井戸沼紀美のエッセイ「二十二日の半券」第3回
『ジョナス・メカスと巡る月日』
明日1月23日は、わたしがはじめてジョナス・メカスから言葉を投げかけてもらった日であり、メカスがこの世を去った日だ。「Kimi, thank you very very much for all the nice things you say in your e-mail !」とメールの返信が届いたのは6年前、SNSで知った悲しいニュースに眠れなくなったのは2年前。自分にとって「海の日」や「山の日」よりもはるかに大切な「メカスの日」を迎えるにあたり、このブログで何を書くべきか、昨年末から思い悩んでいた。
そこで思いついたのが、ジョナス・メカスの公式ウェブサイトに掲載された2010~2018年の映像たちの中から、アップロード月ごとに2本ずつ、気に入った作品を紹介してみるというものだ。メカスといえば『リトアニアへの旅の追憶』や『ウォールデン』など「日記映画」と呼ばれるスタイルを築きあげたフィルム時代のマスターピースを紹介されることが多いけれど、80年代後半から制作された膨大なデジタル作品についてはどうだろう。日本では、昨年12月に発売された書籍『ジョナス・メカス論集 映像詩人の全貌』における佐々木友輔さんの論文『フローズン・サムネイル・フレームズ』がフィルム以降のメカス作品にきちんと向き合ったほぼ初めての機会だったのではないだろうか。
ジョナス・メカスは私たちが心を曇らせる暇がないほど、数多くの映像を残して地球から旅立っていった。今回はカレンダーをめくるようにしてそれらの作品を見つめることで、改めてメカスという映画作家/詩人の輪郭を確かめてみたい。ワンクリックでアクセスできるたった数分の映像にも、楽園のかけらは確かに宿っていた。
注:タイトルがつけられているものにはタイトルを、そうでないものにはアップロード日を記載しています。
▼1月
New Year’s Day at St. Mark’s Church

メカスは2014年から2018年まで、5年連続でセント・マークス教会での新年イベントの動画を自身のウェブサイトにアップロードしている(現在は視聴できないものの2012年に動画をあげようとした跡も。2011年は誰かがあげたYoutube動画をサイトに埋め込んでいる)。なかでも興味深かったのが、2016年の映像。シンプルにスピーチの様子を撮影しただけの他の動画と違い、冒頭と末尾に夜タクシーから見える車窓と、自作の詩を手書きした画面が映し出される。以下は、その詩を写したものと意訳。
In a taxi on way to KFJ(KFJに向かうタクシーで)
watching raindrops on half open car window(半分開いた車の窓の雨滴を見ている)
On wet sidewalk(濡れた歩道)
a lonely bicycle wheel locked to a tree(木に括られた 孤独な自転車の車輪)
late evening(夜遅く)
four friends talking about utopia(4人の友がユートピアについて話している)
The war is coming(戦争が来ている)
I am reading a book “Cherry Blossoms”(“Cherry Blossoms”を読んでいる)
I am sitting alone looking through the window(1人座って窓の外を見ている)
My mind is empty(心はからっぽだ)
January 18, 2018 – 6:35 pm

JR、ルイ・ガレル、1人の女性、息子のセバスチャンと5人でお茶をするメカス。『NY映画祭』に『顔たち、ところどころ』を観に行くところだという。テーブルにはかつてメカスが『ムービー・ジャーナル』を連載した『ヴィレッジ・ヴォイス』誌の、プリント版としての最終号が置かれている。ひと世代下のアーティストたちがコーヒーを飲む中、メカスは昼から赤ワイン。ガレルに尋ねられ、ゴダールに一度だけ会ったことを語る。『カイエ・デュ・シネマ』にゴダールが『営倉』のグッドレビューを書いてくれたのだと。『顔たち、ところどころ』でJRと共にゴダールを訪ねたアニエス・ヴァルダもビデオ通話で登場する、なんとも楽しげな昼下がり。
▼2月
February 13, 2014 – 6:33 pm

大雪の日。その様子を悲観的に伝えるニュースに向かいメカスは「これは母なる地球からの贈り物なのだ」とテレビの前で主張。「雪よ、振り続けろ!」と叫ぶ。窓の外にカメラを向け「春を待つあいだ、冬を楽しもう」と呼びかけつつ、再びテレビの映像にカメラを移すと、またもや深刻な顔のキャスター。「冬が偉大な詩を書いているというのに、私たちは不満を言っている。明日になったら彼女(キャスター)の事務所に行かずにはいられない」と嘆きつつ、最後にセントラルパークでスキーを楽しむニュースを観て胸をなでおろしている。
A Letter to José Luis Guerín

ホセ・ルイス・ゲリンに長らく連絡を取っていなかったことにふと罪悪感を感じたというメカスが撮影したビデオレター。ブルックリンの自宅の窓から見える景色を映し「君はどこにいる?君の窓からは何が見える?」と問いかける。どうしたら幸せになれるかや、どうしたら身の回りのすべてを祝福できるかについて、よく考えるけれど答えが出ないので、自分はカメラを持ち、美しいものを撮ると語る。それが今は雪なのだと。人類が狂っても、雪は純粋で美しいまま、そこにある。
▼3月
March 28, 2018 – 10:25 am

冒頭に「I am...」とタイトルらしきものが表示され、メカスが語り始める。96年に、ラジオから流れるビリー・ホリデイを聴きながら書かれたテキストだそう。巨大なものではなく、些細で、目には見えない、脆い、個人的な人類の精神に向けて、互いの目が見えるくらいの小さな場所で話したいという切実な想いの詰まった文章で、メカスが山形を訪れた時に案内役をつとめた農民詩人の木村迪夫氏や、吉増剛造氏の名前も登場する。
March 15, 2016 – 6:44 pm

雨露に濡れた紫や黄色、白い花の映像を経て、ひとりの女性の写真が映し出される。花を育て、売ることを仕事にしたジョージ・マチューナスの兄弟だという。メカスは「彼女は花のなかで人生を過ごした」と語ったのち、ジョージから届いたメール(彼らの母親が安らかに息をひきとったことを伝える)を静かに映し出す。
▼4月
Reading my “Cinema is Not 100 Years Old” Manifesto

タイトルの示す通り、メカスが『反・映画100年マニフェスト(Anti-100 Years of Cinema Manifesto)』を朗読している。「映画の真の歴史は目に見えない。友が集い、大好きなことをすることの積み重ねのほかに、映画の歴史はどこにも存在しない。映写機の回る音が聞こえるたびに、カメラの回る音が聞こえるたびに、わたしたちの映画は新たに始まる。カメラの回る音を聞くたびに、友よ、わたしたちの胸の高鳴りがきみの耳にも届くだろう。」(『ジョナス・メカスーノート、対話、映画』より木下哲夫さん訳を抜粋)
April 21, 2015 – 2:41 pm

窓に貼られた黄色い付箋にひとつのフレーズが記されている。”Who knows what the songs of the birds do to the earth during the spring?” (春のあいだ、鳥たちの歌が地球に何をもたらすかを誰が知っているというのだろう)。1959年の10月に書かれた一文をただただ映すシンプルな春の映像詩。
▼5月
May 10, 2016 – 7:28 pm

ある夜、息子のセバスチャン・メカスともう一人の男性が、花の咲く木にひっかかったプラスチックを長い棒で取り除いている。ただそれだけの記録だけれど、楽しげなメカスの声と共に映像を観進めると、自分の心からもゴミが取り除かれていくような、純粋な喜びが訪れる。中盤に一瞬「philharmonie de Paris」という字幕が映るが、おそらく編集ミスによるもの。
May 28, 2014 – 11:47 pm

画面に映る赤子を抱いた人物、その目元を観て、それがメカスの娘・ウーナであることに気がつく。いつも傍にいる息子のセバスチャンと違い、NYを離れて暮らすウーナが映像に登場するのは珍しい。ウーナとその娘タルラ(Talula)の日々の様子は、ウーナのInstagramで今も観ることができる。
▼6月
Gozo at Anthology

吉増剛造氏がアンソロジー・フィルム・アーカイブスを訪れた時の様子。吉増氏はメカスを「master」と慕い、メカスは吉増氏を「great poet」と客席に紹介する。この映像における吉増氏の、照れたような、嬉しそうな、緊張した様子は、メカスの眼差しを通してしか観られない貴重なもののように思う。メカスのウェブサイトには、2016年9月にも吉増氏のパフォーマンスを映したエントリが。
50 Years Ago

「Wow!」という感嘆の文字と共に映し出される、50年前の映像。ケン・ジェイコブスとフロー・ジェイコブス夫妻が、ただただ幸せそうに踊っている。
▼7月
July 20, 2015 – 9:05 am

フィラデルフィアのある午後のこと。無音、暗闇の小さな穴の中から、カメラが絵画を見つめている不思議な手触りの映像。
July 3, 2015 – 10:46 pm

古い友人に60年ぶりに会ってみようと思い立ったメカスが、カメラの前で旧友に電話をかけはじめ、実際に会うまでを記録した映像。ジョージと呼ばれる友人は、「信じられない」と何度もつぶやきながらも60年の時に、2人の再会に乾杯。最後にジョージと親しかった1953年当時のメカスと弟・アドルファスの姿が映し出される。
▼8月
August 14, 2015 – 1:22 am

アンソロジー・フィルム・アーカイヴスの中で長い笛を吹いていたかと思えば、今度はラッパの即興演奏を始めるメカス。おそるべき肺活量と、その自由な空間に思わず頰がゆるむ。
August 21, 2014 – 8:04 pm

メカスが97年の日記を読みながら花々を映していく。日記には、夢で匂いを感じられるほどリアルに花を感じたこと、それを人に伝えると「あなたの前世はハチなのではないか」と言われたことなどが書かれている。
▼9月
September 19, 2017 – 8:11 pm

幼い頃、しばしば空に指で触っていたのだと話すメカス。美しい夏に、やわらかい草に寝転んで。青く澄んだ空に、雲にも触っていたのだと。冒頭には「寝返りをするぞそこのけ蛬」、末尾には「仏ともならでうかうか老の松」という一茶の句が紹介されており、その背景は普段使用しているベージュではなく藍色に染まっている。
September 24, 2014 – 7:24 pm

「an imperfect haiku」として、メカスの俳句が映し出されるだけのシンプルな映像。ここで記されたフレーズ(on wet sidewalk a lonely bicycle wheel locked to a tree)は、前述したセント・マークス教会での朗読(2016年)の中にも登場する。こういった場合、俳句がいくつか連なって詩がつくられているのか、詩の一節が俳句として切り出されているのか、はたまたそのどちらでもないのか、映像からは判別しきれないけれど興味深い。「an imperfect haiku」だけが映される映像は2014年10月にもアップロードされている。
▼10月
October 27, 2016 – 10:52 pm

ポーランドのヴロツワフで行われた『American Film Festival』での「INDIE STAR AWARD」受賞に際して「My friends! I consider that we are all friends, we all belong to the family of a lover of cinema.(友よ!私は我々は皆友人で、皆映画を愛する家族の一員だと考えています)」とスピーチをし始めるメカス。神が映画作家にカメラを渡し「この星を、命を祝福せよ!動物たち、花たち、木々を」と伝えたにもかかわらず、人々は金を稼ごうとし、商業作家が生まれたこと。それに抗うようにして、詩人やインディペンデントな映画作家が生まれ、金に目もくれず、心やまなざしに従って、すべての醜さに抗いながら、歌うように物事を記録してきたのだと語り、人類が美しくなるために行動したすべての友たちの名にかけて、この賞を引き受けると締めくくる。
As I was Moving Ahead…

バンド・Emergency Bible Studyの“Birthday Girl”という曲とメカスのナレーションでドラマチックな幕開け(同楽曲はBandcampから無料DL可能)。はっきりと聞き取れない声の中で「ジョージが家に帰りたいと言った」というような言葉が聞こえる。そこからは車の、列車の車窓がひたすらに映される。晴れの日、雨の日、雪の日、雷、朝、昼、夜。街中、森の中。あらゆる景色が通り過ぎてゆく。そして映像の最後、ある丘に到着する手前の道でメカスはデジタルカメラの機能を使ったのか、空をピンク色に映す。ウェブサイトにあがっているアーカイブの中にこのような加工が施された映像は他になく、メカスの作風を辿っていく上でも鍵になりそうな一作。
▼11月
November 23, 2017 – 3:33 pm

メカスがグレタ・ガーウィグ『レディ・バード』について語る。「DO NOT MISS THIS MOVIE」という言葉から自分のレビューを始めると宣言したメカスは、パティ・スミスを思い起こさせる、この映画は男には作れない、『パターソン』と同様素晴らしい、などと絶賛。後半はグレタのQ&Aを客席から手持ちカメラで撮影している。
Berliner Festspiele Skype Interview

『ベルリン芸術週間』のSkypeインタビューに、なぜか道化師の格好で登場するメカス。見た目はおどけているものの、その受け答えは非常にストイックで、たとえば「あなたにとって時間は何を意味しますか?」という観客からの質問に対しては「時間は時間で、それ以外の何でもない。誰が気にするものか!馬鹿げた質問だ」と回答。筆者もメカスさんのご自宅に伺った際、映画の中で時間が過ぎ去っていく感覚について尋ねたら「Time is just there.(時間はそこにあるだけ)」ときっぱり返答されたのを思い出しました……。
▼12月
I Get My First Sony

1987年に、初めてソニーのビデオカメラを手にした時の映像。この映像がどの段階で編集されたのかは定かでないが、興味深いのはメカスがデジタルの映像を、フィルム時代のようにコマ切れにつないでいること。どの時点でメカスがこのような編集をしなくなったのかについては、調べてみる余地がありそう。
My Birthday

12月といえば、ジョナス・メカスの誕生日。唯一全員が写っているという家族写真を見せながら、メカスが話し始める(画像右下がジョナス)。叔父が送ってくれたビルジャイの資料によるとメカスの誕生日は12月24日とされているけれど、パスポートなどの資料には12月23日と記されていて、メカス自身もどちらが自分の誕生日なのかわからないのだそう。ファンとしてはいつお祝いをすれば良いか悩ましいけれど、映像の中でジョセフ・コーネル(12月24日生まれ)やルイーズ・ブルジョワ(12月25日生まれ)とバースデーカードを送り合っていたと言っているので、毎年クリスマスに祝杯をあげておけば間違いがなさそう。
▼最後に
今年で50周年を迎えるアンソロジー・フィルム・アーカイヴスのvimeoでは、アニエス・ベー、ジム・ジャームッシュ、ジョン・ウォーターズ、マイケル・スノウ、フレデリック・ワイズマンらのお祝いメッセージを無料で視聴することができます。なかでもタル・ベーラからのメッセージ動画とアピチャッポン・ウィーラセタクンからのオリジナル映像は素晴らしい内容。施設への寄付の案内とあわせてチェックしてみてはいかがでしょう。
お祝い動画の視聴はこちらから:https://vimeo.com/showcase/afa50
寄付の案内はこちらから:http://anthologyfilmarchives.org/support/donate
(いどぬま きみ)
■井戸沼紀美
1992年生まれ、都内在住。明治学院大学卒。これまでに手掛けたイベントに『ジョナス・メカスとその日々をみつめて』(2014年)、『ジョナス・メカス写真展+上映会』(2015年)がある。
・井戸沼紀美のエッセイ「二十二日の半券」は隔月、奇数月の22日に更新します。次回は20221年1月22日掲載予定です。
*画廊亭主敬白
明日はメカスさんの三回忌。もうあの笑顔を画廊に迎えることができないと思うと、切なくなります。1983年から4回来日されましたが、最後の2005年のときには青山時代のときの忘れもので長い時間を過ごしていただきました。
2005年10月14日「ジョナス・メカス展」のオープニングの夜
左から、植田実先生、植田先生が装幀した「メカスの映画日記」を手にするメカスさん、詩人の吉増剛造先生、メカスさんの詩集の翻訳者・村田郁夫さん。
この夜の宴については原茂さんのエッセイ「天使の謡う夜に」をお読みください。
<伝説のギャラリー「ときのわすれもの」のブログに「多摩美の版画、50年」展の企画について寄稿しました。ここのサイトは、近現代の版画、写真を、膨大かつ内容の濃い記事で紹介し、ちゃんとアーカイブ化されているため、よくネットで調べものをしているとここに行き着く。
僕のテキストはかなり個人的な感慨に偏っているのでご笑覧頂ければと思います。(20210120/大島成己さんのfacebookより)>
伝説の なんて書かれると気恥ずかしいのですが、大島先生のエッセイがアクセス数でいきなりトップに躍り出たのにも驚きました。それだけ<多摩美の版画>が期待され注目されているからでしょう。美術市場では版画は冬の時代が続いていますが、新たな可能性に向けて頑張っている若い人たちにはエールを送りたいと思います。
●本日のお勧め作品は『版画掌誌ときの忘れもの 第5号 ジョナス・メカス/日和崎尊夫』です。
一昨年96歳で死去したジョナス・メカス(1922-2019)のフローズン・フィルム・フレームズ(静止した映画)と呼ぶ写真作品の紹介と、50歳の若さで死去した木口木版画家の日和崎尊夫(1941-1992)を特集。
最終巻となった第5号刊行記念の「ジョナス・メカス展」2005年10月に開催しました。メカスさんはNYから四度目の来日をされました。結局これが最後の来日となりました。
2005年11月11日刊行
B4型変形(32×26cm)、綴じ無し、表紙は箔押・シルクスクリーン刷り、本文24頁、限定70部
ジョナス・メカス特集テキスト=ジョナス・メカス、ヴィータウタス・ランズベルギス(リトアニア初代大統領)
日和崎尊夫特集テキスト=谷川渥(美学者・批評家)
A版-A(限定15部)
ジョナス・メカスの写真作品《ジプシーの予言》、シルクスクリーン《わが街ニューヨークに捧げるラブ・レター》2点+日和崎尊夫の木口木版画《たがねの花》《殖》2点、計4点入り。
A版-B(限定20部)
ジョナス・メカスの写真作品《リキテンスタインのモデル》、シルクスクリーン《わが街ニューヨークに捧げるラブ・レター》2点+日和崎尊夫の木口木版画《たがねの花》《殖》2点、計4点入り。
B版(限定35部)
ジョナス・メカスのシルクスクリーン《わが街ニューヨークに捧げるラブ・レター》1点+日和崎尊夫の木口木版画《たがねの花》《殖》2点、計3点入り。
ジョナス・メカス Jonas MEKAS
《わが街ニューヨークに捧げるラブ・レター》
2005年
シルクスクリーン
イメージサイズ:26.0×20.0cm
シートサイズ:32.0×51.5cm
Ed.70
サインあり
※『版画掌誌ときの忘れもの』第5号 A版-A、A版-B、B版に挿入
ジョナス・メカス Jonas MEKAS
《ジプシーの予言》
"the gypsy told me
the gypsy read it from the cards
the gypsy told me I'll have a big journey and I'll find myself beyond the sea"
2005年
写真(ラムダプリント)
イメージサイズ:24.5×12.5cm
シートサイズ:30.5×24.5cm
Ed.15
サインあり
※『版画掌誌ときの忘れもの』第5号 A版-Aに挿入
ジョナス・メカス Jonas MEKAS
《リキテンスタインのモデル》
"Roy Lichtenstein’s model…. Filmed at Andy Warhol’s studio, December 15,1976.From the film, He Stands in a Desert Counting the Seconds of His Life"
2005年
写真(ラムダプリント)
イメージサイズ:24.4×18.9cm
シートサイズ:30.5×24.5cm
Ed.20
サインあり
※『版画掌誌ときの忘れもの』第5号 A版-Bに挿入
日和崎尊夫 HIWASAKI Takao
《たがねの花》
1978年
木口木版
イメージサイズ:7.2×11.2cm
シートサイズ:24.2×30.2cm
Ed.175
サインあり
レゾネNo.384 (1995年 高知県立美術館・渋谷区立松濤美術館)
※『版画掌誌ときの忘れもの』第5号 A版-A、A版-B、B版に挿入
日和崎尊夫 HIWASAKI Takao
《殖》
1972年原版制作(1978年摺り)
木口木版
イメージサイズ:7.8×8.5cm
シートサイズ:16.0×15.4cm
Ed.2500
版上サインあり
レゾネNo.337 (1995年 高知県立美術館・渋谷区立松濤美術館)
※『版画掌誌ときの忘れもの』第5号 A版-A、A版-B、B版、分冊として刊行したC版に挿入
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●『ジョナス・メカス論集 映像詩人の全貌』
『ジョナス・メカス論集 映像詩人の全貌』
216ページ、四六判
執筆:ジョナス・メカス、井戸沼紀美、吉増剛造、井上春生、飯村隆彦、飯村昭子、正津勉、綿貫不二夫、原將人、木下哲夫、髙嶺剛、金子遊、石原海、村山匡一郎、越後谷卓司、菊井崇史、佐々木友輔、吉田悠樹彦、齊藤路蘭、井上二郎、川野太郎、柴垣萌子、若林良
編集:若林良、吉田悠樹彦、金子遊
編集協力、装幀:菊井崇史
発行:2020年11月5日 neoneo編集室
*ときの忘れもので扱っています。税込み 2,200円+送料250円、メール・fax等でお申し込みください。
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
◆ときの忘れものは「第2回エディション展/版画掌誌ときの忘れもの」を開催しています(予約制/WEB展)。
会期=2021年1月6日[水]—1月23日[土]*日・月・祝日休廊
映像制作:WebマガジンColla:J 塩野哲也
『ジョナス・メカスと巡る月日』
明日1月23日は、わたしがはじめてジョナス・メカスから言葉を投げかけてもらった日であり、メカスがこの世を去った日だ。「Kimi, thank you very very much for all the nice things you say in your e-mail !」とメールの返信が届いたのは6年前、SNSで知った悲しいニュースに眠れなくなったのは2年前。自分にとって「海の日」や「山の日」よりもはるかに大切な「メカスの日」を迎えるにあたり、このブログで何を書くべきか、昨年末から思い悩んでいた。
そこで思いついたのが、ジョナス・メカスの公式ウェブサイトに掲載された2010~2018年の映像たちの中から、アップロード月ごとに2本ずつ、気に入った作品を紹介してみるというものだ。メカスといえば『リトアニアへの旅の追憶』や『ウォールデン』など「日記映画」と呼ばれるスタイルを築きあげたフィルム時代のマスターピースを紹介されることが多いけれど、80年代後半から制作された膨大なデジタル作品についてはどうだろう。日本では、昨年12月に発売された書籍『ジョナス・メカス論集 映像詩人の全貌』における佐々木友輔さんの論文『フローズン・サムネイル・フレームズ』がフィルム以降のメカス作品にきちんと向き合ったほぼ初めての機会だったのではないだろうか。
ジョナス・メカスは私たちが心を曇らせる暇がないほど、数多くの映像を残して地球から旅立っていった。今回はカレンダーをめくるようにしてそれらの作品を見つめることで、改めてメカスという映画作家/詩人の輪郭を確かめてみたい。ワンクリックでアクセスできるたった数分の映像にも、楽園のかけらは確かに宿っていた。
注:タイトルがつけられているものにはタイトルを、そうでないものにはアップロード日を記載しています。
▼1月
New Year’s Day at St. Mark’s Church

メカスは2014年から2018年まで、5年連続でセント・マークス教会での新年イベントの動画を自身のウェブサイトにアップロードしている(現在は視聴できないものの2012年に動画をあげようとした跡も。2011年は誰かがあげたYoutube動画をサイトに埋め込んでいる)。なかでも興味深かったのが、2016年の映像。シンプルにスピーチの様子を撮影しただけの他の動画と違い、冒頭と末尾に夜タクシーから見える車窓と、自作の詩を手書きした画面が映し出される。以下は、その詩を写したものと意訳。
In a taxi on way to KFJ(KFJに向かうタクシーで)
watching raindrops on half open car window(半分開いた車の窓の雨滴を見ている)
On wet sidewalk(濡れた歩道)
a lonely bicycle wheel locked to a tree(木に括られた 孤独な自転車の車輪)
late evening(夜遅く)
four friends talking about utopia(4人の友がユートピアについて話している)
The war is coming(戦争が来ている)
I am reading a book “Cherry Blossoms”(“Cherry Blossoms”を読んでいる)
I am sitting alone looking through the window(1人座って窓の外を見ている)
My mind is empty(心はからっぽだ)
January 18, 2018 – 6:35 pm

JR、ルイ・ガレル、1人の女性、息子のセバスチャンと5人でお茶をするメカス。『NY映画祭』に『顔たち、ところどころ』を観に行くところだという。テーブルにはかつてメカスが『ムービー・ジャーナル』を連載した『ヴィレッジ・ヴォイス』誌の、プリント版としての最終号が置かれている。ひと世代下のアーティストたちがコーヒーを飲む中、メカスは昼から赤ワイン。ガレルに尋ねられ、ゴダールに一度だけ会ったことを語る。『カイエ・デュ・シネマ』にゴダールが『営倉』のグッドレビューを書いてくれたのだと。『顔たち、ところどころ』でJRと共にゴダールを訪ねたアニエス・ヴァルダもビデオ通話で登場する、なんとも楽しげな昼下がり。
▼2月
February 13, 2014 – 6:33 pm

大雪の日。その様子を悲観的に伝えるニュースに向かいメカスは「これは母なる地球からの贈り物なのだ」とテレビの前で主張。「雪よ、振り続けろ!」と叫ぶ。窓の外にカメラを向け「春を待つあいだ、冬を楽しもう」と呼びかけつつ、再びテレビの映像にカメラを移すと、またもや深刻な顔のキャスター。「冬が偉大な詩を書いているというのに、私たちは不満を言っている。明日になったら彼女(キャスター)の事務所に行かずにはいられない」と嘆きつつ、最後にセントラルパークでスキーを楽しむニュースを観て胸をなでおろしている。
A Letter to José Luis Guerín

ホセ・ルイス・ゲリンに長らく連絡を取っていなかったことにふと罪悪感を感じたというメカスが撮影したビデオレター。ブルックリンの自宅の窓から見える景色を映し「君はどこにいる?君の窓からは何が見える?」と問いかける。どうしたら幸せになれるかや、どうしたら身の回りのすべてを祝福できるかについて、よく考えるけれど答えが出ないので、自分はカメラを持ち、美しいものを撮ると語る。それが今は雪なのだと。人類が狂っても、雪は純粋で美しいまま、そこにある。
▼3月
March 28, 2018 – 10:25 am

冒頭に「I am...」とタイトルらしきものが表示され、メカスが語り始める。96年に、ラジオから流れるビリー・ホリデイを聴きながら書かれたテキストだそう。巨大なものではなく、些細で、目には見えない、脆い、個人的な人類の精神に向けて、互いの目が見えるくらいの小さな場所で話したいという切実な想いの詰まった文章で、メカスが山形を訪れた時に案内役をつとめた農民詩人の木村迪夫氏や、吉増剛造氏の名前も登場する。
March 15, 2016 – 6:44 pm

雨露に濡れた紫や黄色、白い花の映像を経て、ひとりの女性の写真が映し出される。花を育て、売ることを仕事にしたジョージ・マチューナスの兄弟だという。メカスは「彼女は花のなかで人生を過ごした」と語ったのち、ジョージから届いたメール(彼らの母親が安らかに息をひきとったことを伝える)を静かに映し出す。
▼4月
Reading my “Cinema is Not 100 Years Old” Manifesto

タイトルの示す通り、メカスが『反・映画100年マニフェスト(Anti-100 Years of Cinema Manifesto)』を朗読している。「映画の真の歴史は目に見えない。友が集い、大好きなことをすることの積み重ねのほかに、映画の歴史はどこにも存在しない。映写機の回る音が聞こえるたびに、カメラの回る音が聞こえるたびに、わたしたちの映画は新たに始まる。カメラの回る音を聞くたびに、友よ、わたしたちの胸の高鳴りがきみの耳にも届くだろう。」(『ジョナス・メカスーノート、対話、映画』より木下哲夫さん訳を抜粋)
April 21, 2015 – 2:41 pm

窓に貼られた黄色い付箋にひとつのフレーズが記されている。”Who knows what the songs of the birds do to the earth during the spring?” (春のあいだ、鳥たちの歌が地球に何をもたらすかを誰が知っているというのだろう)。1959年の10月に書かれた一文をただただ映すシンプルな春の映像詩。
▼5月
May 10, 2016 – 7:28 pm

ある夜、息子のセバスチャン・メカスともう一人の男性が、花の咲く木にひっかかったプラスチックを長い棒で取り除いている。ただそれだけの記録だけれど、楽しげなメカスの声と共に映像を観進めると、自分の心からもゴミが取り除かれていくような、純粋な喜びが訪れる。中盤に一瞬「philharmonie de Paris」という字幕が映るが、おそらく編集ミスによるもの。
May 28, 2014 – 11:47 pm

画面に映る赤子を抱いた人物、その目元を観て、それがメカスの娘・ウーナであることに気がつく。いつも傍にいる息子のセバスチャンと違い、NYを離れて暮らすウーナが映像に登場するのは珍しい。ウーナとその娘タルラ(Talula)の日々の様子は、ウーナのInstagramで今も観ることができる。
▼6月
Gozo at Anthology

吉増剛造氏がアンソロジー・フィルム・アーカイブスを訪れた時の様子。吉増氏はメカスを「master」と慕い、メカスは吉増氏を「great poet」と客席に紹介する。この映像における吉増氏の、照れたような、嬉しそうな、緊張した様子は、メカスの眼差しを通してしか観られない貴重なもののように思う。メカスのウェブサイトには、2016年9月にも吉増氏のパフォーマンスを映したエントリが。
50 Years Ago

「Wow!」という感嘆の文字と共に映し出される、50年前の映像。ケン・ジェイコブスとフロー・ジェイコブス夫妻が、ただただ幸せそうに踊っている。
▼7月
July 20, 2015 – 9:05 am

フィラデルフィアのある午後のこと。無音、暗闇の小さな穴の中から、カメラが絵画を見つめている不思議な手触りの映像。
July 3, 2015 – 10:46 pm

古い友人に60年ぶりに会ってみようと思い立ったメカスが、カメラの前で旧友に電話をかけはじめ、実際に会うまでを記録した映像。ジョージと呼ばれる友人は、「信じられない」と何度もつぶやきながらも60年の時に、2人の再会に乾杯。最後にジョージと親しかった1953年当時のメカスと弟・アドルファスの姿が映し出される。
▼8月
August 14, 2015 – 1:22 am

アンソロジー・フィルム・アーカイヴスの中で長い笛を吹いていたかと思えば、今度はラッパの即興演奏を始めるメカス。おそるべき肺活量と、その自由な空間に思わず頰がゆるむ。
August 21, 2014 – 8:04 pm

メカスが97年の日記を読みながら花々を映していく。日記には、夢で匂いを感じられるほどリアルに花を感じたこと、それを人に伝えると「あなたの前世はハチなのではないか」と言われたことなどが書かれている。
▼9月
September 19, 2017 – 8:11 pm

幼い頃、しばしば空に指で触っていたのだと話すメカス。美しい夏に、やわらかい草に寝転んで。青く澄んだ空に、雲にも触っていたのだと。冒頭には「寝返りをするぞそこのけ蛬」、末尾には「仏ともならでうかうか老の松」という一茶の句が紹介されており、その背景は普段使用しているベージュではなく藍色に染まっている。
September 24, 2014 – 7:24 pm

「an imperfect haiku」として、メカスの俳句が映し出されるだけのシンプルな映像。ここで記されたフレーズ(on wet sidewalk a lonely bicycle wheel locked to a tree)は、前述したセント・マークス教会での朗読(2016年)の中にも登場する。こういった場合、俳句がいくつか連なって詩がつくられているのか、詩の一節が俳句として切り出されているのか、はたまたそのどちらでもないのか、映像からは判別しきれないけれど興味深い。「an imperfect haiku」だけが映される映像は2014年10月にもアップロードされている。
▼10月
October 27, 2016 – 10:52 pm

ポーランドのヴロツワフで行われた『American Film Festival』での「INDIE STAR AWARD」受賞に際して「My friends! I consider that we are all friends, we all belong to the family of a lover of cinema.(友よ!私は我々は皆友人で、皆映画を愛する家族の一員だと考えています)」とスピーチをし始めるメカス。神が映画作家にカメラを渡し「この星を、命を祝福せよ!動物たち、花たち、木々を」と伝えたにもかかわらず、人々は金を稼ごうとし、商業作家が生まれたこと。それに抗うようにして、詩人やインディペンデントな映画作家が生まれ、金に目もくれず、心やまなざしに従って、すべての醜さに抗いながら、歌うように物事を記録してきたのだと語り、人類が美しくなるために行動したすべての友たちの名にかけて、この賞を引き受けると締めくくる。
As I was Moving Ahead…

バンド・Emergency Bible Studyの“Birthday Girl”という曲とメカスのナレーションでドラマチックな幕開け(同楽曲はBandcampから無料DL可能)。はっきりと聞き取れない声の中で「ジョージが家に帰りたいと言った」というような言葉が聞こえる。そこからは車の、列車の車窓がひたすらに映される。晴れの日、雨の日、雪の日、雷、朝、昼、夜。街中、森の中。あらゆる景色が通り過ぎてゆく。そして映像の最後、ある丘に到着する手前の道でメカスはデジタルカメラの機能を使ったのか、空をピンク色に映す。ウェブサイトにあがっているアーカイブの中にこのような加工が施された映像は他になく、メカスの作風を辿っていく上でも鍵になりそうな一作。
▼11月
November 23, 2017 – 3:33 pm

メカスがグレタ・ガーウィグ『レディ・バード』について語る。「DO NOT MISS THIS MOVIE」という言葉から自分のレビューを始めると宣言したメカスは、パティ・スミスを思い起こさせる、この映画は男には作れない、『パターソン』と同様素晴らしい、などと絶賛。後半はグレタのQ&Aを客席から手持ちカメラで撮影している。
Berliner Festspiele Skype Interview

『ベルリン芸術週間』のSkypeインタビューに、なぜか道化師の格好で登場するメカス。見た目はおどけているものの、その受け答えは非常にストイックで、たとえば「あなたにとって時間は何を意味しますか?」という観客からの質問に対しては「時間は時間で、それ以外の何でもない。誰が気にするものか!馬鹿げた質問だ」と回答。筆者もメカスさんのご自宅に伺った際、映画の中で時間が過ぎ去っていく感覚について尋ねたら「Time is just there.(時間はそこにあるだけ)」ときっぱり返答されたのを思い出しました……。
▼12月
I Get My First Sony

1987年に、初めてソニーのビデオカメラを手にした時の映像。この映像がどの段階で編集されたのかは定かでないが、興味深いのはメカスがデジタルの映像を、フィルム時代のようにコマ切れにつないでいること。どの時点でメカスがこのような編集をしなくなったのかについては、調べてみる余地がありそう。
My Birthday

12月といえば、ジョナス・メカスの誕生日。唯一全員が写っているという家族写真を見せながら、メカスが話し始める(画像右下がジョナス)。叔父が送ってくれたビルジャイの資料によるとメカスの誕生日は12月24日とされているけれど、パスポートなどの資料には12月23日と記されていて、メカス自身もどちらが自分の誕生日なのかわからないのだそう。ファンとしてはいつお祝いをすれば良いか悩ましいけれど、映像の中でジョセフ・コーネル(12月24日生まれ)やルイーズ・ブルジョワ(12月25日生まれ)とバースデーカードを送り合っていたと言っているので、毎年クリスマスに祝杯をあげておけば間違いがなさそう。
▼最後に
今年で50周年を迎えるアンソロジー・フィルム・アーカイヴスのvimeoでは、アニエス・ベー、ジム・ジャームッシュ、ジョン・ウォーターズ、マイケル・スノウ、フレデリック・ワイズマンらのお祝いメッセージを無料で視聴することができます。なかでもタル・ベーラからのメッセージ動画とアピチャッポン・ウィーラセタクンからのオリジナル映像は素晴らしい内容。施設への寄付の案内とあわせてチェックしてみてはいかがでしょう。
お祝い動画の視聴はこちらから:https://vimeo.com/showcase/afa50
寄付の案内はこちらから:http://anthologyfilmarchives.org/support/donate
(いどぬま きみ)
■井戸沼紀美
1992年生まれ、都内在住。明治学院大学卒。これまでに手掛けたイベントに『ジョナス・メカスとその日々をみつめて』(2014年)、『ジョナス・メカス写真展+上映会』(2015年)がある。
・井戸沼紀美のエッセイ「二十二日の半券」は隔月、奇数月の22日に更新します。次回は20221年1月22日掲載予定です。
*画廊亭主敬白
明日はメカスさんの三回忌。もうあの笑顔を画廊に迎えることができないと思うと、切なくなります。1983年から4回来日されましたが、最後の2005年のときには青山時代のときの忘れもので長い時間を過ごしていただきました。
2005年10月14日「ジョナス・メカス展」のオープニングの夜左から、植田実先生、植田先生が装幀した「メカスの映画日記」を手にするメカスさん、詩人の吉増剛造先生、メカスさんの詩集の翻訳者・村田郁夫さん。
この夜の宴については原茂さんのエッセイ「天使の謡う夜に」をお読みください。
<伝説のギャラリー「ときのわすれもの」のブログに「多摩美の版画、50年」展の企画について寄稿しました。ここのサイトは、近現代の版画、写真を、膨大かつ内容の濃い記事で紹介し、ちゃんとアーカイブ化されているため、よくネットで調べものをしているとここに行き着く。
僕のテキストはかなり個人的な感慨に偏っているのでご笑覧頂ければと思います。(20210120/大島成己さんのfacebookより)>
伝説の なんて書かれると気恥ずかしいのですが、大島先生のエッセイがアクセス数でいきなりトップに躍り出たのにも驚きました。それだけ<多摩美の版画>が期待され注目されているからでしょう。美術市場では版画は冬の時代が続いていますが、新たな可能性に向けて頑張っている若い人たちにはエールを送りたいと思います。
●本日のお勧め作品は『版画掌誌ときの忘れもの 第5号 ジョナス・メカス/日和崎尊夫』です。
一昨年96歳で死去したジョナス・メカス(1922-2019)のフローズン・フィルム・フレームズ(静止した映画)と呼ぶ写真作品の紹介と、50歳の若さで死去した木口木版画家の日和崎尊夫(1941-1992)を特集。
最終巻となった第5号刊行記念の「ジョナス・メカス展」2005年10月に開催しました。メカスさんはNYから四度目の来日をされました。結局これが最後の来日となりました。
2005年11月11日刊行B4型変形(32×26cm)、綴じ無し、表紙は箔押・シルクスクリーン刷り、本文24頁、限定70部
ジョナス・メカス特集テキスト=ジョナス・メカス、ヴィータウタス・ランズベルギス(リトアニア初代大統領)
日和崎尊夫特集テキスト=谷川渥(美学者・批評家)
A版-A(限定15部)
ジョナス・メカスの写真作品《ジプシーの予言》、シルクスクリーン《わが街ニューヨークに捧げるラブ・レター》2点+日和崎尊夫の木口木版画《たがねの花》《殖》2点、計4点入り。
A版-B(限定20部)
ジョナス・メカスの写真作品《リキテンスタインのモデル》、シルクスクリーン《わが街ニューヨークに捧げるラブ・レター》2点+日和崎尊夫の木口木版画《たがねの花》《殖》2点、計4点入り。
B版(限定35部)
ジョナス・メカスのシルクスクリーン《わが街ニューヨークに捧げるラブ・レター》1点+日和崎尊夫の木口木版画《たがねの花》《殖》2点、計3点入り。
ジョナス・メカス Jonas MEKAS《わが街ニューヨークに捧げるラブ・レター》
2005年
シルクスクリーン
イメージサイズ:26.0×20.0cm
シートサイズ:32.0×51.5cm
Ed.70
サインあり
※『版画掌誌ときの忘れもの』第5号 A版-A、A版-B、B版に挿入
ジョナス・メカス Jonas MEKAS《ジプシーの予言》
"the gypsy told me
the gypsy read it from the cards
the gypsy told me I'll have a big journey and I'll find myself beyond the sea"
2005年
写真(ラムダプリント)
イメージサイズ:24.5×12.5cm
シートサイズ:30.5×24.5cm
Ed.15
サインあり
※『版画掌誌ときの忘れもの』第5号 A版-Aに挿入
ジョナス・メカス Jonas MEKAS《リキテンスタインのモデル》
"Roy Lichtenstein’s model…. Filmed at Andy Warhol’s studio, December 15,1976.From the film, He Stands in a Desert Counting the Seconds of His Life"
2005年
写真(ラムダプリント)
イメージサイズ:24.4×18.9cm
シートサイズ:30.5×24.5cm
Ed.20
サインあり
※『版画掌誌ときの忘れもの』第5号 A版-Bに挿入
日和崎尊夫 HIWASAKI Takao《たがねの花》
1978年
木口木版
イメージサイズ:7.2×11.2cm
シートサイズ:24.2×30.2cm
Ed.175
サインあり
レゾネNo.384 (1995年 高知県立美術館・渋谷区立松濤美術館)
※『版画掌誌ときの忘れもの』第5号 A版-A、A版-B、B版に挿入
日和崎尊夫 HIWASAKI Takao《殖》
1972年原版制作(1978年摺り)
木口木版
イメージサイズ:7.8×8.5cm
シートサイズ:16.0×15.4cm
Ed.2500
版上サインあり
レゾネNo.337 (1995年 高知県立美術館・渋谷区立松濤美術館)
※『版画掌誌ときの忘れもの』第5号 A版-A、A版-B、B版、分冊として刊行したC版に挿入
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●『ジョナス・メカス論集 映像詩人の全貌』
『ジョナス・メカス論集 映像詩人の全貌』216ページ、四六判
執筆:ジョナス・メカス、井戸沼紀美、吉増剛造、井上春生、飯村隆彦、飯村昭子、正津勉、綿貫不二夫、原將人、木下哲夫、髙嶺剛、金子遊、石原海、村山匡一郎、越後谷卓司、菊井崇史、佐々木友輔、吉田悠樹彦、齊藤路蘭、井上二郎、川野太郎、柴垣萌子、若林良
編集:若林良、吉田悠樹彦、金子遊
編集協力、装幀:菊井崇史
発行:2020年11月5日 neoneo編集室
*ときの忘れもので扱っています。税込み 2,200円+送料250円、メール・fax等でお申し込みください。
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◆ときの忘れものは「第2回エディション展/版画掌誌ときの忘れもの」を開催しています(予約制/WEB展)。
会期=2021年1月6日[水]—1月23日[土]*日・月・祝日休廊
映像制作:WebマガジンColla:J 塩野哲也

『版画掌誌 ときの忘れもの』 は優れた同時代作家の紹介と、歴史の彼方に忘れ去られた作品の発掘を目指し創刊したオリジナル版画入り大型美術誌です。第1号~第5号の概要は1月6日ブログをご覧ください。
●塩見允枝子のエッセイ「フルクサスの回想」第2回を掲載しました。合わせて連載記念の特別頒布会を開催しています。
塩見允枝子先生には11月から2021年4月までの6回にわたりエッセイをご執筆いただきます。12月28日には第2回目の特別頒布会も開催しています。お気軽にお問い合わせください。●多事多難だった昨年ですが(2020年の回顧はコチラをご覧ください)、今年も画廊空間とネット空間を往還しながら様々な企画を発信していきます。ブログは今年も年中無休です(昨年の執筆者50人をご紹介しました)。
●ときの忘れものが青山から〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転して3年が経ちました。
もともと住宅だった阿部勤設計の建物LAS CASASを使って、毎月展覧会(Web展)を開催しています。
WEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>の特集も是非ご覧ください。
ときの忘れものはJR及び南北線の駒込駅南口から徒歩約8分です。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
E-mail:info@tokinowasuremono.com
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。*日・月・祝日は休廊。
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