平日はほとんど人が来ないのですが、昨日は珍しく千客万来。
久保家の皆さんはじめ、うらわ美術館のY先生、パリで活躍する桐村茜さん、写真家の細江賢治さん、9月にときの忘れもので個展を予定している建築家の光嶋裕介さんなどなど。
忙しい一日でした。
光嶋さんと細江さん来廊左からときの忘れもの亭主、光嶋裕介さん、細江賢治さん。
光嶋さんが手にしているのは細江英公写真集「ガウディの宇宙」(序文:瀧口修造、絵序詩:ジョアン・ミロ)

光嶋さん、東京と神戸を毎週往復し、全国あちらこちらに出没して、大学の授業、講演、新聞雑誌への執筆、テレビ出演、もちろん本業の建築設計も八面六臂の大活躍。
後日、詳しくご案内しますが、森アーツセンターギャラリーでガウディ展が開催され、光嶋さんがなんと展覧会公式ナビゲーターに選ばれ、種々イベントに参加するらしい。
●特別展 ガウディ×井上雄彦 -シンクロする創造の源泉-
Takehiko Inoue Interprets Gaudi's Universe

会期:2014年7月12日(土)~9月7日(日)※会期中無休
会場:森アーツセンターギャラリー(東京・六本木ヒルズ 森タワー 52F)
公式HP www.gaudinoue.com facebook twitter
主催 東映、テレビ朝日、BS朝日、朝日新聞社、森アーツセンター
●6月25日 祝ガウディ誕生日!
「特別展 ガウディ×井上雄彦」プレ・トークイベント
“展覧会を楽しむヒント、お話しします”
トーク・ゲスト:建築家・光嶋裕介(本展公式ナビゲーター)
日時 6月25日(水)14:00~(45分間予定)
場所 六本木ヒルズ・森タワー3階
美術館・展望台発券ロビー奥特設スペース
ガウディの誕生日を祝して、本展覧会公式ナビゲーターの光嶋裕介さんのトーク・イベントを開催します。ガウディと井上雄彦のそれぞれの魅力を紹介するほか、光嶋さんから見た二人のアーティストがシンクロする部分、またバルセロナ取材や越前の和紙漉き取材で得た展覧会制作の裏側をスナップ映像とともにお話しいただきます!

さて「第25回 瑛九展 瑛九と久保貞次郎」から本日紹介するのは磯辺行久です。
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◆久保貞次郎のエッセイ~磯辺行久(1968年執筆)

磯辺行久の作品

久保貞次郎

 一九三六年、東京に生まれたこの画家は、芸大在学中から瑛九のひきいたデモクラートに参加して、いろいろな模索をへたのち、一九六二年、ワッペン型を画面にはりつけるパターンを創りだすことによって自分のみちを発見した。画壇がかれをワッペンの画家として認めはじめると、かれはその二年のちには、小さな箱の連続するパネルの上に、一見通俗的なテーマの絵、例えば象や、宗達の雷神などをえがき、ひとびとの常識的期待を裏切って、六四年ヨーロッパをへてニューヨークにいった。そこで平面から立体のコンストラクションへと進んで、建築的単位としての物体をつくりだそうとしている。
くぼさだじろう
(一九六八年 芸術新潮 1月号)
『久保貞次郎 美術の世界2 瑛九と仲間たち』(1985年、叢文社)より転載
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DSCF3534

以下に紹介する磯辺行久作品は全て久保貞次郎旧蔵作品です。
DSCF3368出品No.29)
磯辺行久
「室内」
1956年
カラーリトグラフ
Image size: 41.5x57.2cm
Sheet size: 54.3x68.6cm
Signed

磯部行久_空押し出品No.30)
磯辺行久
「ワッペン」
1964年
空押し
Image size: 27.5x19.5cm
Sheet size: 46.1x31.8cm
Ed.20 Signed

磯部行久レリーフ出品No.31)
磯辺行久
「ワッペン」
1962年
レリーフ、木
28.1x40.4x4.6cm
Signed

isobe_wappen出品No.32)
磯辺行久
「ワッペン」
1963年
ミクストメディア
18.5x14.8cm
Signed

isobe_57_7出品No.33)
磯辺行久
「(作品)」
1957年
ガラス絵
Image size: 22.5x31.0cm
Frame size: 25.7x35.5cm
Signed

isobe_57_9出品No.34)
磯辺行久
「(作品)」
1957年
ガラス絵
Image size: 21.5x30.7cm
Frame size: 33.2x42.8cm
Signed

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*画廊亭主敬白
瑛九のまわりに集まった若い作家たちの多くを久保貞次郎先生は支持しました(つまり作品を買った)。
彼等の中で、磯辺行久ほどその後の歩みを激変させた作家はいないでしょう。
1935年東京生まれ。1957年東京藝術大学美術学部卒業後、1960年代にワッペン型のモティーフを反復させたレリーフや版画、そして古画を引用した重層的な構造の絵画を制作します。
50年代の抽象と、日常的なイメージをコラージュする60年代のポップアートを繋ぐ作家として今日では高い評価を獲得しているこれらの活動を経て、1965年渡米、1968年グリーン・カードを取得、1972年ペンシルベニア大学大学院を終了。新たに環境計画(エコロジカル・プランニング)を学んだ磯辺は、M・ポール・フリードバーグ環境設計事務所、ニューヨーク市公園課などにプランナーとして勤務、1975年(株)リジオナル・プランニング・チームを設立。この分野でのパイオニアとして活動を続け、アートの世界からは離れてしまったと思われてきました。
亭主が現代版画センターを創立し美術界に入ったのは1974年でしたが、既に磯辺行久は伝説の人でした。久保先生やその周囲の人たち(創美、小コレクターの会、etc.,)の口からは「エイキュウ、マスオ、アイオー、タミジ、オノサト、イソベ」とどこの国の人だかわからない人名がしょっちゅう出てくるのですが、イソベさんだけが美術界に不在の人でした。
「なにやら美術の世界から遠く離れて、エンバイラメントの世界に行ってしまった天才」というイメージで語られていました(当時「環境」という言葉はまだなかった)。
やがて帰国した磯辺はアートの世界への帰還を果たし、大地の芸術祭越後妻有アートトリエンナーレに参加、信濃川をテーマとした野外作品を発表します。
2007年には東京都現代美術館で「サマー・ハプニング」が開催されました。美術家/環境計画家として磯辺の初期から現在までの作品を展示し、磯辺が自らをとりまく環境を表現したものを「ランドスケープ」と捉え、半世紀に互る、多様なアプローチの変遷を辿る画期的な展示でした。

◆ときの忘れものは2014年6月11日[水]―6月28日[土]「第25回 瑛九展 瑛九と久保貞次郎」を開催しています(*会期中無休)。
DM
大コレクター久保貞次郎は瑛九の良き理解者であり、瑛九は久保の良き助言者でした。
遺された久保コレクションを中心に、瑛九と時代を共にし、久保が支持した作家たちー北川民次、オノサト・トシノブ、桂ゆき、磯辺行久、靉嘔、瀧口修造、駒井哲郎、細江英公、泉茂、池田満寿夫らの油彩、水彩、オブジェ、写真、フォトデッサン、版画などを出品します。
また5月17日に死去した木村利三郎の作品を追悼の心をこめて特別展示します。

◆宇都宮の栃木県立美術館で、「真岡発:瑛九と前衛画家たち展―久保貞次郎と宇佐美コレクションを中心に」が6月22日[日]まで開催されています。
展示風景はユーチューブでご覧になれます。