ときの忘れもの 今月のお勧め
■2010年08月30日(月)  イリナ・イオネスコ「Jocelyne」
nicky_20100830.jpg 394×600 87Kイリナ・イオネスコ
「Jocelyne」
1974年
ゼラチンシルバープリント
36.7x24.8cm
サインあり

今週のお勧めは、イリナ・イオネスコの「Jocelyne」です。
デカダン(退廃的)でバロック(過剰装飾)というのはイオネスコの枕詞のようになっていて、何か暗い印象を与えますが、ご本人は、いたって明るい感じのご婦人でした。(多少わがままなようですが、それは彼女の国では「普通」でしょう)
この作品は、1991年に刊行された写真集『Les Immortelles』の表紙にも使われた作品で、一度見たら忘れられない強烈な印象を与えます。まなざしはそう厳しくないにもかかわらず、真っ暗な背景から浮かび上がる白い顔、その顔にかぶさる白い手とのコンポジション、そして小さな球体がたくさん付いたアクセサリーといったものが、そういう印象を醸し出しているのでしょう。そして、それほど肌を露出していないのに扇情的なものを感じさせるのが、イオネスコの作品の持つ不思議な魔力といえます。

イリナ・イオネスコ Irina IONESCO(1935-)
1935年生まれ。1965年より写真を撮り始め、娘エヴァほか、多くの女性を撮り続ける。1970年初個展。初の写真集『鏡の神殿』(1977)では、母親が撮った娘のヌード写真ということで、倫理的な議論も巻き起こした。シュルレアリスムとバロックの混沌とした写真が話題となり、その独特な世界が高い評価を得ている。

■2010年08月20日(金)  五味彬「25P_AC・ACB」
nicky_20100820.jpg 600×364 84K五味彬
「25P_AC・ACB」
1991年
ヴィンテージゼラチンシルバープリント
107.5×170.0cm
サインあり

今週のお勧めは、五味彬の「25P_AC・ACB」をご紹介します。
1992年、発売直前に出版社の自主規制で発売中止、そして、断裁処分された幻の写真集『YELLOWS』のためにプリントされたヴィンテージプリントです。当時の女性の体型を記録しようとした『YELLOWS』のコンセプトは、20世紀初頭、さまざまな階級、職業の人々を記録することで、その時代を表現したドイツのアウグスト・ザンダーによく比較されます。だからという訳ではないでしょうが、2009年のチューリッヒのアートフェアで展示した五味作品は、大いに観客にアピールし、作品の前に人がいないときがなかったと言っても過言ではないくらいでした。8x10のプリントを25名分50点額装したのがこの作品です。

五味彬 Akira GOMI(1953-)
1953年東京生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業。77年渡仏し、ローレンス・サックマン、ミッシェル・ベルトンに師事する。83年帰国後、ファッション誌『流行通信』『エル・ジャポン』などを中心に活躍。93年日本初のCD-ROM写真集『YELLOWS』を発表。その後、『YELLOWS2.0』『AMERICANS』『YELLOWS3.0』など00年までに14タイトルを発表。バンタンデザイン研究所で写真Webデザインを教える。97年東京都写真美術館で「アウグスト・ザンダーと五味彬」展。99年「YELLOWS RESTART」を発表。
97年DIGITALOGUE Gallery Tokyo(東京・原宿)で個展「YELLOWS Contemporary Girls Psycho Sexual」。2008年キャノンギャラリー(銀座、名古屋、梅田を巡回)にて個展「YELLOWS Return To Classic」、ときの忘れものにて個展「五味彬写真展 Yellows 1.0」。09年GALLERY COSMOSで元アシスタントたちとのグループ展「Family Plots」。

■2010年08月10日(火)  クリスチャン・ボルタンスキー「Gymnasium Chases,1991」
nicky_20100810.jpg 370×547 40Kクリスチャン・ボルタンスキー
「Gymnasium Chases,1991」
1991年
銅版24点組(ケース入り)
イメージサイズ:各46.0×31.5cm
シートサイズ:各59.0×42.0cm
Ed.15
表紙にサインあり
※画像は「Gymnasium Chases,1991」よりNo.19の作品です

今週は、ときの忘れものがコレクションするボルタンスキーの銅版画作品をご紹介します。
こちらは1991年にアメリカのクラウンポイントからエディションされた、24点組の銅版画によるポートフォリオですが、何と45,000ドルの価格がつけられています(私どもの数倍!)。ぜひコレクションに加えてください。

クリスチャン・ボルタンスキー Christian BOLTANSKI(1944-)
1944年フランス・パリ生まれ。学校にほとんど通わず、12歳で退学、独学で絵画を習得した。初期は兄弟を使った実験映画を制作。ユダヤ人の父親が差別を受けた経験などから、「生と死」をテーマに、様々な写真や古着やものを使い、人の経験(記憶)のはかなさについて多くの作品を制作。「死体も写真も古着も、私にとっては、同じ不在の象徴」と、失われた時間や記憶の「遺物」を展示することで、観る者に過去を蘇らせる。
2003年越後妻有アートトリエンナーレで、ジャン・カルマンとともに、廃校を利用したインスタレーション《夏の旅》を制作、出品。2006年高松宮殿下記念世界文化賞を草間彌生らと受賞した。

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