瀧口修造とマルセル・デュシャン(補遺)
土渕信彦
来る2017年はマルセル・デュシャンの生誕130年に当たるので、これを記念して、1月7日(土)から2月12日(日)まで、京都のギャラリーozasa kyotoで「瀧口修造・岡崎和郎二人展」を開催することとなった。この場をお借りしてご紹介したい。
会 期 … 2017年1月7日(土)~2月12日(日)
開廊日時 … 水~日 12:00~19:00
休 廊 日 … 月・火(1月9日祝日は開廊)
会場… ozasa kyoto
〒602-8216 京都市上京区堀川今出川南 西陣織会館 西館 207(西陣産業会館)
tel : 075-417-4041
図1
「瀧口修造・岡崎和郎二人展」案内状
この展覧会は2007年から4回開催してきた私のコレクションによる「瀧口修造の光跡展」の第5回展に当たる。30年ほど前から、点数はそれほど多くないが、岡崎和郎の作品も所蔵してきた私としては、2009年の第1回展の開催当時から「いずれは瀧口・岡崎二人展を」と念願し、岡崎先生も期待してくださっていた。東京で開催する話が進みかけ、先年亡くなられたみすず書房の小尾俊人さんをはじめ、何人かの方々をお煩わせしたこともあったが、具体化までには至らなかった。このたび、畏友のマン・レイ・イスト石原輝雄氏の口添えにより、また、ときの忘れもの、横田茂ギャラリーのご協力も得て、京都の画廊主小笹義朋氏がozasa kyotoの企画展として開催してくださることになった。マルセル・デュシャン生誕130年に実現できるのだから、幸運というほかはない。
展示作品は40点で、主なものは以下のとおり。
1.瀧口修造『マルセル・デュシャン語録』A版(著者本10部の第6番)、1968年(図2)
2.瀧口修造・岡崎和郎「檢眼圖」、1977年(図3)
3.瀧口修造 ドローイング「ローズ・セラヴィのために」、インク・水彩、1968年(図4)
4.瀧口修造 デカルコマニー for Okazaki、グァッシュ、1966年(図5)
5.瀧口修造 ロトデッサン ”cercle vicieux”、鉛筆・紙、1971年(図6)
6.瀧口修造 フィンガープリント、1968年(図7)
7.岡崎和郎 ”Giveaway Pack 2”、ミクストメディア、1968/1977年(図8)
8.岡崎和郎「瀧口修造―Arrow Finger」、ブロンズ・焼き付け塗装、1968/1998年(図9)
9.岡崎和郎 ”Snap Shot of Mr. Shuzo Takiguchi ‘Arrow Finger’”、スチレンボード・紙、1969/1996年(図10)
10.岡崎和郎「ウィリアム・テルのリンゴ」、樹脂・彩色、2008年
11.岡崎和郎 ”HISASHI”、ブロンズ、1985年
図2
瀧口修造『マルセル・デュシャン語録』A版
図3
瀧口修造・岡崎和郎「檢眼圖」
図4
瀧口修造 ドローイング「ローズ・セラヴィのために」
図5
デカルコマニー for Okazaki
図6
瀧口修造 ロトデッサン”cercle vicieux”
図7
瀧口修造 フィンガープリント
図8
岡崎和郎 ”Giveaway Pack 2”
図9
岡崎和郎 ”Giveaway Pack 2”(外側)
図10
岡崎和郎「瀧口修造―Arrow Finger」
図11
岡崎和郎”Snap Shot of Mr. Shuzo Takiguchi ‘Arrow Finger’”
関連イベントとして、以下を予定している。
1.1月14日(土)15:00~16:30 岡崎和郎・平芳幸浩対談「オブジェをめぐって」
2.1月28日(土)15:00~16:30 瀧口修造講演「美というもの」(1962年の富山高校における講演録音再生) 土渕信彦解説
3.2月 4日(土)15:00~16:30 土渕信彦ギャラリー・トーク「瀧口修造とマルセル・デュシャン」
なお、ちょうど北九州市立美術館分館では、「岡崎和郎―見立ての手法」展も開催されているので(千葉市美術館からの巡回)ご紹介しておきたい。同展と併せてこの京都展もご高覧いただければ幸いである。
図12
千葉市美術館「岡崎和郎 見立ての手法」展リーフレット
図13
北九州市立美術館分館「岡崎和郎 見立ての手法」展リーフレット
以下、プレス・リリース本文を転載する。
「ozasa kyotoでは、来る2017年がマルセル・デュシャン生誕130年に当たるのを記念し、1月7日(土)から2月12日(日)まで「瀧口修造・岡崎和郎二人展」を開催いたします。
マルセル・デュシャン(1887-1968)は、改めて申し上げるまでもなく現代美術の開拓者であり、20世紀の最も重要なアーティストの一人にも挙げられますが、こうした評価が確立する前の1930年代から、瀧口修造(1903-79)はデュシャンに深い関心を寄せ、たびたび論じてきました。58年の訪欧中に本人と出会ってからは文通や著書の献呈などの交流が続き、63年頃に構想した架空の「オブジェの店」に対して、デュシャンから若き日の女性変名「ローズ・セラヴィ」を贈られています。命名への礼状に同封して、瀧口は自作のロトデッサン(モーターによる回転線描)を一点贈ったほか、返礼として『マルセル・デュシャン語録』(1968年)を刊行しました。さらに代表作「彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁、さえも」の「眼科医の証人」の部分を立体化したマルチプル「檢眼圖」(1977年)も製作しています。デュシャンとその作品の研究・考証は、後半生の瀧口にとって最も重要な課題の一つとなっていたといっても、けっして過言ではないでしょう。
岡崎和郎(1930-)もデュシャンに触発されている美術家の一人です。1950年代から一貫してオブジェに取り組み、86歳を超えた現在も、「御物補遺」 ”Who’s Who” ”HISASHI”の各シリーズなどを精力的に制作している岡崎は、レディメードのオブジェの創始者デュシャンに関連する作品も、「ハート」(1962年)や「窓」(1965年)をはじめ、数多く制作してきました。50年代から岡崎の仕事を評価していた瀧口が、前出『マルセル・デュシャン語録』の製作協力者の一人に岡崎を加え、前出「檢眼圖」の実際の製作を岡崎に委ねたのも当然と思われます。学生時代から瀧口の『近代藝術』を熟読していた岡崎は、「瀧口修造―Arrow Finger」(1968年)など、瀧口に因む作品も制作しています。一方、瀧口も66年にデカルコマニー作品を岡崎に贈呈し、『岡崎和郎の作品 1962-1976』(1977年)にも序詩「彼の微笑、それから」を寄せています。二人の絆は、デュシャンに対する関心や敬意を共有することを通じ、いっそう強固なものとなっていたのは間違いないでしょう。
本展は『マルセル・デュシャン語録』「檢眼圖」をはじめ、瀧口、岡崎のデュシャンに関連する作品など約40点を展示し、生誕130年の幕開けを慶賀するとともに、改めてデュシャンに対する二人の傾倒ぶりや、二人の絆の深さを辿ろうとするものです。なお、展示作品はいずれも土渕信彦氏のコレクションであり、本展は2009年から継続されてきた「瀧口修造の光跡」展の第5回に当たるものであることを申し添えます。末筆ながら、開催にご協力いただいた皆様に感謝申し上げます。
協力|土渕信彦、ときの忘れもの、横田茂ギャラリー」
上のプレス・リリースで言及されている瀧口修造の岡崎宛て序詩「彼の微笑、それから」は、以下のとおりである。
彼の微笑、それから
岡崎和郎に
彼自身がひらく扉、
彼自身にひらかれる扉、
ふたつの扉が完全に符合したとすると、
ふたつの扉はその瞬間消滅し、
ただ非常に薄い接触面だけが
残って見えるかも知れぬ。
信じる信じないは別だが。
★
もしふたつのハートが互いに抱き合ったとする
(最高に幸福な状態で)、
すると外側からは見えなくなってしまう。
(鋳型の雌雄を区別すること無用。)
(ハートはハートの鋳型で鋳られる。)
★
⇨ OKAZAKI KAZUO
IKAZAKO OUZAK ⇦
こうして見ると彼の姓名が
そのまま透明な箱に容れられたよう、
むしろそのままで奇妙な鏡の箱に見える。
彼のGIVEAWAYSのひとつか、
これは特に自家用の?
★
彼の微笑、それから彼の微苦笑… トポロジカルに?
★
人には人の分身があり、
目にはまったく見えないもの、
透明のゆえに。
それを見ようとすること。
裏返しにするのが唯一の方法であるか。
★
岡崎和郎は一組の作品を箱におさめて
GIVEAWAY PACKと命名した。
物にひとつの道をつけてやる、
物にそれぞれの道をつけてやる、
それが彼自身のやりかた。
瀧口修造
(つちぶち のぶひこ)
●本日のお勧め作品は、瀧口修造です。

瀧口修造
『マルセル・デュシャン語録』
1968年
本、版画とマルティプル
外箱サイズ:36.7×29.8×5.0cm
本サイズ:33.1×26.0cm
サインあり
A版(限定部数50部)
発行:東京ローズ・セラヴィ
刊行日:1968年7月28日
販売:南画廊
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
●本日の瑛九情報!
~~~
昨日12月15日の瑛九情報では、<瑛九ほど、学芸員に愛されている画家はいないのではないか>と書き、日本中の多くの美術館が瑛九展を開いていることを賞賛しました。
1996年の宮崎県立美術館開館記念「魂の抒情詩ー瑛九展」図録の192~193ページには<没後の主要な展覧会出品歴>として1960年~1994年にかけて全国及び海外の美術館、ギャラリーで開催された瑛九関連の120余の展覧会の開催記録が掲載されています。当時の学芸員たちの労作です。
これをおそらくは踏襲して、2011年に宮崎県立美術館、埼玉県立近代美術館、うらわ美術館の三館で開催された「生誕100年記念 瑛九展」図録の228~229ページにも<没後の展覧会歴>として1960年~2010年にかけて全国及び海外の美術館、ギャラリーで開催された瑛九関連の展覧会の開催記録が掲載されています。
そのリストを一覧すると<西高東低>、圧倒的に東京以西での開催が多いのは当然としても、早くから瑛九をコレクションし、幾度も幾度も瑛九の顕彰展を開催してきたある美術館の名がすっぽりと抜け落ちています。
「瑛九の展覧会は21世紀に入ってからだけでも、渋谷区立松涛美術館(2004)、国立国際美術館(2005)、筑波大学(2010)、宮崎県立美術館・埼玉県立近代美術館・うらわ美術館(2011)、栃木県立美術館(2014)などで開催。人気なのです (【公式】東京国立近代美術館 広報 @MOMAT60th ・ 11月19日 twitterより)」とつぶやいた近美の企画者すらもどうも気づいていません。
1974年から近年では2010年まで、実に7回もの瑛九展を開催してきた名門美術館があります。
山形県酒田の本間美術館です。
詳しくは明日。~~~
<瑛九 1935-1937 闇の中で「レアル」をさがす>展が東京国立近代美術館で始まりました(11月22日~2017年2月12日)。ときの忘れものは会期終了まで瑛九について毎日発信します。
土渕信彦
来る2017年はマルセル・デュシャンの生誕130年に当たるので、これを記念して、1月7日(土)から2月12日(日)まで、京都のギャラリーozasa kyotoで「瀧口修造・岡崎和郎二人展」を開催することとなった。この場をお借りしてご紹介したい。
会 期 … 2017年1月7日(土)~2月12日(日)
開廊日時 … 水~日 12:00~19:00
休 廊 日 … 月・火(1月9日祝日は開廊)
会場… ozasa kyoto
〒602-8216 京都市上京区堀川今出川南 西陣織会館 西館 207(西陣産業会館)
tel : 075-417-4041
図1「瀧口修造・岡崎和郎二人展」案内状
この展覧会は2007年から4回開催してきた私のコレクションによる「瀧口修造の光跡展」の第5回展に当たる。30年ほど前から、点数はそれほど多くないが、岡崎和郎の作品も所蔵してきた私としては、2009年の第1回展の開催当時から「いずれは瀧口・岡崎二人展を」と念願し、岡崎先生も期待してくださっていた。東京で開催する話が進みかけ、先年亡くなられたみすず書房の小尾俊人さんをはじめ、何人かの方々をお煩わせしたこともあったが、具体化までには至らなかった。このたび、畏友のマン・レイ・イスト石原輝雄氏の口添えにより、また、ときの忘れもの、横田茂ギャラリーのご協力も得て、京都の画廊主小笹義朋氏がozasa kyotoの企画展として開催してくださることになった。マルセル・デュシャン生誕130年に実現できるのだから、幸運というほかはない。
展示作品は40点で、主なものは以下のとおり。
1.瀧口修造『マルセル・デュシャン語録』A版(著者本10部の第6番)、1968年(図2)
2.瀧口修造・岡崎和郎「檢眼圖」、1977年(図3)
3.瀧口修造 ドローイング「ローズ・セラヴィのために」、インク・水彩、1968年(図4)
4.瀧口修造 デカルコマニー for Okazaki、グァッシュ、1966年(図5)
5.瀧口修造 ロトデッサン ”cercle vicieux”、鉛筆・紙、1971年(図6)
6.瀧口修造 フィンガープリント、1968年(図7)
7.岡崎和郎 ”Giveaway Pack 2”、ミクストメディア、1968/1977年(図8)
8.岡崎和郎「瀧口修造―Arrow Finger」、ブロンズ・焼き付け塗装、1968/1998年(図9)
9.岡崎和郎 ”Snap Shot of Mr. Shuzo Takiguchi ‘Arrow Finger’”、スチレンボード・紙、1969/1996年(図10)
10.岡崎和郎「ウィリアム・テルのリンゴ」、樹脂・彩色、2008年
11.岡崎和郎 ”HISASHI”、ブロンズ、1985年
図2瀧口修造『マルセル・デュシャン語録』A版
図3瀧口修造・岡崎和郎「檢眼圖」
図4瀧口修造 ドローイング「ローズ・セラヴィのために」
図5デカルコマニー for Okazaki
図6瀧口修造 ロトデッサン”cercle vicieux”
図7瀧口修造 フィンガープリント
図8岡崎和郎 ”Giveaway Pack 2”
図9岡崎和郎 ”Giveaway Pack 2”(外側)
図10岡崎和郎「瀧口修造―Arrow Finger」
図11岡崎和郎”Snap Shot of Mr. Shuzo Takiguchi ‘Arrow Finger’”
関連イベントとして、以下を予定している。
1.1月14日(土)15:00~16:30 岡崎和郎・平芳幸浩対談「オブジェをめぐって」
2.1月28日(土)15:00~16:30 瀧口修造講演「美というもの」(1962年の富山高校における講演録音再生) 土渕信彦解説
3.2月 4日(土)15:00~16:30 土渕信彦ギャラリー・トーク「瀧口修造とマルセル・デュシャン」
なお、ちょうど北九州市立美術館分館では、「岡崎和郎―見立ての手法」展も開催されているので(千葉市美術館からの巡回)ご紹介しておきたい。同展と併せてこの京都展もご高覧いただければ幸いである。
図12千葉市美術館「岡崎和郎 見立ての手法」展リーフレット
図13北九州市立美術館分館「岡崎和郎 見立ての手法」展リーフレット
以下、プレス・リリース本文を転載する。
「ozasa kyotoでは、来る2017年がマルセル・デュシャン生誕130年に当たるのを記念し、1月7日(土)から2月12日(日)まで「瀧口修造・岡崎和郎二人展」を開催いたします。
マルセル・デュシャン(1887-1968)は、改めて申し上げるまでもなく現代美術の開拓者であり、20世紀の最も重要なアーティストの一人にも挙げられますが、こうした評価が確立する前の1930年代から、瀧口修造(1903-79)はデュシャンに深い関心を寄せ、たびたび論じてきました。58年の訪欧中に本人と出会ってからは文通や著書の献呈などの交流が続き、63年頃に構想した架空の「オブジェの店」に対して、デュシャンから若き日の女性変名「ローズ・セラヴィ」を贈られています。命名への礼状に同封して、瀧口は自作のロトデッサン(モーターによる回転線描)を一点贈ったほか、返礼として『マルセル・デュシャン語録』(1968年)を刊行しました。さらに代表作「彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁、さえも」の「眼科医の証人」の部分を立体化したマルチプル「檢眼圖」(1977年)も製作しています。デュシャンとその作品の研究・考証は、後半生の瀧口にとって最も重要な課題の一つとなっていたといっても、けっして過言ではないでしょう。
岡崎和郎(1930-)もデュシャンに触発されている美術家の一人です。1950年代から一貫してオブジェに取り組み、86歳を超えた現在も、「御物補遺」 ”Who’s Who” ”HISASHI”の各シリーズなどを精力的に制作している岡崎は、レディメードのオブジェの創始者デュシャンに関連する作品も、「ハート」(1962年)や「窓」(1965年)をはじめ、数多く制作してきました。50年代から岡崎の仕事を評価していた瀧口が、前出『マルセル・デュシャン語録』の製作協力者の一人に岡崎を加え、前出「檢眼圖」の実際の製作を岡崎に委ねたのも当然と思われます。学生時代から瀧口の『近代藝術』を熟読していた岡崎は、「瀧口修造―Arrow Finger」(1968年)など、瀧口に因む作品も制作しています。一方、瀧口も66年にデカルコマニー作品を岡崎に贈呈し、『岡崎和郎の作品 1962-1976』(1977年)にも序詩「彼の微笑、それから」を寄せています。二人の絆は、デュシャンに対する関心や敬意を共有することを通じ、いっそう強固なものとなっていたのは間違いないでしょう。
本展は『マルセル・デュシャン語録』「檢眼圖」をはじめ、瀧口、岡崎のデュシャンに関連する作品など約40点を展示し、生誕130年の幕開けを慶賀するとともに、改めてデュシャンに対する二人の傾倒ぶりや、二人の絆の深さを辿ろうとするものです。なお、展示作品はいずれも土渕信彦氏のコレクションであり、本展は2009年から継続されてきた「瀧口修造の光跡」展の第5回に当たるものであることを申し添えます。末筆ながら、開催にご協力いただいた皆様に感謝申し上げます。
協力|土渕信彦、ときの忘れもの、横田茂ギャラリー」
上のプレス・リリースで言及されている瀧口修造の岡崎宛て序詩「彼の微笑、それから」は、以下のとおりである。
彼の微笑、それから
岡崎和郎に
彼自身がひらく扉、
彼自身にひらかれる扉、
ふたつの扉が完全に符合したとすると、
ふたつの扉はその瞬間消滅し、
ただ非常に薄い接触面だけが
残って見えるかも知れぬ。
信じる信じないは別だが。
★
もしふたつのハートが互いに抱き合ったとする
(最高に幸福な状態で)、
すると外側からは見えなくなってしまう。
(鋳型の雌雄を区別すること無用。)
(ハートはハートの鋳型で鋳られる。)
★
⇨ OKAZAKI KAZUO
IKAZAKO OUZAK ⇦
こうして見ると彼の姓名が
そのまま透明な箱に容れられたよう、
むしろそのままで奇妙な鏡の箱に見える。
彼のGIVEAWAYSのひとつか、
これは特に自家用の?
★
彼の微笑、それから彼の微苦笑… トポロジカルに?
★
人には人の分身があり、
目にはまったく見えないもの、
透明のゆえに。
それを見ようとすること。
裏返しにするのが唯一の方法であるか。
★
岡崎和郎は一組の作品を箱におさめて
GIVEAWAY PACKと命名した。
物にひとつの道をつけてやる、
物にそれぞれの道をつけてやる、
それが彼自身のやりかた。
瀧口修造
(つちぶち のぶひこ)
●本日のお勧め作品は、瀧口修造です。

瀧口修造
『マルセル・デュシャン語録』
1968年
本、版画とマルティプル
外箱サイズ:36.7×29.8×5.0cm
本サイズ:33.1×26.0cm
サインあり
A版(限定部数50部)
発行:東京ローズ・セラヴィ
刊行日:1968年7月28日
販売:南画廊
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
●本日の瑛九情報!
~~~
昨日12月15日の瑛九情報では、<瑛九ほど、学芸員に愛されている画家はいないのではないか>と書き、日本中の多くの美術館が瑛九展を開いていることを賞賛しました。
1996年の宮崎県立美術館開館記念「魂の抒情詩ー瑛九展」図録の192~193ページには<没後の主要な展覧会出品歴>として1960年~1994年にかけて全国及び海外の美術館、ギャラリーで開催された瑛九関連の120余の展覧会の開催記録が掲載されています。当時の学芸員たちの労作です。
これをおそらくは踏襲して、2011年に宮崎県立美術館、埼玉県立近代美術館、うらわ美術館の三館で開催された「生誕100年記念 瑛九展」図録の228~229ページにも<没後の展覧会歴>として1960年~2010年にかけて全国及び海外の美術館、ギャラリーで開催された瑛九関連の展覧会の開催記録が掲載されています。
そのリストを一覧すると<西高東低>、圧倒的に東京以西での開催が多いのは当然としても、早くから瑛九をコレクションし、幾度も幾度も瑛九の顕彰展を開催してきたある美術館の名がすっぽりと抜け落ちています。
「瑛九の展覧会は21世紀に入ってからだけでも、渋谷区立松涛美術館(2004)、国立国際美術館(2005)、筑波大学(2010)、宮崎県立美術館・埼玉県立近代美術館・うらわ美術館(2011)、栃木県立美術館(2014)などで開催。人気なのです (【公式】東京国立近代美術館 広報 @MOMAT60th ・ 11月19日 twitterより)」とつぶやいた近美の企画者すらもどうも気づいていません。
1974年から近年では2010年まで、実に7回もの瑛九展を開催してきた名門美術館があります。
山形県酒田の本間美術館です。
詳しくは明日。~~~
<瑛九 1935-1937 闇の中で「レアル」をさがす>展が東京国立近代美術館で始まりました(11月22日~2017年2月12日)。ときの忘れものは会期終了まで瑛九について毎日発信します。
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