ジョナス・メカス WEB展


Web展第一弾を公開します。
VTRにはセバスチャン・メカスさんの許可をいただき特別にメカスさんの映画を使用させていただきました。展覧会の様子と合わせてご覧ください。
また、VTR中の映像作品のオリジナル版は、ジョナス・メカスさんホームページのアーカイブ(http://jonasmekas.com/40/)からご覧いただけます。
*本日は特別企画として、メカスさんの著書をお買い上げ先着5名様にメカスさん自筆サイン入りカードプレゼントがあります。

近日中にVTR第二弾を公開します。翻訳家で「メカス日本日記の会」メンバーの木下哲夫さんにジョナス・メカスさんについてインタビューさせていただきました。メカスさんとの出会いや「メカス日本日記の会」設立の経緯、メカス映画のフィルムの保管について、またメカスさんの書籍から印象に残った言葉や好きなメカス映画など、たくさんの質問に答えていただきましたので、公開を楽しみにお待ちください。


ジョナス・メカス 「富士山へのみちすがら」
リトアニアのパーカッションの調べに乗せて
(再録)

木下哲夫


メカスさんは1983年、1991年、1996年、2005年に来日しました。『富士山への道すがら、わたしが見たものは…』は1983年と1991年に日本で撮影したフィルムを編集し、1996年の来日時に土産としてもってきてくれたものです。

メカスさんの作品の大半は映像による身辺雑記に近く、たいがい映像の間には字幕が挿入され、現場で収録した音声や効果的な音楽、それに本人の声も聞こえるのですが、この作品はそれとはだいぶ様子が違って字幕抜きに映像が次々に現れ、打楽器が即興風に始めから終わりまで伴奏します。

メカスさんの話では、この作品は制作時に考えがまとまらず往生した。たまたまアンソロジー・フィルム・アーカイヴズにリトアニア人の若い打楽器奏者が居候していて、その青年が手近のあれこれを叩く音を聴いて、はたとこれを使えばよいと思いついたということです。ようやく仕上げて日本に発つ前に親しい人たちを集めて試写会をしたところ、評判はいまひとつ。感想を訊くと、メカスさんの声を聞けないのが物足りないとか、字幕のタイプ文字の滲みが懐かしいというひとがいて、本人もそういうところに観客の目や耳が惹きつけられているとは思いもよらず、意外だったとのこと。というわけで、『富士山への道すがら』はメカスさんの作品としてはちょっと毛色が変わっていますが、作った本人は手応えを感じているようでした。

作品の冒頭にドラム奏者の名がクレジットされるのはこうした経緯からで、メカスさんもこの作品に寄せた一言に「1983年、1991年の 2度にわたる日本訪問時に撮影した映像。音楽(パーカッション)はダリウス・ナウジョカイティス。歌、というより映像と音の間でやりとりされるデュエット。読経、でもあるのだろうか」と記しています。

本作が撮影された1983年と1991年のメカスさんの旅のあらましを紹介しましょう。

1983年は東京を出発して名古屋、京都、奈良、大阪まで車、大阪から博多へは新幹線で行き、空路東京に戻りました。1991年の旅程は東京、帯広、山形、東京です。

『富士山への道すがら』の内容はおおよそ以下の通りです。

1983 東京 山下家(東京の宿泊先)/イメージフォーラム/浅草 仲見世/ドナルド・リチー

1991 東京 テレビ映像 リトアニア/記者会見/空港

1991 空の旅(羽田→帯広)

1991 帯広 歓迎会/雨のなか熊代弘法さんの別荘を訪ねる

1983 名古屋シネマテーク

1991 帯広 そば屋/川辺の風景

1983 京都 竹林/修学旅行/名刹 庭園/京都大学 西部講堂(映画の上映会場、バンド演奏)

1991 帯広 夜の街/カラオケ

1991 テレビ映像 リトアニア

1991 帯広 駅

1991 汽車(帯広→札幌)

1991 空の旅(千歳→山形)

1991 山形 そば屋、鈴木志郎康、木村迪夫/メカス日本日記の会歓迎会/ワンボックスカーで萱瀧へ向かい芋煮会/オカリナを吹く安保由夫

1983 京都 柿の木/郊外の寺(京都の宿泊先)/手拭いを頭に被り掃除する町田宗鳳

1991 東京 掘割/武道館/秋葉原電気街/炉端(有楽町)/アサヒビール本社

1991 テレビ映像 リトアニア(ロシア軍の戦車)

1991 東京 歓送会

1991 山形 銀山温泉 小関館(花笠音頭)

1983 奈良 鹿、西田画廊(桜湯を淹れる西田夫人)、西田孝作氏宅(奈良の宿泊先)

1991 東京 アサヒビール本社

1983 博多 九州芸工大学訪問(松本俊夫)/長浜ラーメンの屋台/記者会見

1991 山形 芋煮会

1991 東京 アサヒビール本社/浅草寺/記者会見/歓送会/山下一家/井の頭線

1991 山形 銀山温泉古勢起屋 小関館(吉増剛造)

1983 東京 夜の街 山下兄妹

1983 富士山(東京発名古屋行に向かう車窓から)


1983年に初めてメカスさんを日本に招待した時には極めて低予算のためほとんどは知人、友人宅に泊めて(泊まって)もらいました。映画の最初と最後に登場する子沢山の一家は東京での滞在先の山下伸さん宅。考えてみるとこの時メカスさんの子供たちは9歳と2歳でしたから、山下家の幼い兄妹を見て、ニューヨークに置いてきた子供たちを思い出したのかもしれません。

テレビのニュース映像が何度か挿入されるのは、1991年の訪日がちょうどロシアのリトアニア侵攻と重なったためで、メカスさんは日々刻々伝わる故郷の緊迫した状勢に気が気でない様子でした。

アサヒビール本社が何度か登場するのは、アサヒビールが資生堂とともに1991年の訪日のスポンサーになってくれたためです。アサヒビール本社は浅草の隅田川のほとりにあり、高所から見下ろす景色にも目を惹かれたのでしょう。

1991年の山形訪問は山形国際ドキュメンタリー映画祭とは違う時期の訪問となりましたが、遊学館に300席ほどを設けてメカスさんの作品も上映されました。詩人の木村迪夫さんとの対談イベントも忘れられません。銀山温泉の小関館の仲居さんたちが扮装して花笠音頭を踊ってくれたのが嬉しかった、芋煮会に取り組む山形の人々の熱心さに驚いた、川風に吹かれて飲んだお酒が旨かったとメカスさんはその後も何度か話していました。
(きのしたてつお)
※山形国際ドキュメンタリー映画祭2019 公式カタログより再録

木下哲夫 KINOSHITA Tetsuo
翻訳家。1950年生まれ。京都大学卒業後、パリ第三大学英文科で学ぶ。C.トムキンズ『マルセル・デュシャン』(みすず書房)、ジョン・リチャードソン『ピカソ』(白水社)、『アイ・ウェイウェイ主義』(ブックエンド)など、美術書を中心に多数の翻訳を手がける。

下にご紹介する作品はメカス映画『富士山への道すがら』のに出てくるシーンからで、メカスさんが1991年来日時に山形を訪ねた際、芋煮会が行われた折りに撮影されたものです。
06ジョナス・メカス「木下哲夫」(『富士山への道すがら、わたしが見たものは…』)
2009年
CIBA print
35.4×27.5cm
signed
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先着5名様、メカスさん自筆サイン入りカードプレゼント
ジョナス・メカス ノート、対話、映画のご案内
『ジョナス・メカス―ノート、対話、映画』表紙著者:ジョナス・メカス
訳:木下哲夫、編:森國次郎
2012年せりか書房 発行
21.0x15.0cm  333P

1949年、肌寒いニューヨーク港に難民として降り立ったジョナス・メカス。入手したボレックスでニューヨークを、友人たちを、自らを撮り続けてきたメカスが語る、リトアニアへの想い、日記映画とニューヨークのアヴァンギャルド、フィルム・アーカイヴスの誕生…「ここに集められた文章は、どれも思い出であり、わたしの人生の一部である」。
主要作品のメカス自身による解説とコメンタリーを収録。
ときの忘れもので扱っています。
価格:5,170円(税込み) 送料:520円


20200903140658_00001『ジョナス・メカス―ノート、対話、映画』をお買い上げの方先着5名様にメカスさんの直筆サイン入りメッセージカードをお付けいたします。

~2005年 ジョナス・メカス展~
DSCF0955メカスさん200510月DSCF0963
↑左から翻訳者の木下哲夫さん、綿貫、メカスさん、番頭・尾立

「ジョナス・メカス展」を開催中です(予約制/WEB展)。
会期=2020年8月28日[金]―9月12日[土]*日・月・祝日休廊
メカス展DM
昨2019年1月23日に96歳で亡くなったジョナス・メカスさんが1980年代から精力的に取り組んだ<フローズン・フィルム・フレームズ=静止した映画>シリーズに焦点をあて写真、版画など25点を展観します。出品作品の詳細は8月27日ブログに掲載しました
※予約制にてご来廊いただける日時は、火曜~土曜の平日12:00~18:00となります。
※観覧をご希望の方は前日までにメール、電話にてご予約ください。

●ときの忘れものは青山から〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。
阿部勤設計の新しい空間はWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 
E-mail:info@tokinowasuremono.com 
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。*日・月・祝日は休廊。