試練の時―卒業審査に思う
歳を重ねるごとに、時間が過ぎるのが早くなる。ルリユールの勉強を終え、ベルギーから帰国して早いもので15年が過ぎた。この間にどれだけのことを成し遂げたかと言えば、内心忸怩たる思いはあるが、それはさておき、既に若くない年齢で経験した外国での体験は、その後の人生観に強く影響を与えるものだった。今回は、滞在中の数々のエピソードの中で、学業のハイライトとも言える卒業審査について書いてみたい。
私が通ったラカンブル国立高等視覚芸術学校は五年制の美術学校で、当時は一年生から四年生まではアトリエの授業とは別に、教養科目や他のアトリエと合同の実技科目があった。年次が上がっていくに従い科目数が減り、五年生はアトリエの作業のみとなる。毎年9月終わりから実質的な新学期が始まり、早いアトリエでは5月中、遅いところでは6月末に審査があった。ルリユールは毎年、6月25日前後に審査が行われ、一年間に10~12冊ほどを仕上げていた。3月末から4月中旬の間に復活祭の休暇が2週間あり、移動祭日である復活祭がよほど遅くない限り、休暇後に年末試験があったので、四年生までは5月・6月が大スパート期であった。
“ラカンブル” 1926年、建築家・デザイナーであるアンリ・ヴァンデ・ヴェルデにより創立。メインの校舎は1700年代に建てられた修道院の建物を改修して使用している。
朝9時から18時までしかアトリエを使えないシステムだったから、18時になると荷物を一杯背負って自宅に戻り、作業を続ける。四年生まではタイトルが入っていなくても審査に出せたが、五年生の卒業審査では全てタイトルを入れて出すのが不文律になっていた。とはいえ、タイトルの有無は評価の対象外だったので、自分で押す自信のない学生は専門家に押してもらっていた。私はタイトル押しも自分で行っていたので、さらにスケジュールはタイトだった。
審査当日は朝9時までに、与えられたスペースに展示をして審査員を待つ。当日朝にプレスから本を出したり、デコールの仕上げをする為に電熱器を温める、などは毎年見られる光景で、卒業生からも「まあ、伝統よね」と言われていた。一旦、校長室に集まった審査員がいつ訪れるか、斥候を買って出る学生が必ず一人はいて、彼(大体が男子学生)から「来た!」と連絡が入ると緊張はピークに達する。審査員は学内・外から選ばれた10人くらい。アトリエの教授達は審査員ではないが、成績を決める為のディスカッションには加わる。メンバーには、製本家、ルリユールに係わる学芸員、ルリユールと関連がない評論家やジャーナリストなども含まれており、まったく学生に質問をせず各机を廻っては黙々と評価表をつける審査員もいる中で、気さくに話しかけてくる人も意地悪な質問をするシニカルな審査員もおり、気が抜けない。
一通り見てまわった審査員は校長室に戻り、全員で成績を決める。審査員が去った後は、一般の人達が通常の展覧会の様に作品を見ることができる。学年末審査を見た愛書家から注文が入ることもあり、私も卒業の時点で数人から注文を受けていた。やがて、校長室に集まるようにと指示が入るので、学生全員が赴く。一年生から順に成績が読み上げられ、四年生まではパーセンテージで評価される。五年生の卒業時は数字ではなく、なんらかの文言が付く。最上が”avec grande distinction”、以下”avec distinction”、”avec satisfaction”となり、なにも付かない「ただの卒業」と続く。
ルリユールのアトリエでは一年生で60数パーセントくらいの評価が付くことが多く、年次が上がるに従い成績が良くなっていく、というのが言わば「正統」な道筋で、私の場合もそのように進んでいった。となると、五年生の目標はおのずと決まり、最終学年でのプレッシャーというのは並大抵ではない。実際、三十代からの持病である、ストレス大敵の気管支喘息が5月末から出て、薬を飲みながら一日も休まず作業したことを思い出す。日本で美術大学を卒業された方々には、このようなプレッシャーは当然のことかもしれない。自分の表現を世に問うという覚悟を持っていれば、卒業までには度胸もつくだろう。私の場合は、それまでの社会人生活ではなかったこととして、この時の経験がその後の「試練」に向き合う礎になったのだと、徐々に薄れていく当時の思い出の中で、これだけは鮮やかに心に刻まれている。
卒業審査風景1
審査結果発表後のほっとした状態
来る11月8日(火)から11月19日(土)まで、レ・フラグマン・ドゥ・エムの展覧会を「ときの忘れもの」にて開催していただくことになりました。ユニットとして活動を開始してから四年、メンバーそれぞれの想いに違いはあるかもれませんが、このような機会を持てたことは、全員の大いなる喜びです。是非、多くの方々にご覧いただき、様々なご意見・ご感想を賜りたく、ここにお願い申し上げます。
(文・平まどか)

●作品紹介~平まどか制作



『DIOTIME ET LES LIONS』
Henry Bauchau著
1991年 ACTES SUD刊
・ランゲット製本
・山羊革 手染め紙
・手染め見返し
・タイトル箔押し:中村美奈子
・2013年制作
・190x119×12mm
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
ときの忘れものの通常業務は平日の火曜~土曜日です。日曜、月曜、祝日はお問い合わせには返信できませんので、予めご了承ください。
●ルリユール用語集
ルリユールには、なじみのない用語が数々あります。そこで、frgmの作品をご覧いただく際の手がかりとして、用語集を作成しました。
本の名称
(1)天
(2)地
(3)小口(前小口)
(4)背
(5)平(ひら)
(6)見返し(きき紙)
(7)見返し(遊び紙)
(8)チリ
(9)デコール(ドリュール)
(10)デコール(ドリュール)
額縁装
表紙の上下・左右四辺を革で囲い、額縁に見立てた形の半革装(下図参照)。
角革装
表紙の上下角に三角に革を貼る形の半革装(下図参照)。
シュミーズ
表紙の革装を保護する為のジャケット(カバー)。総革装の場合、本にシュミーズをかぶせた後、スリップケースに入れる。
スリップケース
本を出し入れするタイプの保存箱。
総革装
表紙全体を革でおおう表装方法(下図参照)【→半革装】。
デコール
金箔押しにより紋様付けをするドリュール、革を細工して貼り込むモザイクなどの、装飾の総称。
二重装
見返しきき紙(表紙の内側にあたる部分)に革を貼る装幀方法。
パーチメント
羊皮紙の英語表記。
パッセ・カルトン
綴じ付け製本。麻紐を綴じ糸で抱き込むようにかがり、その麻紐の端を表紙芯紙に通すことにより、ミゾのない形の本にする。
製作工程の早い段階で本体と表紙を一体化させ、堅固な構造体とする、ヨーロッパで発達した製本方式。
半革装
表紙の一部に革を用いる場合の表記。三種類のタイプがある(両袖装・額縁装・角革装)(下図参照)【→総革装】。
革を貼った残りの部分は、マーブル紙や他の装飾紙を貼る。
夫婦函
両面開きになる箱。総革装の、特に立体的なデコールがある本で、スリップケースに出し入れ出来ない場合に用いる。
ランゲット製本
折丁のノドと背中合わせになるように折った紙を、糸かがりし、結びつける。背中合わせに綴じた紙をランゲットと言う。
全ての折丁のランゲットを接着したあと、表装材でおおい、装飾を施す。和装本から着想を得た製本形態(下図参照)。
両袖装
小口側の上下に亘るように革を貼る形の半革装(下図参照)。
様々な製本形態
両袖装
額縁装
角革装
総革装
ランゲット製本
◆ときの忘れものは「ルリユール 書物への偏愛―テクストを変換するもの―展」を開催します。
会期:2016年11月8日[火]~11月19日[土] *日曜、月曜、祝日休廊

造本作家グループLes fragments de M(略称frgm)は2011年10月、三人の製本家と一人の箔押し師が集まり、ルリユールをもっと多くの方々に知っていただき、より身近なものとして慈しんでもらうことを願い、活動を始めました。
メンバーは羽田野麻吏さん、平まどかさん、市田文子さん、中村美奈子さんで、2014年11月よりブログでfrgmのエッセイ「ルリユール 書物への偏愛」を連載しています。
「ルリユール」とはフランス語で「製本」を意味し、書店で売られているいわゆる機械製本も含める語ではありますが、一方で工芸としての製本を強く想起する言葉として、フランス語圏の国々では使われています。工芸としての製本とは、読書家・愛書家が自らの蔵書を製本家に依頼して、世界に一つの作品に仕立て直す(具体的には山羊革や仔牛革などを表装材に用い、その上に革や他の素材による)装飾を施していきます。
本展ではfrgm皆さんのルリユール作品約35点をご覧いただきます。
●イベントのご案内
展覧会最終日の11月19日(土)19時より、港千尋さん(写真家、著述家)を招いてギャラリートークを開催します(要予約/参加費1,000円)。
※必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記の上、メールにてお申込ください。
E-maii. info@tokinowasuremono.com
●本日のお勧め作品は、恩地幸四郎です。
恩地孝四郎
「浴室午前」
1928年
木版(色)
21.0×14.0cm
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
ときの忘れものの通常業務は平日の火曜~土曜日です。日曜、月曜、祝日はお問い合わせには返信できませんので、予めご了承ください。
◆ときの忘れもののブログは下記の皆さんのエッセイを連載しています。
・大竹昭子のエッセイ「迷走写真館 一枚の写真に目を凝らす」は毎月1日の更新です。
・frgmメンバーによるエッセイ「ルリユール 書物への偏愛」は毎月3日の更新です。
・夜野悠のエッセイ「書斎の漂流物」は毎月5日の更新です。
・笹沼俊樹のエッセイ「現代美術コレクターの独り言」はしばらく休載します。
・杉山幸一郎のエッセイ「幸せにみちたくうかんを求めて」は毎月10日の更新です。
・芳賀言太郎のエッセイ「El Camino(エル・カミーノ) 僕が歩いた1600km」は毎月11日の更新です。
・普後均のエッセイ「写真という海」は毎月14日の更新です。
・野口琢郎のエッセイ「京都西陣から」は毎月15日の更新です。
・小林紀晴のエッセイ「山の記憶」は毎月19日の更新です。
・藤本貴子のエッセイ「建築圏外通信」は毎月22日の更新です。
・八束はじめ・彦坂裕のエッセイ「建築家のドローイング」(再録)は毎月24日の更新です。
・小林美香のエッセイ「写真集と絵本のブックレビュー」は毎月25日の更新です。
・スタッフSの「海外ネットサーフィン」は毎月26日の更新です。
・森本悟郎のエッセイ「その後」は毎月28日の更新です。
・光嶋裕介のエッセイ「和紙に挑む」は毎月30日の更新です。
・植田実のエッセイ「美術展のおこぼれ」は、更新は随時行います。
同じく植田実のエッセイ「生きているTATEMONO 松本竣介を読む」と合わせお読みください。
「本との関係」などのエッセイのバックナンバーはコチラです。
・中村茉貴のエッセイ「美術館に瑛九を観に行く」は随時更新します。
・飯沢耕太郎のエッセイ「日本の写真家たち」は英文版とともに随時更新します。
・深野一朗のエッセイは随時更新します。
・「久保エディション」(現代版画のパトロン久保貞次郎)は随時更新します。
・石原輝雄のエッセイ「マン・レイへの写真日記」は終了しました。
・荒井由泰のエッセイ「いとしの国ブータン紀行」は終了しました。
・森下泰輔のエッセイ「戦後・現代美術事件簿」は終了しました。
・「殿敷侃の遺したもの」はゆかりの方々のエッセイや資料を随時紹介します。
・「オノサト・トシノブの世界」は円を描き続けた作家の生涯と作品を関係資料や評論によって紹介します。
・「瀧口修造の世界」は造形作家としての瀧口の軌跡と作品をテキストや資料によって紹介します。
土渕信彦のエッセイ「瀧口修造とマルセル・デュシャン」、「瀧口修造の箱舟」と合わせてお読みください。
・「関根伸夫ともの派」はロスアンゼルスで制作を続ける関根伸夫と「もの派」について作品や資料によって紹介します。
・「現代版画センターの記録」は随時更新します。
今までのバックナンバーの一部はホームページに転載しています。
歳を重ねるごとに、時間が過ぎるのが早くなる。ルリユールの勉強を終え、ベルギーから帰国して早いもので15年が過ぎた。この間にどれだけのことを成し遂げたかと言えば、内心忸怩たる思いはあるが、それはさておき、既に若くない年齢で経験した外国での体験は、その後の人生観に強く影響を与えるものだった。今回は、滞在中の数々のエピソードの中で、学業のハイライトとも言える卒業審査について書いてみたい。
私が通ったラカンブル国立高等視覚芸術学校は五年制の美術学校で、当時は一年生から四年生まではアトリエの授業とは別に、教養科目や他のアトリエと合同の実技科目があった。年次が上がっていくに従い科目数が減り、五年生はアトリエの作業のみとなる。毎年9月終わりから実質的な新学期が始まり、早いアトリエでは5月中、遅いところでは6月末に審査があった。ルリユールは毎年、6月25日前後に審査が行われ、一年間に10~12冊ほどを仕上げていた。3月末から4月中旬の間に復活祭の休暇が2週間あり、移動祭日である復活祭がよほど遅くない限り、休暇後に年末試験があったので、四年生までは5月・6月が大スパート期であった。
“ラカンブル” 1926年、建築家・デザイナーであるアンリ・ヴァンデ・ヴェルデにより創立。メインの校舎は1700年代に建てられた修道院の建物を改修して使用している。朝9時から18時までしかアトリエを使えないシステムだったから、18時になると荷物を一杯背負って自宅に戻り、作業を続ける。四年生まではタイトルが入っていなくても審査に出せたが、五年生の卒業審査では全てタイトルを入れて出すのが不文律になっていた。とはいえ、タイトルの有無は評価の対象外だったので、自分で押す自信のない学生は専門家に押してもらっていた。私はタイトル押しも自分で行っていたので、さらにスケジュールはタイトだった。
審査当日は朝9時までに、与えられたスペースに展示をして審査員を待つ。当日朝にプレスから本を出したり、デコールの仕上げをする為に電熱器を温める、などは毎年見られる光景で、卒業生からも「まあ、伝統よね」と言われていた。一旦、校長室に集まった審査員がいつ訪れるか、斥候を買って出る学生が必ず一人はいて、彼(大体が男子学生)から「来た!」と連絡が入ると緊張はピークに達する。審査員は学内・外から選ばれた10人くらい。アトリエの教授達は審査員ではないが、成績を決める為のディスカッションには加わる。メンバーには、製本家、ルリユールに係わる学芸員、ルリユールと関連がない評論家やジャーナリストなども含まれており、まったく学生に質問をせず各机を廻っては黙々と評価表をつける審査員もいる中で、気さくに話しかけてくる人も意地悪な質問をするシニカルな審査員もおり、気が抜けない。
一通り見てまわった審査員は校長室に戻り、全員で成績を決める。審査員が去った後は、一般の人達が通常の展覧会の様に作品を見ることができる。学年末審査を見た愛書家から注文が入ることもあり、私も卒業の時点で数人から注文を受けていた。やがて、校長室に集まるようにと指示が入るので、学生全員が赴く。一年生から順に成績が読み上げられ、四年生まではパーセンテージで評価される。五年生の卒業時は数字ではなく、なんらかの文言が付く。最上が”avec grande distinction”、以下”avec distinction”、”avec satisfaction”となり、なにも付かない「ただの卒業」と続く。
ルリユールのアトリエでは一年生で60数パーセントくらいの評価が付くことが多く、年次が上がるに従い成績が良くなっていく、というのが言わば「正統」な道筋で、私の場合もそのように進んでいった。となると、五年生の目標はおのずと決まり、最終学年でのプレッシャーというのは並大抵ではない。実際、三十代からの持病である、ストレス大敵の気管支喘息が5月末から出て、薬を飲みながら一日も休まず作業したことを思い出す。日本で美術大学を卒業された方々には、このようなプレッシャーは当然のことかもしれない。自分の表現を世に問うという覚悟を持っていれば、卒業までには度胸もつくだろう。私の場合は、それまでの社会人生活ではなかったこととして、この時の経験がその後の「試練」に向き合う礎になったのだと、徐々に薄れていく当時の思い出の中で、これだけは鮮やかに心に刻まれている。
卒業審査風景1審査結果発表後のほっとした状態
*****
来る11月8日(火)から11月19日(土)まで、レ・フラグマン・ドゥ・エムの展覧会を「ときの忘れもの」にて開催していただくことになりました。ユニットとして活動を開始してから四年、メンバーそれぞれの想いに違いはあるかもれませんが、このような機会を持てたことは、全員の大いなる喜びです。是非、多くの方々にご覧いただき、様々なご意見・ご感想を賜りたく、ここにお願い申し上げます。
(文・平まどか)

●作品紹介~平まどか制作



『DIOTIME ET LES LIONS』
Henry Bauchau著
1991年 ACTES SUD刊
・ランゲット製本
・山羊革 手染め紙
・手染め見返し
・タイトル箔押し:中村美奈子
・2013年制作
・190x119×12mm
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ときの忘れものの通常業務は平日の火曜~土曜日です。日曜、月曜、祝日はお問い合わせには返信できませんので、予めご了承ください。
●ルリユール用語集
ルリユールには、なじみのない用語が数々あります。そこで、frgmの作品をご覧いただく際の手がかりとして、用語集を作成しました。
本の名称
(1)天(2)地
(3)小口(前小口)
(4)背
(5)平(ひら)
(6)見返し(きき紙)
(7)見返し(遊び紙)
(8)チリ
(9)デコール(ドリュール)
(10)デコール(ドリュール)
額縁装
表紙の上下・左右四辺を革で囲い、額縁に見立てた形の半革装(下図参照)。
角革装
表紙の上下角に三角に革を貼る形の半革装(下図参照)。
シュミーズ
表紙の革装を保護する為のジャケット(カバー)。総革装の場合、本にシュミーズをかぶせた後、スリップケースに入れる。
スリップケース
本を出し入れするタイプの保存箱。
総革装
表紙全体を革でおおう表装方法(下図参照)【→半革装】。
デコール
金箔押しにより紋様付けをするドリュール、革を細工して貼り込むモザイクなどの、装飾の総称。
二重装
見返しきき紙(表紙の内側にあたる部分)に革を貼る装幀方法。
パーチメント
羊皮紙の英語表記。
パッセ・カルトン
綴じ付け製本。麻紐を綴じ糸で抱き込むようにかがり、その麻紐の端を表紙芯紙に通すことにより、ミゾのない形の本にする。
製作工程の早い段階で本体と表紙を一体化させ、堅固な構造体とする、ヨーロッパで発達した製本方式。
半革装
表紙の一部に革を用いる場合の表記。三種類のタイプがある(両袖装・額縁装・角革装)(下図参照)【→総革装】。
革を貼った残りの部分は、マーブル紙や他の装飾紙を貼る。
夫婦函
両面開きになる箱。総革装の、特に立体的なデコールがある本で、スリップケースに出し入れ出来ない場合に用いる。
ランゲット製本
折丁のノドと背中合わせになるように折った紙を、糸かがりし、結びつける。背中合わせに綴じた紙をランゲットと言う。
全ての折丁のランゲットを接着したあと、表装材でおおい、装飾を施す。和装本から着想を得た製本形態(下図参照)。
両袖装
小口側の上下に亘るように革を貼る形の半革装(下図参照)。
様々な製本形態
両袖装
額縁装
角革装
総革装
ランゲット製本◆ときの忘れものは「ルリユール 書物への偏愛―テクストを変換するもの―展」を開催します。
会期:2016年11月8日[火]~11月19日[土] *日曜、月曜、祝日休廊

造本作家グループLes fragments de M(略称frgm)は2011年10月、三人の製本家と一人の箔押し師が集まり、ルリユールをもっと多くの方々に知っていただき、より身近なものとして慈しんでもらうことを願い、活動を始めました。
メンバーは羽田野麻吏さん、平まどかさん、市田文子さん、中村美奈子さんで、2014年11月よりブログでfrgmのエッセイ「ルリユール 書物への偏愛」を連載しています。
「ルリユール」とはフランス語で「製本」を意味し、書店で売られているいわゆる機械製本も含める語ではありますが、一方で工芸としての製本を強く想起する言葉として、フランス語圏の国々では使われています。工芸としての製本とは、読書家・愛書家が自らの蔵書を製本家に依頼して、世界に一つの作品に仕立て直す(具体的には山羊革や仔牛革などを表装材に用い、その上に革や他の素材による)装飾を施していきます。
本展ではfrgm皆さんのルリユール作品約35点をご覧いただきます。
●イベントのご案内
展覧会最終日の11月19日(土)19時より、港千尋さん(写真家、著述家)を招いてギャラリートークを開催します(要予約/参加費1,000円)。
※必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記の上、メールにてお申込ください。
E-maii. info@tokinowasuremono.com
●本日のお勧め作品は、恩地幸四郎です。
恩地孝四郎「浴室午前」
1928年
木版(色)
21.0×14.0cm
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ときの忘れものの通常業務は平日の火曜~土曜日です。日曜、月曜、祝日はお問い合わせには返信できませんので、予めご了承ください。
◆ときの忘れもののブログは下記の皆さんのエッセイを連載しています。
・大竹昭子のエッセイ「迷走写真館 一枚の写真に目を凝らす」は毎月1日の更新です。
・frgmメンバーによるエッセイ「ルリユール 書物への偏愛」は毎月3日の更新です。
・夜野悠のエッセイ「書斎の漂流物」は毎月5日の更新です。
・笹沼俊樹のエッセイ「現代美術コレクターの独り言」はしばらく休載します。
・杉山幸一郎のエッセイ「幸せにみちたくうかんを求めて」は毎月10日の更新です。
・芳賀言太郎のエッセイ「El Camino(エル・カミーノ) 僕が歩いた1600km」は毎月11日の更新です。
・普後均のエッセイ「写真という海」は毎月14日の更新です。
・野口琢郎のエッセイ「京都西陣から」は毎月15日の更新です。
・小林紀晴のエッセイ「山の記憶」は毎月19日の更新です。
・藤本貴子のエッセイ「建築圏外通信」は毎月22日の更新です。
・八束はじめ・彦坂裕のエッセイ「建築家のドローイング」(再録)は毎月24日の更新です。
・小林美香のエッセイ「写真集と絵本のブックレビュー」は毎月25日の更新です。
・スタッフSの「海外ネットサーフィン」は毎月26日の更新です。
・森本悟郎のエッセイ「その後」は毎月28日の更新です。
・光嶋裕介のエッセイ「和紙に挑む」は毎月30日の更新です。
・植田実のエッセイ「美術展のおこぼれ」は、更新は随時行います。
同じく植田実のエッセイ「生きているTATEMONO 松本竣介を読む」と合わせお読みください。
「本との関係」などのエッセイのバックナンバーはコチラです。
・中村茉貴のエッセイ「美術館に瑛九を観に行く」は随時更新します。
・飯沢耕太郎のエッセイ「日本の写真家たち」は英文版とともに随時更新します。
・深野一朗のエッセイは随時更新します。
・「久保エディション」(現代版画のパトロン久保貞次郎)は随時更新します。
・石原輝雄のエッセイ「マン・レイへの写真日記」は終了しました。
・荒井由泰のエッセイ「いとしの国ブータン紀行」は終了しました。
・森下泰輔のエッセイ「戦後・現代美術事件簿」は終了しました。
・「殿敷侃の遺したもの」はゆかりの方々のエッセイや資料を随時紹介します。
・「オノサト・トシノブの世界」は円を描き続けた作家の生涯と作品を関係資料や評論によって紹介します。
・「瀧口修造の世界」は造形作家としての瀧口の軌跡と作品をテキストや資料によって紹介します。
土渕信彦のエッセイ「瀧口修造とマルセル・デュシャン」、「瀧口修造の箱舟」と合わせてお読みください。
・「関根伸夫ともの派」はロスアンゼルスで制作を続ける関根伸夫と「もの派」について作品や資料によって紹介します。
・「現代版画センターの記録」は随時更新します。
今までのバックナンバーの一部はホームページに転載しています。
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