ときの忘れもの 今月のお勧め
■2011年11月30日(水)  池田満寿夫「私をみつめる私」
nicky_20111130.jpg 538×600 39K池田満寿夫
「私をみつめる私」
1964年
銅版カラー
20.0x18.3cm
Ed.20(E.P.)

日本の現代版画のスーパースターだった池田満寿夫は、画家、版画家、挿絵画家、彫刻家、陶芸家、小説家、詩人、映画監督と多彩な活躍をしましたが、その原点は版画であり、生涯に制作した版画は1200点余り、その中でも飛び切りの代表作「私をみつめる私」をご紹介します。
この作品が制作された1963年〜64年は池田満寿夫の絶頂期ともいっていい時期です。
瑛九や久保貞次郎らの物心両面にわたる支援、二人目のパートナー富岡多恵子との出会いと別れ、多くの文学者たちとの交友。あれよあれよという間にシンデレラボーイとなった濃密な12年間に銅版画の傑作群が生まれました(1955年(21歳)〜1966年(33歳)の12年間の年譜はこちらをご参照ください)。
マスオ版画の魅力は、一に色彩、二にコラージュと即興性、三にエロティシズムと言っていいでしょう。
特に、私的、日常的、文学的、洒脱、繊細さという美点が、コレクターたちに支持され、どの系譜にも属さない独自の表現(先行者がいない)を追求し、一つの表現手段にこだわらず、変身を繰り返したところに池田満寿夫の真骨頂がありました。

池田満寿夫 Masuo IKEDA(1934-1997)
1934年旧満州国生まれ。1945年、終戦により母と郷里の長野市に戻る。1952年高校を卒業し上京、版画家デビュー。1960年、62年、64年の東京国際版画ビエンナーレ展での連続受賞につづき、1966年の第33回ヴェネツィア・ビエンナーレでは版画部門の国際大賞を受賞。一躍、世界のスターへの道が開かれる。しかし高い評価に甘んじることなく常に自己変革による自由な変貌をくり返す。
その後も日本を代表する版画家として東京とニューヨークを拠点に制作を続けるかたわら、小説家としても活躍し1977年には芥川賞を受賞。帰国後は、熱海市に居を構え、作陶から立体造形への関心を深めるなど表現の幅を広げる。

■2011年11月20日(日)  五味彬「nude of J 村上麗奈 03」
nicky_20111120.jpg 446×600 64K五味彬
「nude of J 村上麗奈 03」
1991年(2009年プリント)
ゼラチンシルバープリント
39.5x29.3cm
Ed.10
サインあり

1992年、発売直前に出版社の自主規制で発売中止、そして、断裁処分された幻の写真集『YELLOWS』で注目を浴びた五味彬先生ですが、「YELLOWS」シリーズと時を同じくして、1991年イタリアの写真家トニ・メネグッツォとの共作で出版された写真集『nude of J』(朝日出版社刊)のために撮影された村上麗奈をモデルとした作品をご紹介します。
この「nude of J 村上麗奈 03」は写真集に収録され、「YELLOWS」シリーズと同様に正面から表情を消して撮影されています。

五味彬 Akira GOMI(1953-)
1953年東京生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業。77年渡仏し、ローレンス・サックマン、ミッシェル・ベルトンに師事する。83年帰国後、ファッション誌『流行通信』『エル・ジャポン』などを中心に活躍。93年日本初のCD-ROM写真集『YELLOWS』を発表。その後、『YELLOWS2.0』『AMERICANS』『YELLOWS3.0』など00年までに14タイトルを発表。バンタンデザイン研究所で写真Webデザインを教える。97年東京都写真美術館で「アウグスト・ザンダーと五味彬」展。99年「YELLOWS RESTART」を発表。
97年DIGITALOGUE Gallery Tokyo(東京・原宿)で個展「YELLOWS Contemporary Girls Psycho Sexual」。2008年キャノンギャラリー(銀座、名古屋、梅田を巡回)にて個展「YELLOWS Return To Classic」、ときの忘れものにて個展「五味彬写真展 Yellows 1.0」。09年GALLERY COSMOSで元アシスタントたちとのグループ展「Family Plots」。

■2011年11月10日(木)  エドゥアール・ブーバ「パリ情景」
nicky_20111110.jpg 439×600 59Kエドゥアール・ブーバ
「パリ情景」
ゼラチンシルバープリント
イメージサイズ:36.0x24.4cm
シートサイズ:36.6x25.7cm

今週のお勧めは、エドゥアール・ブーバの「パリ情景」をご紹介します。
パリのセーヌ河畔で抱きあうカップル、静かなさざなみの表情、パリのなんと言うことはない風景を切り取った抒情豊かなブーバの写真からは、「カメラの詩人」と評された通り、しっとりとした情感が漂ってきます。
1995年に新宿の小田急美術館で「エドゥアール・ブーバ展」が開催されていますが、亭主は見ていません、こんなこと(写真画廊)になるのだったら見ておけばよかったと、ちょっと悔しい。
画廊にはブーバの第一作品集『海の抒情』を置いてありますが、それがフランスではなく日本(平凡社)で出版されたことはさすが写真集大国ニッポンの面目躍如としていますね。
平凡社世界写真家シリーズの1冊として刊行されたブーバのこの写真集は、海辺の町、ヴァカンスを楽しむ家族、漁師たち・・・ポルトガルの海岸でルポルタージュを目的として撮影されたカラーとモノクロの写真44点が収録されています。
ブーバは名声の割りになぜか日本ではほとんど知られておらず、作品の実物に触れられる機会も少ないようです。
この機会にぜひコレクションに加えてください。

エドゥアール・ブーバ Edouard BOUBAT(1923-1999)
写真家。1923年フランスに生まれる。
1946年から写真を撮り始め、後にthe agency Raphoで働く。パリで生まれ、パリで暮らし、戦後のパリを撮り続けてた。アンリ・カルティエ=ブレッソン、 ロベール・ドアノーらとともに20世紀を代表する フランスの写真家の一人として数えられている。 1999年、歿。

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