Artists Recently 第8回/釣光穂

マカロニ blu《マカロニ blu》
2020年
陶土 磁土 顔料
W28×D28×37cm
サインあり

わたしが制作に用いるのは陶芸です。土を紐状に伸ばし下から少しずつ積み上げる「ひもづくり」というやきものの原始的な手法で成形し、電気窯で焼成します。わたしは通常よりも紐を細く伸ばし、複数を撚り合わせることで形をつくりあげた粘土の集積が編み物のように見える作品を制作しています。
モチーフになるものは、土器や須恵器、身の回りにあるもの(使い捨て容器や狸の置物など)、自分のイメージしたもの、などを選考して制作しています。

陶芸を始めたころに、今この世界がとても儚いものであるというふうに感じたことがありました。同時に、変わらないものもあるのだとも感じました。
ひもづくりをより細分化したひもづくりにすることによって、わたしはその時感じていることや考えていることを作品に込めることができます。粘土を積み上げる時間は、淡々としていてとても好きです。

マカロニs (1)《マカロニ yel》
2020年
陶土 磁土 顔料
W34×D47×32cm
サインあり

記憶にはかたちがなく曖昧ですが、粘土を通して形にすることができます。過去の記憶や自分の想像の中にあるモチーフを思い浮かべながら、粘土と窯の力を借りて制作した作品は、モチーフそのものではなくモチーフの影のような幽霊のような存在です。
窯から出てきたものと対峙したときも、自分の手で作ったもののはずなのに、どこか遠いところにあるように感じることがあります。これは窯の中の温度が想像できないほどの高温であり、粘土の素材が全く別のものに変容することを、自分の手の届かない場所から来るように想像するからです。この体験の不思議さを、今も感じ制作に取り組んでいます。

2020年の4月から、自宅で制作を始めました。同時に、世界は感染症の影響であっというまに様変わりしました。この変化についてまだ自分の中でうまく飲み込めていません。何年か後に、今のことを思い出して感じることがあると思います。ですが、それはもう今感じていることとは別のものになっているかもしれません。この変化の中で消えてしまうものや、変わらなかったもの、かたちのあるものやないものも、今後作品にしていけたらと思います。
つり みつほ

釣光穂  Mitsuho TSURI
1991年兵庫県生まれ。2014年京都市立芸術大学美術学部工芸科陶磁器専攻卒業。2016年京都市立芸術大学大学院 美術研究科修士課程工芸専攻陶磁器卒業。2020年金沢卯辰山工芸工房卒業。
主な展覧会:個展2016年「うつわの標本」KUNST ARZT/京都,グループ展2017年「ルンパルンパKanazawa Newly arrived Art&Craft 2017」青山スパイラル/東京,「ウォーホル美術/Warhol Art」KUNST ARZT/京都,2018年秋元雄史監修「もう一つの工芸未来派」銀座和光/東京, その他グループ展,国内のアートフェア,ワークショップなど多数参加
受賞歴:2016年「京都市立芸術大学作品展」奨励賞,2017年「第7回菊池ビエンナーレ 現代陶芸の<今>」菊池寛実記念智美術館 奨励賞,2019年「金沢市工芸展」NHK金沢放送局長賞,「金沢卯辰山工芸工房研修者作品展」卯辰山工芸工房賞。

*釣さんは4月2日(金)~4月17日(土)に開催する「Tricolore2021―根岸文子・宇田義久・釣光穂展」に出品参加されます。どうぞご期待ください。

●作家が近況を語るArtists Recentlyは毎月15日の更新です。

◆「春の小コレクション/吉田博と大正版画」開催中
魔方陣_修正版1200吉田博、橋口五葉、竹久夢二戸張孤雁恩地孝四郎長谷川潔織田一磨など、僅か10点ばかりのささやかな小展示ですがお楽しみください。
大正時代の新版画、創作版画の出品作品の詳細と展示風景は3月8日のブログに掲載しました。
会期:2021年3月10日(水)― 3月19日(金)

06竹久夢二「女人伴天連第7話 南蛮寺」(婦人グラフ挿絵) 大正13年(1924年) 木版 24.5×11.2cm


ART FAIR TOKYO 2021 ― 没後30年 倉俣史朗展
会期:2021年3月18日[木]~3月21日[日]
会場:東京国際フォーラム ホールE & ロビーギャラリー
Toki-no-Wasuremono: Booth G92
公式サイト:https://artfairtokyo.com/
tokyo21-3毎年春になると、世界各地で大きなアートフェアが開催されていましたが、昨年は出展が決まっていたアートバーゼル香港やアートフェア東京が新型コロナウイルス感染症の影響で急遽中止となりました。 あれから一年、現在もコロナ禍であり、開催中止や延期になっているフェアが多数あります。 「アートフェア東京2021」は、さまざまなコロナ対策を実施し、万全の体制で開催される運びとなりました。 ときの忘れものも例年通り出展し、倉俣史朗没後30年を記念して「倉俣史朗展」を開催します。 新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、Webからの完全予約制で、顔認証システムでのご入場となりますのでご注意ください。皆様のご来場お待ちしております。

塩見允枝子のエッセイ「フルクサスの回想」第4回を掲載しました。合わせて連載記念の特別頒布会を開催しています。
virus塩見允枝子先生には11月から2021年4月までの6回にわたりエッセイをご執筆いただきます。2月28日には第4回目の特別頒布会を開催しました。お気軽にお問い合わせください。


東京都美術館で「没後70年 吉田博展」が3月28日(日)まで開催されています。

名古屋市美術館で『「写真の都」物語─ 名古屋写真運動史: 1911-1972』展が3月28日(日)まで開催されています。

宮崎県立美術館で「コレクション展第4期 瑛九抄」が 4月 6日(火)まで開催され、瑛九の油彩、フォトデッサン、版画など30点近くが展示されています(出品リスト)。

●東京・アーティゾン美術館で「Steps Ahead: Recent Acquisitions 新収蔵作品展示」展が5月9日[日]まで開催され、オノサト・トシノブ、瀧口修造、元永定正、倉俣史朗など現代美術の秀作が多数展示されています。

●東京・天王洲アイルの寺田倉庫 WHAT で「謳う建築」展が5月30日(日)まで開催され、佐藤研吾が出品しています。

●ときの忘れものが青山から〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転して3年が経ちました。もともと住宅だった阿部勤設計の建物LAS CASASを使って、毎月展覧会(Web展)を開催しています。
WEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>の特集も是非ご覧ください。
ときの忘れものはJR及び南北線の駒込駅南口から徒歩約8分です。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 
E-mail:info@tokinowasuremono.com 
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。*日・月・祝日は休廊。