ホームページを見て、作品の問合せや注文がくることが多くなりました。
検索という便利な機能のおかげですね。
先日、ある作家の銅版画の問合せをいただきました。幸い在庫があったのでその旨、価格を明示してお答えしたところ、以下のようなお返事をいただきました。
作品の鑑賞と保存の問題は誰しも悩むところですね。

Aさんからのメール
購入については時間をかけて検討したいと思っていますが、作品の取り扱いについて教えていただいてもよろしいでしょうか。
今までに美術品を購入したことがないので、詳しく教えていただけるとありがたいです。
私の希望としましては、作品は壁に飾りたいと思っています。
ですが、それでは貴重な作品を日焼けや湿気などで痛めてしまうのではないかと懸念しております。
日頃は日の入らない場所にしまっておく方がいいのでしょうか?
お手すきの時で構いませんので教えていただけましたら幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。

亭主からAさんへの返信メール
早速のお返事ありがとうございます。
版画作品は基本的には「紙」に刷られているので、一番の大敵は、「カビ」と「湿気」です。
お客様がよく間違われるのは、大切にする余り、押入れなどに仕舞い込むことです。
カビや湿気による「シミ」などは、しまっておいた場合に発生することが多いのです。
美術館とは違うのですから、通常のご家庭で、安全なのは、きちんとした額に入れた作品をとにかく「壁にかけておく」ことです。
つまり常に「風通し」をよくしておくことが保存には大切です。
その場合、気をつけていただきたいのは、直射日光にあてないことです。
日が直接当たらない壁、玄関でもよし、書斎でもよし、壁面に飾って楽しんでいただければ作品も喜ぶでしょう。
もちろん、日焼けという心配もあるでしょうが、直射日光にあたらなければ、そう直ぐには日焼けしません。
長期間掛けっぱなしにすると、日焼けします。
定期的に(例えば半年とか)掛けかえるのがいいのですが、問題は、外して押入れにしまいこんで、あっという間に数年経ってしまい、気がついた時にはカビが生えていたというのが多いパターンです。
しまいこむときは、一階より二階。
押入れの下段より、上段。
しょっちゅう開け閉めして空気が流れる場所。
梅雨時は、しまいこむより、壁にかけていた方が安全です。
空調が効いていればなおいいですね。でも24時間なんてする必要はありません。
要は、作品の周辺に空気が動いていることが肝心です。
つまり、作品も生きているので、所有者(あなたです)と「一緒に暮らす」ことで長生きします。
「良い絵と女房は三か月一緒に暮らせばわかる」というのが、大コレクターだった我が師匠久保貞次郎先生の教えでした。
何かご不明な点があれば遠慮なくお問合せください。
ときの忘れもの亭主
**************
さて、紅葉の季節となりました。
亭主の好きな信州の須坂版画美術館で創作版画名品展が開催されています。

創作版画名品展_表創作版画名品展_裏

創作版画名品展
「月映」、長谷川潔、棟方志功…

会期:2010年9月2日(木)~11月9日(火)
休館日:水曜日 ※11/3は開館し、翌11/4休館

当館コレクションより、創作版画を代表する作家たちの作品をご紹介します。
大正時代の若者たちによる版画集『月映』(つくはえ)の先鋭的表現は今も斬新さを失っていません。
また、大正時代にフランスへ渡り銅版画技法を復興した長谷川潔、のちに国際舞台で活躍する棟方志功の初期作品などをお楽しみください。

展示室2では、収蔵品展「戦後の巨匠たち」
駒井哲郎浜口陽三瑛九池田満寿夫など、国際展を舞台に活躍した版画家たち、そして先駆者として後の世代に大きな影響を及ぼした作家たちの作品を特集しています。(同館HPより)
**************

いま画廊ではS氏コレクション 駒井哲郎PART II展」を開催していますが、駒井先生は創作版画と現代版画の架け橋となったひとりです。
創作版画といえば亭主にとっては一にも二にも駒井先生が最も尊敬していた恩地孝四郎
これほどの大作家の作品が今でも数万円で買える! 人気や流行というものの不思議さを感じます(少し憤慨)。
ときの忘れもののコレクションからをいくつかご紹介しましょう。
「花」と「浴室午前」はオリジナル(生前の刷り)で、状態も完璧。お薦めです。
恩地「花」
恩地孝四郎「花」
1928年 木版(色)
16×11cm 版上サイン

恩地孝四郎浴室午前
恩地孝四郎「浴室午前
1928年 木版(色) 
21×14cm

恩地孝四郎
恩地孝四郎「抒情・あかるい時
1915年 木版(恩地邦郎による後摺り)
13.3×9.7cm

恩地「ラベル道化師の朝歌」
恩地孝四郎「Lyrique No.2 楽曲によせる抒情 ラベル"道化師の朝歌"」
1933年 木版(後摺り)
27.0×16.5cm

こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから

◆ときの忘れものは、10月26日(火)~11月6日(土)「S氏コレクション 駒井哲郎PART II展」を開催しています(会期中無休)。
駒井哲郎展DM
昨秋の第一回展では、同じ版から刷られた同じ作品を敢えて複数コレクションするという「コレクションの異端」ぶりで観る人を驚かせたS氏コレクションの二回目は「生命あるものへ」の視点を凝縮した30点を展観します。

画廊では駒井哲郎関連書籍、カタログも販売しています。
『没後15年 銅版画の詩人 駒井哲郎回顧展』図録
『福原コレクション 駒井哲郎作品展/未だ果てぬ夢のかたち-』図録
『ときの忘れものアーカイブス vol.4/S氏コレクション駒井哲郎 PART I 展』

第3回写真を買おう! ときの忘れものフォトビューイングは、11月12日(金)18時半~開催します。
ホストの原茂さんが今回お招きする写真家は金子典子さんです。
※要予約(参加費1,000円/1ドリンク付/参加ご希望の方は、電話またはメールにてお申し込み下さい)
Tel.03-3470-2631/Mail.info@tokinowasuremono.com

宮脇愛子の新作エディション『マン・レイへのオマージュ
マン・レイへのオマージュパンフ
マン・レイの折本仕立ての「回転扉(Pain Peint)」にインスパイアーされ、宮脇愛子がマン・レイへのオマージュとして制作した新作エディション、シルクスクリーン入り小冊子『Hommage a Man Ray マン・レイへのオマージュ』(DVD付き、限定25部)をぜひご購入ください。

こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから

◆今月のWEB展は、10月16日~11月15日まで「安藤忠雄展」を開催しています。

井桁裕子さんが平城遷都1300年祭の一環として奈良市・大乗院庭園文化館で開催されている「飛鳥から奈良へ 国際彫刻展2010」に出品しています。
展示風景は同展のホームページと、ときの忘れもののブログにも掲載されています。
会期:10月26日(火)~11月7日(日)9:00~17:00(11/1、4は休館)

◆ときの忘れものは通常は日曜・月曜・祝日は休廊ですが、企画展の開催中は会期中無休です。