今日の夕方はときの忘れものにお邪魔した。現在開催中なのは元永定正の個展。僕にとっては具体の代表作家としての印象が強い作家なのだけれど、谷川俊太郎氏と何冊か絵本を作成していて、僕より少し年下の人たちにとっては絵本のデザイナーとしての印象が強いのだとか。今回はその絵本と同じ時期の版画が展示されている。
 並んでいる作品はどれも大人が見てもワクワクするようなもの。ゆるキャラっぽいというか抽象的な不思議なデザインだが、色合いや形の確かさなどが素晴らしく、絵本のイラストとは思えないような端正な緊張感も伝わってくる。例えば小児科医院のロビーにこういう作品が置いてあったらすごく似合うだろうなー。版画とは思えないような緻密な質感も素晴らしく、眼鏡を外して作品に顔を近づけしみじみ見入ってしまった。
 お話を伺うと、具体の代表作家としてではなく子供のころ見た絵本の作家さんの展示として見に来る人の方が多いのだとか。いいなー、そういうの。幅広い層にお勧めです。

(林光一郎さんのブログLuv Pop TYO (Pop U NYC跡地)より)

元永定正 もこもこワールド」展は昨日終了いたしました。
いつもときの忘れものの企画展は静かに始まり、何事も無く静かに終了するのがパターンでしたが、今回ばかりはたくさんのご注文、お買い上げをいただき、最終日までにぎわいが続きました。
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玄関でお客さまをお迎えする招き猫、手前の小像たちは昨秋の沖縄旅行で買ってきたシーサー。
ともども協力して福を招いてくれたようです(感謝!)。

ときの忘れものとしては初めてのまとまった元永版画の展示でしたが、もともとは私たちが30数年前の1977~1984年にかけてエディションした作品群を冬眠からたたき起こしてご覧にいれた展覧会です。
「懐かしいねえ」と往時を思い出されるお客様ももちろんいらしゃいましたが、むしろお子さん連れでいらした若いご夫婦の目立つ展覧会でした。
1977年初版の谷川俊太郎さんとの絵本「もこ もこもこ」をほとんどの方がお持ちでした。
具体」は知らなくても「もこ もこもこ」で育った方がたくさんいる。30年、一世代がまわったことで新しいファンが出てきたのでしょう、画商にとっては心強いですね。
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亭主の孫たちも来廊してくれました。

作家の元永定正先生は2011年に亡くなられてしまいましたが、これらの版画を刷った石田了一さん(シルクスクリーンの工房を主宰)は健在です。
石田了一さん
2015年6月6日
自分で刷った元永作品の前で、石田了一さん。
左が「ふたつならんで」、右が「かさねいろだま」。ともに1984年の制作です。

parco16石田了一
32年前の1983年6月7日
自分で刷ったウォーホルの「KIKU」の前で、石田了一さん。
渋谷パルコ「アンディ・ウォーホル全国展」オープニングにて。
この年の石田さんは磯崎新、ウォーホル、そして元永定正の刷りで獅子奮迅の働きでした。

ご来場の皆さん、そしてお買い上げいただいたお客様には心より御礼申し上げます。
元永論の再録掲載を快くお許しくださった谷川俊太郎さん、高橋亨さん、ありがとうございました。
展覧会は終わりましたが、作品はいつでも画廊でご覧になれます。ぜひお問い合わせください。

今日と明日は画廊はお休みです。
明後日からは、スタッフたちはお買い上げいただいた方への納品作業にかかります。お手元に届くまで今しばらくお待ちください。

さて、このブログは豪華執筆陣のおかげで一年365日、毎日更新しています。
毎日の訪問者やどの記事に人気があるかなどの「アクセス解析」を見ると、この数週間、異変が起こっています。
以前は、人気記事の1~3位までは、大竹昭子さん、小林美香さん、井桁裕子さんの女性御三家が多少順位の入れ替えはあるもの不動のベスト3でした。
ところが数週間前から笹沼俊樹さんの「現代美術コレクターの独り言」 が首位に躍り出るや、2位以下をダブルスコアの圧倒的な差で引き離してダントツの1位を独走しています。
個別の記事云々ということではなく、「リンク元」でもものすごい数字が出ており、どうやら笹沼さんのエッセイ(毎月8日更新)だけは必ず読むという「定期購読者」が増えているらしい。
40年来の顧客である笹沼さんに連載を懇願した亭主としては、この異変はとても嬉しい!

連載が始まった当初は、何を勘違いされたのか「くだらない記事ですね。 お金が欲しいならユウチョでいいでしょう? ブログ主の見識が疑われますよ」とか、「ヨーロッパのパトロナージュ文化など、お金と美術は切り離せないものと思いますが、このようなえげつない投機的視点からの記事は不快です。これは美術の話ではなく金の話です」というような、まったくどこをどう読めばそんな「えげつない」感想が出てくるのか、的外れな投稿もありました。
しかし回を重ねるごとに淡々と冷静にコレクターとしての生き方を述べる笹沼さんの志が伝わってきたのでしょう、まともな反響が寄せられるようになりました。ありがたいことです。

もちろん、他の執筆者の皆さんのご協力にはほんとうに感謝しています。
引き続き皆さんのご愛読をお願いいたします。
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最後に、版元として会心の元永作品2点を挙げて、締めといたします。
ともに残部1部となりました。
01元永定正 Sadamasa MOTONAGA
《オレンジの中で》
1977年
シルクスクリーン(刷り:石田了一)
イメージサイズ:47.0×61.0cm
シートサイズ:50.0×65.0cm
Ed.100 サインあり

50元永定正 Sadamasa MOTONAGA
《四角いピンク》
1979年
シルクスクリーン(刷り:石田了一)
イメージサイズ:10.0×10.0cm
シートサイズ:15.0×15.0cm
Ed.250 サインあり

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