frgmのエッセイ「ルリユール 書物への偏愛」第45回

ワークショップについて(2) <開催編>


レ・フラグマン・ドゥ・エムを結成してから、これまで年に1、2回のペースで展覧会をしていく中で、色々な方にお越しいただき、お話をする機会にも恵まれ、とてもいい経験になりました。と同時に、改めて西洋の文化であるルリユールの認知度の低さにしょんぼりたのも事実です。私たちの作品もさることながら、原点に戻ってもっと集中的にルリユールの構造や歴史にも興味を持って知っていただきたく思い、新たにワークショップを活動に組み込みました。私自身も色々とワークショップに参加してきたので、その経験も生かしつつ、受講する方々の要望に少しでも多く答えられるようにと心がけてやってきました。

グループでの初めてのワークショップは、ギャラリー册での展覧会のイベントとして企画した、表紙に羊皮紙を使ったのりを使わないオランダ式製本でした。
workshop1


そして、財団法人東洋文庫でのアカデミア講座、練馬区立美術館での講座と続きました。担当の学芸員の方々にはルリユールに興味を持っていただき、本当に嬉しかったです。
いずれもバックグラウンドとして、本の歴史のレクチャーから始め、ルリユール本来の大切な要素である、「綴じる」という工程に重点を置きつつ、実際に参加者の方々が自分でも素材を変えて応用できるものを提供してきました。
workshop2


私個人では、革製しおり作り(東洋文庫アカデミア講座)をはじめ、個人で活動している製本家の方からもお話をいただき、革製の手帳の仕上げとして鉛活字を使って年号を押したり、革の小箱に装飾をつけるなどの箔押しのワークショップを何度か開催してきました。
フラグムのワークショップでは、「綴じる製本」に加えて、よりスムーズに作業を進められるように、オランダ式製本やリンクステッチなどなるべく「のりを使わない」ルリユールという制限を設けて考えてきましたが、箔押しの場合は何よりもまず最初に環境的な制限(エアコンの風があたる、手元に光が足りないなど)があるので、参加者には必然的に苦労をかけてしまうことも多かったです。加えて、電熱器の温度や花型の押し具合など、言葉では言い表せない作業が大半をしめるので、ワークショップが終わるたびに参加者にうまく伝わったかしら、満足してくれたかしら、と不安になることもしばしばありました。
しかし、ほとんどの方が初めての箔押し体験にも関わらず、みなさん手先が器用でいらっしゃって、”路頭に迷う”ことはあまりありませんでした。

今後も、ルリユール・箔押しの”布教活動”を前進あるのみでしていきたいと思っております。

(文:中村美奈子
中村(大)のコピー


●作品紹介~中村美奈子制作
nakamura8-文鎮中村美奈子「革装文鎮」
山羊革(外側)
鉄塊(内側)
金箔・パラジウム箔
2017年制作
32x32x32(中央・赤)、28x28x28(左こげ茶・右黄土色)
瀧口修造展に向けて製作しました。


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●ルリユール用語集
ルリユールには、なじみのない用語が数々あります。そこで、frgmの作品をご覧いただく際の手がかりとして、用語集を作成しました。

本の名称
01各部名称(1)天
(2)地
(3)小口(前小口)
(4)背
(5)平(ひら)
(6)見返し(きき紙)
(7)見返し(遊び紙)
(8)チリ
(9)デコール(ドリュール)
(10)デコール(ドリュール)


額縁装
表紙の上下・左右四辺を革で囲い、額縁に見立てた形の半革装(下図参照)。

角革装
表紙の上下角に三角に革を貼る形の半革装(下図参照)。

シュミーズ
表紙の革装を保護する為のジャケット(カバー)。総革装の場合、本にシュミーズをかぶせた後、スリップケースに入れる。

スリップケース
本を出し入れするタイプの保存箱。

総革装
表紙全体を革でおおう表装方法(下図参照)【→半革装】。

デコール
金箔押しにより紋様付けをするドリュール、革を細工して貼り込むモザイクなどの、装飾の総称。

二重装
見返しきき紙(表紙の内側にあたる部分)に革を貼る装幀方法。

パーチメント
羊皮紙の英語表記。

パッセ・カルトン
綴じ付け製本。麻紐を綴じ糸で抱き込むようにかがり、その麻紐の端を表紙芯紙に通すことにより、ミゾのない形の本にする。
製作工程の早い段階で本体と表紙を一体化させ、堅固な構造体とする、ヨーロッパで発達した製本方式。

半革装
表紙の一部に革を用いる場合の表記。三種類のタイプがある(両袖装・額縁装・角革装)(下図参照)【→総革装】。
革を貼った残りの部分は、マーブル紙や他の装飾紙を貼る。

夫婦函
両面開きになる箱。総革装の、特に立体的なデコールがある本で、スリップケースに出し入れ出来ない場合に用いる。

ランゲット製本
折丁のノドと背中合わせになるように折った紙を、糸かがりし、結びつける。背中合わせに綴じた紙をランゲットと言う。
全ての折丁のランゲットを接着したあと、表装材でおおい、装飾を施す。和装本から着想を得た製本形態(下図参照)。

両袖装
小口側の上下に亘るように革を貼る形の半革装(下図参照)。

様々な製本形態
両袖装両袖装


額縁装額縁装


角革装角革装


総革装総革装


ランゲット装ランゲット製本


●本日のお勧め作品は、ル・コルビュジエです。
20180703_corbusier_30ル・コルビュジエ
《雄牛#6》
1964年
リトグラフ
イメージサイズ:60.0×52.0cm
シートサイズ:71.7×54.0cm
Ed.150  サインあり

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*画廊亭主敬白
石原氏のブログ拝読、もうはや達人ですね。
私もあのように読んで楽しい文章を書きたいものです。

(20180702/土渕信彦さんのメールより)>

銀座の「関根伸夫展」(ギャラリーせいほう)に続き、京都の「瀧口修造・宮脇愛子 ca.1960」展(ART OFFICE OZASA)が大団円を迎えました。
瀧口修造宮脇愛子関根伸夫の三人の秀作が東西で展示され、それを味わう幸せを共有できたのは嬉しいことでした。
長生きしてよかった。
蟹座の亭主は昨日2日に73歳を迎えました。
ちょうど近くの駒込富士神社の山開祭(6月30日万燈まつり、7月1日が例祭、昨日2日は納め)があり二人して感謝の気持ちをこめてお参りしてきました(御神籤の結果は後日公開)。
少年時代は標高800mを超える高原地帯に育ち、高校は群馬の商都高崎で過ごしました。マンドリンに明け暮れた3年間でしたが、まさか将来画商の道に進むとは夢にも思いませんでした。
15歳のときにめぐり合った井上房一郎さん、やがて井上さんの導きで久保貞次郎先生を知り、その教え子の社長と結婚し、現代版画センターの波乱の十年に巻き込みました。その始末を終え、社長が青山に「ときの忘れもの」を開いたのが1995年でした(亭主は一従業員であります)。
新天地駒込で、これからも皆さんに喜んでいただける展覧会を(当たるか当たらないかはわかりませんが)企画して行きたいと考えています。
どうぞご贔屓にしてください。

◆frgmメンバーによるエッセイ「ルリユール 書物への偏愛」は毎月3日の更新です。

●ときの忘れものは昨年〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
阿部勤設計の新しい空間についてはWEBマガジン<コラージ12月号18~24頁>に特集されています。
2018年から営業時間を19時まで延長します。
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
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