》
1984年
油彩・キャンバス 
92.0x73.0cm
signed *初個展出品作

奈良美智3奈良美智
《作品》
1978年(高校時代)
油彩・キャンバス 
38.0x46.0cm 
signed

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では、私たちがなぜ今回、奈良美智さんを展示することになったのかは、次回に書きましょう。

◆ときの忘れものは、9月28日(火)~10月16日(土)「マン・レイと宮脇愛子展」を開催します。
10月1日(金)17時~18時半、宮脇愛子さんを囲んでのレセプションを開催します。ぜひお出かけください。

また10月16日(土)17時より、巌谷國士さんを講師にギャラリー・トークを開催します(*要予約(参加費1,000円/1ドリンク付)
参加ご希望の方は、電話またはメールにてお申し込み下さい。
Tel.03-3470-2631/Mail.info@tokinowasuremono.com