関根伸夫資料をめぐって 2
梅津元
「《トータル》な思考と《現代美術》の美術内思考とがどうしても離反する。
飛び出す以外にはない。
突抜けることの方がより直線的に自分のやりたいことに適している。
いろいろなそくばくをはらいのける苦労以上に苦労しがいがあると思う。」
「自己の観念・イメージの対象化としての彫刻は終った。」
写真A 関根伸夫 スケッチブック 1970年~2004年
冒頭で紹介したのは、埼玉県立近代美術館のMOMASコレクション(収蔵品展)のひとつのコーナーである「リサーチ・プログラム:関根伸夫と環境美術」において展示しているスケッチブック(写真A左下/1970年)に記された関根伸夫の言葉である。このスケッチブックには、1970年のヴェネチア・ビエンナーレ参加後、ヨーロッパ各地を巡る中で感じた様々な思いが率直に記されている。上記の頁の前後にも、以下で紹介するような記述があり、現代美術と離反することを覚悟の上で、自らの興味に従った方向に進む「覚悟」を決めるに至る思考の軌跡が読み取れる。
「何か大きな変更を求められている気がする、、、その根源的必然性を見出すことができない。又は現在までの仕事を一度、集約的にまとめて僕なりの《方向》を確かめ明かいにせねばならぬ」
「僕自身の気持ちとして、現代美術そのものを以前の様にゼ認(ママ)出来ないということ。これをつきつめて方法をとると、現代美術の方向から大きく離れても、自分自身の興味を拡大していかねばならないということ。(中略)芸術の仕事とは別に分けて、社会的な仕事をすること。例えば、デザイン、文章、モニュメント、建築、庭園。」
「しかしながら《現代美術家》を放棄して、ある種の目的意識を交尾させながら建築、造園に組み合って、新らしい実験の場を切り開く可能性はあると思われる。いまの心情として、この国際美術界においての成功に対して断念する決意はすでに、ついたと云える。《廃業》に対する努力は、とすればこのDemmarkにおける僕の、実験する思考に似ている。
この絶望を断念をこれからの行動に可能性として、ハネかえらすことをよくしなければならぬ。」
写真B「環境美術研究所 プロジェクト 1970年代」より
九州産業医科大学(福岡県北九州市/1979年)
今回の展示「リサーチ・プログラム:関根伸夫と環境美術」では、関根伸夫資料に含まれる多数の写真を素材として、環境美術研究所のプロジェクトを体感できるスライドショーを制作した。記録写真を素材としたスライドショーは、2005年に制作した《映像版 位相-大地》が原点である。《位相-大地》(1968)という「出来事としての作品」は現存せず、作品の同一性は、言説や写真といったメディアの中に浮遊している。そこで、記録写真を素材とした映像を制作し、床から天井までのスケールでプロジェクションすることにより、展示空間に「もうひとつの出来事」を出現させたいと考えたのである。記録としての《位相-大地》に接することだけでは得られない、作品本来のスケール感を体験することを意図した映像展示の試みであった。
この《映像版 位相-大地》は、2019年の企画展「DECODE/出来事と記録-ポスト工業化社会の美術」(以下「DECODE展」と略記)にも出品された。同展では《映像版 位相-大地》の手法をふまえ、記録写真を素材としたスライドショーを多数制作し、壁面に大きくプロジェクションした。関根についても、《位相-スポンジ》(1968)、《空相-油土》(1969)、《空相-水》(1969)、《空相》(1970)、《空相-石を切る》(1970)、《石とネオン》(1970)といった作品の記録写真と、1971年のスケッチブックと1985年のスケッチブックからの草稿を素材として、新たなスライドショーを制作した。特に、1970年のヴェネチア・ビエンナーレ出品作である《空相》については、制作工程から設置作業まで多数の記録写真が残されているため、《映像版 位相-大地》の手法に準じた編集を行った。(ちなみに、《空相》について、このようなスライドショーを制作することは、生前の関根と話し合ったことだった。)
一方、「DECODE展」において、環境美術研究所の資料を素材として制作したスライドショーは、小型モニターで上映した。資料展示の中での紹介という意味で、この方法は妥当だったが、環境美術研究所のプロジェクトを紹介するスライドショーを大きくプロジェクションしたいという考えが生まれた。広場、噴水、公園、モニュメントなどのスケール感が体感できる映像展示を構想したからである。また、それらのプロジェクトは各地に点在しており、その場所を訪問して体験することが難しいことも、当然意識にあった。
今回は、環境美術研究所の活動を紹介するため、1970年代の5つのプロジェクトと、1980~1990年代の8つのプロジェクトについて、スライドショーを制作した。写真Bは、このスライドショーの展示室での上映風景であるが、ご覧のとおり、展示室の床と映像内の地面が地続きであるかのような感覚を得ることができる。横断歩道を渡ろうとしているかのような3体のモニュメント《歩みの石》は、その名の通り、「歩み」の途上にあるように見えてくる。
ここで、冒頭で紹介した写真Aを、再度、見ていただきたい。中段・左のスケッチブックには、階段を登る「歩みの石」のようなスケッチが描かれている。このスケッチブックは、九州産業医科大学のプロジェクトの10年後、1989年のものである。このように、スケッチブックを調査すると、似たようなモチーフが繰り返し登場することがよくわかる。
そのような頻出するモチーフを見て興味をひかれたのは、フォルムの決定の方法である。一般的に、公共空間に設置される彫刻やモニュメントには耐久性のある素材が用いられ、比較的単純な形態が採用されやすい。環境美術研究所のプロジェクトについても、石や金属が多く用いられているのは確かであるが、その形態については、有機的なフォルムが採用されているなど、より柔軟で、この《歩みの石》のようにユーモラスな作例も多い。このようなフォルムの源泉を探る上で、スケッチブックが参考になる。
写真C 「環境美術研究所 プロジェクト 1970年代」より
水戸双葉台団地近隣公園(茨城県水戸市/1978年)
今回展示しているスケッチブックにも、人体や人体の一部の形態が彫刻やモニュメントのフォルムの模索に寄与していることがわかる素描がみられる。例えば、二つの山を連ねたようなフォルムは、人体の有機的なフォルムを思わせるものであり、水戸双葉台団地近隣公園などで実現している(写真C参照)。このようなフォルムについては、本ブログに再録されている関根のエッセイ(1976年)で言及されているので、ぜひ、あわせてお読みいただきたい(関根伸夫のエッセイ「<発想>について」第5回(最終回):初出『現代版画センターニュース』第17号・1976年8月1日発行)。
関根は、このエッセイの中で、韓国の慶州で遭遇した景色が「万葉の光景」と似ていることを、大和三山の耳成山や畝傍山の名をあげて書き記している。このことは、関根が双葉台団地近隣公園についての説明で用いた「万葉の精神」という表現を想起させる。そして、《二つの山》のようなフォルムのデッサン、慶州の風景、万葉の光景、それらを通底させながら、次のように論じている。
「私が構想した作品はすでに太古より、もっと壮大で、もっと世界をともなった次元で具現されていたのである。やられたな、と思いつも、しかし、私自身は決して彫刻する行為を止められないと思う。なぜなら、私自身の行為をはるかに超えて存在する世界を体験することは、また遠く続く行為を確認することでもある。太古人のおおいなる夢の跡を確認することは、現代人たるわれわれの行為とも決して変わることのない世界を共有することである……と、そんな憶いをはせながらまた私は己れの行為を誇大妄想的にも正当づけている自分に気付きながらも、太古人の行為を尊敬してやまない態度を保持している。」
環境美術研究所のプロジェクトは、言うまでもなく、関根個人の彫刻作品よりも広い公共性を有しており、そうであるならば、そのコンセプトやフォルムも個人主義的な造形をこえた公共性の獲得がのぞまれるはずである。そのような観点から、スケッチブックとスライドショーを相互に参照していただくと、環境美術研究所のプロジェクトやモニュメントにおける形態の決定が、彫刻作品におけるフォルムの決定と重なりながらも、より広い視野から構想されていたことへと思いを馳せることができるのではないだろうか。
(うめづ げん)
■梅津 元
1966年神奈川県生まれ。1991年多摩美術大学大学院修士課程修了。同年より埼玉県立近代美術館に学芸員として勤務。担当した主な展覧会(共同企画を含む) :「1970年-物質と知覚 もの派と根源を問う作家たち」(1995)、「ドナルド・ジャッド 1960–1991」(1999)、「プラスチックの時代 | 美術とデザイン」(2000)、「アーティスト・プロジェクト : 関根伸夫《位相─大地》が生まれるまで」(2005)、「生誕100年記念 瑛九展」(2011)、「版画の景色-現代版画センターの軌跡」(2018)、「DECODE/出来事と記録-ポスト工業化社会の美術」(2019)など。
*鏑木あづさ「関根伸夫資料をめぐって」第1回をご参照ください。
この連載は鏑木あづささんと梅津元さんのお二人が執筆します。
●『DECODE/出来事と記録―ポスト工業化社会の美術』展カタログ
『DECODE/出来事と記録―ポスト工業化社会の美術』展カタログ
B5変形・95ページ+写真集47ページ
主催:埼玉県立近代美術館、多摩美術大学
図録執筆編集:梅津元、石井富久、平野到、鏑木あづさ、多摩美術大学、小泉俊己、田川莉那
発行:2020年/多摩美術大学
価格:税込2,400円
ときの忘れもので扱っています。
*この展覧会に関しては、土渕信彦さんの詳細なレビューをお読みください。
◆ときの忘れものは「Art Basel OVR: Pioneers」に参加します。
アートバーゼルのオンラインビューイングルーム(OVR)へ関根伸夫を出展します。
【会期】VIPプレビュー: 日本時間で3月24日(水)22:00~3月25日(木)22:00まで
一般公開: 日本時間で3月25日(木)22:00~3月28日(日)8:00まで
公式サイト:https://www.artbasel.com/ovr
※一般参加はこちらからアートバーゼルのユーザー登録をお願いします。
●塩見允枝子のエッセイ「フルクサスの回想」第4回を掲載しました。合わせて連載記念の特別頒布会を開催しています。
塩見允枝子先生には11月から2021年4月までの6回にわたりエッセイをご執筆いただきます。2月28日には第4回目の特別頒布会を開催しました。お気軽にお問い合わせください。
●名古屋市美術館で『「写真の都」物語─ 名古屋写真運動史: 1911-1972』展が3月28日(日)まで開催されています。
●宮崎県立美術館で「コレクション展第4期 瑛九抄」が 4月 6日(火)まで開催され、瑛九の油彩、フォトデッサン、版画など30点近くが展示されています(出品リスト)。
●東京・アーティゾン美術館で「Steps Ahead: Recent Acquisitions 新収蔵作品展示」展が5月9日[日]まで開催され、オノサト・トシノブ、瀧口修造、元永定正、倉俣史朗など現代美術の秀作が多数展示されています。
●東京・天王洲アイルの寺田倉庫 WHAT で「謳う建築」展が5月30日(日)まで開催され、佐藤研吾が出品しています。
●ときの忘れものが青山から〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転して3年が経ちました。もともと住宅だった阿部勤設計の建物LAS CASASを使って、毎月展覧会(Web展)を開催しています。
WEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>の特集も是非ご覧ください。
ときの忘れものはJR及び南北線の駒込駅南口から徒歩約8分です。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
E-mail:info@tokinowasuremono.com
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。*日・月・祝日は休廊。
梅津元
「《トータル》な思考と《現代美術》の美術内思考とがどうしても離反する。
飛び出す以外にはない。
突抜けることの方がより直線的に自分のやりたいことに適している。
いろいろなそくばくをはらいのける苦労以上に苦労しがいがあると思う。」
「自己の観念・イメージの対象化としての彫刻は終った。」
写真A 関根伸夫 スケッチブック 1970年~2004年冒頭で紹介したのは、埼玉県立近代美術館のMOMASコレクション(収蔵品展)のひとつのコーナーである「リサーチ・プログラム:関根伸夫と環境美術」において展示しているスケッチブック(写真A左下/1970年)に記された関根伸夫の言葉である。このスケッチブックには、1970年のヴェネチア・ビエンナーレ参加後、ヨーロッパ各地を巡る中で感じた様々な思いが率直に記されている。上記の頁の前後にも、以下で紹介するような記述があり、現代美術と離反することを覚悟の上で、自らの興味に従った方向に進む「覚悟」を決めるに至る思考の軌跡が読み取れる。
※
「何か大きな変更を求められている気がする、、、その根源的必然性を見出すことができない。又は現在までの仕事を一度、集約的にまとめて僕なりの《方向》を確かめ明かいにせねばならぬ」
「僕自身の気持ちとして、現代美術そのものを以前の様にゼ認(ママ)出来ないということ。これをつきつめて方法をとると、現代美術の方向から大きく離れても、自分自身の興味を拡大していかねばならないということ。(中略)芸術の仕事とは別に分けて、社会的な仕事をすること。例えば、デザイン、文章、モニュメント、建築、庭園。」
「しかしながら《現代美術家》を放棄して、ある種の目的意識を交尾させながら建築、造園に組み合って、新らしい実験の場を切り開く可能性はあると思われる。いまの心情として、この国際美術界においての成功に対して断念する決意はすでに、ついたと云える。《廃業》に対する努力は、とすればこのDemmarkにおける僕の、実験する思考に似ている。
この絶望を断念をこれからの行動に可能性として、ハネかえらすことをよくしなければならぬ。」
写真B「環境美術研究所 プロジェクト 1970年代」より九州産業医科大学(福岡県北九州市/1979年)
今回の展示「リサーチ・プログラム:関根伸夫と環境美術」では、関根伸夫資料に含まれる多数の写真を素材として、環境美術研究所のプロジェクトを体感できるスライドショーを制作した。記録写真を素材としたスライドショーは、2005年に制作した《映像版 位相-大地》が原点である。《位相-大地》(1968)という「出来事としての作品」は現存せず、作品の同一性は、言説や写真といったメディアの中に浮遊している。そこで、記録写真を素材とした映像を制作し、床から天井までのスケールでプロジェクションすることにより、展示空間に「もうひとつの出来事」を出現させたいと考えたのである。記録としての《位相-大地》に接することだけでは得られない、作品本来のスケール感を体験することを意図した映像展示の試みであった。
この《映像版 位相-大地》は、2019年の企画展「DECODE/出来事と記録-ポスト工業化社会の美術」(以下「DECODE展」と略記)にも出品された。同展では《映像版 位相-大地》の手法をふまえ、記録写真を素材としたスライドショーを多数制作し、壁面に大きくプロジェクションした。関根についても、《位相-スポンジ》(1968)、《空相-油土》(1969)、《空相-水》(1969)、《空相》(1970)、《空相-石を切る》(1970)、《石とネオン》(1970)といった作品の記録写真と、1971年のスケッチブックと1985年のスケッチブックからの草稿を素材として、新たなスライドショーを制作した。特に、1970年のヴェネチア・ビエンナーレ出品作である《空相》については、制作工程から設置作業まで多数の記録写真が残されているため、《映像版 位相-大地》の手法に準じた編集を行った。(ちなみに、《空相》について、このようなスライドショーを制作することは、生前の関根と話し合ったことだった。)
一方、「DECODE展」において、環境美術研究所の資料を素材として制作したスライドショーは、小型モニターで上映した。資料展示の中での紹介という意味で、この方法は妥当だったが、環境美術研究所のプロジェクトを紹介するスライドショーを大きくプロジェクションしたいという考えが生まれた。広場、噴水、公園、モニュメントなどのスケール感が体感できる映像展示を構想したからである。また、それらのプロジェクトは各地に点在しており、その場所を訪問して体験することが難しいことも、当然意識にあった。
今回は、環境美術研究所の活動を紹介するため、1970年代の5つのプロジェクトと、1980~1990年代の8つのプロジェクトについて、スライドショーを制作した。写真Bは、このスライドショーの展示室での上映風景であるが、ご覧のとおり、展示室の床と映像内の地面が地続きであるかのような感覚を得ることができる。横断歩道を渡ろうとしているかのような3体のモニュメント《歩みの石》は、その名の通り、「歩み」の途上にあるように見えてくる。
ここで、冒頭で紹介した写真Aを、再度、見ていただきたい。中段・左のスケッチブックには、階段を登る「歩みの石」のようなスケッチが描かれている。このスケッチブックは、九州産業医科大学のプロジェクトの10年後、1989年のものである。このように、スケッチブックを調査すると、似たようなモチーフが繰り返し登場することがよくわかる。
そのような頻出するモチーフを見て興味をひかれたのは、フォルムの決定の方法である。一般的に、公共空間に設置される彫刻やモニュメントには耐久性のある素材が用いられ、比較的単純な形態が採用されやすい。環境美術研究所のプロジェクトについても、石や金属が多く用いられているのは確かであるが、その形態については、有機的なフォルムが採用されているなど、より柔軟で、この《歩みの石》のようにユーモラスな作例も多い。このようなフォルムの源泉を探る上で、スケッチブックが参考になる。
写真C 「環境美術研究所 プロジェクト 1970年代」より水戸双葉台団地近隣公園(茨城県水戸市/1978年)
今回展示しているスケッチブックにも、人体や人体の一部の形態が彫刻やモニュメントのフォルムの模索に寄与していることがわかる素描がみられる。例えば、二つの山を連ねたようなフォルムは、人体の有機的なフォルムを思わせるものであり、水戸双葉台団地近隣公園などで実現している(写真C参照)。このようなフォルムについては、本ブログに再録されている関根のエッセイ(1976年)で言及されているので、ぜひ、あわせてお読みいただきたい(関根伸夫のエッセイ「<発想>について」第5回(最終回):初出『現代版画センターニュース』第17号・1976年8月1日発行)。
関根は、このエッセイの中で、韓国の慶州で遭遇した景色が「万葉の光景」と似ていることを、大和三山の耳成山や畝傍山の名をあげて書き記している。このことは、関根が双葉台団地近隣公園についての説明で用いた「万葉の精神」という表現を想起させる。そして、《二つの山》のようなフォルムのデッサン、慶州の風景、万葉の光景、それらを通底させながら、次のように論じている。
「私が構想した作品はすでに太古より、もっと壮大で、もっと世界をともなった次元で具現されていたのである。やられたな、と思いつも、しかし、私自身は決して彫刻する行為を止められないと思う。なぜなら、私自身の行為をはるかに超えて存在する世界を体験することは、また遠く続く行為を確認することでもある。太古人のおおいなる夢の跡を確認することは、現代人たるわれわれの行為とも決して変わることのない世界を共有することである……と、そんな憶いをはせながらまた私は己れの行為を誇大妄想的にも正当づけている自分に気付きながらも、太古人の行為を尊敬してやまない態度を保持している。」
環境美術研究所のプロジェクトは、言うまでもなく、関根個人の彫刻作品よりも広い公共性を有しており、そうであるならば、そのコンセプトやフォルムも個人主義的な造形をこえた公共性の獲得がのぞまれるはずである。そのような観点から、スケッチブックとスライドショーを相互に参照していただくと、環境美術研究所のプロジェクトやモニュメントにおける形態の決定が、彫刻作品におけるフォルムの決定と重なりながらも、より広い視野から構想されていたことへと思いを馳せることができるのではないだろうか。
(うめづ げん)
■梅津 元
1966年神奈川県生まれ。1991年多摩美術大学大学院修士課程修了。同年より埼玉県立近代美術館に学芸員として勤務。担当した主な展覧会(共同企画を含む) :「1970年-物質と知覚 もの派と根源を問う作家たち」(1995)、「ドナルド・ジャッド 1960–1991」(1999)、「プラスチックの時代 | 美術とデザイン」(2000)、「アーティスト・プロジェクト : 関根伸夫《位相─大地》が生まれるまで」(2005)、「生誕100年記念 瑛九展」(2011)、「版画の景色-現代版画センターの軌跡」(2018)、「DECODE/出来事と記録-ポスト工業化社会の美術」(2019)など。
*鏑木あづさ「関根伸夫資料をめぐって」第1回をご参照ください。
この連載は鏑木あづささんと梅津元さんのお二人が執筆します。
●『DECODE/出来事と記録―ポスト工業化社会の美術』展カタログ
『DECODE/出来事と記録―ポスト工業化社会の美術』展カタログB5変形・95ページ+写真集47ページ
主催:埼玉県立近代美術館、多摩美術大学
図録執筆編集:梅津元、石井富久、平野到、鏑木あづさ、多摩美術大学、小泉俊己、田川莉那
発行:2020年/多摩美術大学
価格:税込2,400円
ときの忘れもので扱っています。
*この展覧会に関しては、土渕信彦さんの詳細なレビューをお読みください。
◆ときの忘れものは「Art Basel OVR: Pioneers」に参加します。
アートバーゼルのオンラインビューイングルーム(OVR)へ関根伸夫を出展します。【会期】VIPプレビュー: 日本時間で3月24日(水)22:00~3月25日(木)22:00まで
一般公開: 日本時間で3月25日(木)22:00~3月28日(日)8:00まで
公式サイト:https://www.artbasel.com/ovr
※一般参加はこちらからアートバーゼルのユーザー登録をお願いします。
●塩見允枝子のエッセイ「フルクサスの回想」第4回を掲載しました。合わせて連載記念の特別頒布会を開催しています。
塩見允枝子先生には11月から2021年4月までの6回にわたりエッセイをご執筆いただきます。2月28日には第4回目の特別頒布会を開催しました。お気軽にお問い合わせください。●名古屋市美術館で『「写真の都」物語─ 名古屋写真運動史: 1911-1972』展が3月28日(日)まで開催されています。
●宮崎県立美術館で「コレクション展第4期 瑛九抄」が 4月 6日(火)まで開催され、瑛九の油彩、フォトデッサン、版画など30点近くが展示されています(出品リスト)。
●東京・アーティゾン美術館で「Steps Ahead: Recent Acquisitions 新収蔵作品展示」展が5月9日[日]まで開催され、オノサト・トシノブ、瀧口修造、元永定正、倉俣史朗など現代美術の秀作が多数展示されています。
●東京・天王洲アイルの寺田倉庫 WHAT で「謳う建築」展が5月30日(日)まで開催され、佐藤研吾が出品しています。
●ときの忘れものが青山から〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転して3年が経ちました。もともと住宅だった阿部勤設計の建物LAS CASASを使って、毎月展覧会(Web展)を開催しています。
WEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>の特集も是非ご覧ください。
ときの忘れものはJR及び南北線の駒込駅南口から徒歩約8分です。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
E-mail:info@tokinowasuremono.com
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